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【連載】#チコちゃんに叱られる!「空がドンヨリだと憂鬱になるのは遺伝情報」という胡散臭い説明 7月2日(金)に初回放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。 今回は、
まず1.の疑問だが、番組では「現代人が働き者だから」と説明された。 進化心理学を研究している石川幹人先生(明治大学)によれば、今からおよそ30万年前に誕生したホモサピエンスは食料を命がけで調達して生き延びてきた。およそ7万年前、食料が減ったため、アフリカから各地に移動し、違う環境で生き残る必要が出てきた。石川先生によれば、
ここからは私の感想・考察になるが、率直なところ、これほど胡散臭い「説明」を聞いたのは久しぶりであり、これまで視聴したチコちゃんの放送の中でも5本の指に入りそうなトンデモバージョンであった。 人間の行動の特性が何らかの遺伝情報を反映することは認めるとしても、晴れの日と曇りや雨の日の行動パターンに直結した遺伝情報が組み込まれているというのはにわかに信じがたい。しっかりした遺伝子解析に基づいて、本当に上掲の3タイプが存在するのか、気象環境の違いによってA〜Cという3タイプが本当に存在し、人種や民族によって比率に差が見られるのか、まずは証拠を示してもらいたいものだ。「曇りや雨の日のほうが好きな人は、雨の日でも食べ物が取れる所にいた人の子孫」というのも胡散臭い。本当に曇りや雨が好きな家系というのがあるかどうかも疑わしいし、そもそも遺伝情報と言ったところで、「顕性遺伝(優性遺伝)」と「潜性遺伝(劣性遺伝)」がある。 ということで、番組では「進化心理学を研究している石川先生」と紹介されていたが、本当に進化心理学の専門家なのかどうかも疑わしくなってきた。念のためウィキペディアで検索したところ、ご専門は「認知情報論・科学基礎論・超心理学」となっていた。どうなっているのだろう? ちなみに「曇りや雨の日のほうが好きな人は、雨の日でも食べ物が取れる所にいた人の子孫」という論法は、血液型エセ科学の「Aは農耕民族、Oは狩猟民族」と似ているような印象を受けたが、ウィキペディアには、そうか、やっぱりねと思わせる、 2009年に石川は清水武との共同研究で、血液型性格関連の統計的研究で、血液型と性格の5因子モデルとの関連において効果量が小さいため予測力は小さいが統計的には関連が有意であった結果を、2つの心理学の学会誌に投稿したが、いずれも掲載を断られている。という記述があった。掲載拒否の経緯についてはよく分からないが、日本のように血液型性格判断が広く流布している社会にあっては、「A型は○○」とか「B型は△△」といったステレオタイプが、自分自身の行動傾向の評定に影響を及ぼすことは考えられる。よって質問紙の性格検査をすれば、思い込みの影響(血液型ステレオタイプに繰り返し晒されたことによるインプリンティング効果)により若干の有意差が出ることは充分に予測できるはずだ。血液型性格判断が全く知られていない国で顕著な有意差が出たというなら話は別だが...。 石川先生を個人攻撃する意図は全くないが、いくらチコちゃんが一般向けの娯楽番組であるからといって、諸説の中から面白さ、意外性、話題性のありそうな部分だけを誇大に取り上げるのはいかがなものかと思う。この番組が子どもたちに多大な影響力が及ぼすことを考慮するならば、進化心理学、あるいは進化生物学に基づく知見を紹介するのであれば、別の研究者によるセカンドオピニオンを求めて検証をするくらいの姿勢が必要かと思う。 次回に続く。 |