【連載】ヒューマニエンス 「“舌” 変幻自在の開拓者」その3 おいしさの起源
昨日に続いて、6月10日に放送されたヒューマニエンス「「“舌” 変幻自在の開拓者」の備忘録と感想・考察。
番組の後半は、舌のもう1つの大事な機能である味覚について解説された。主な内容は、
- 魚類は、舌以外の場所にも味覚受容体を持っている。例えばメダカは、唇、体表、ヒゲなどでも味を感じる。
- 人間の味覚受容体は舌にある。味覚受容体は水に溶けた物質のみに味を感じる。
- 舌には触覚の神経もある。辛味は触覚の感覚。
- 触覚は食感をもたらす。和食は味付けよりも食感を重視している。
- 人間以外の動物も味覚を感じるが、
- ライオンや猫は甘みを感じない。
- 竹ばかりを食べるパンダは旨味と苦味を感じない。
- 竹が主食のキツネザルは苦味を感じにくい。
このように「感じない」→「毒じゃない」が摂食を促進することがある。
- 現代人は五感で“おいしさ”を予測してきた。食べなくても、美味しいと予測できる【土井説】。
- ヒトが美味しいと感じる成分の1つにグルタミン酸がある。各種のアミノ酸として「トレオニン」、「メチオニン」、「リジン」、「ヒステジン」、「バリン」、「ロイシン」、「イソロイシン」、「フェニルアラミン」、「グルタミン酸」への感度を比較した実験によれば、ヒトはグルタミン酸のみに強く反応、いっぽうマウスはトレオニンとメチオニンのみに強く反応している。
【出典は
Toda, et al. (2013).Two Distinct Determinants of Ligand Specificity in T1R1/T1R3 (the Umami Taste Receptor). Journal of Biological Chemistry, 288, 36863-36877.】
ヒトは、脳が大きくなって神経が発達しているので、神経で使われるグルタミン酸に特化した反応があると説明された。
- おいしさは一汁一菜の中で“気づき”を楽しむことにあり【土井説】
といった内容であったが、盛りだくさんのため、消化不良を起こしそうになった。このヒューマニエンスの番組はまだまだ続くはずであるからして、「舌と言葉」と「味覚」の話題は別々の回に扱って欲しかったというのが率直な感想である。
なお、上掲の解説では、人間以外の動物が感じる「おいしさ」あるいは「まずくない」という感覚は殆ど生得的に決まっているような印象を与えているが、少なくとも雑食性の動物に関しては、学習により好みが大きく変わることが知られている。このことに関しては、今から30年も前の論文になるが、
長谷川芳典 (1991).おいしさの起源―学習心理学からの考察―. 異常行動研究会誌, 31, 5-13.
などにまとめられている。
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