Copyright(C)長谷川芳典 |
|
7月17日の昼、久しぶりにドクターイエロー(上り、のぞみ検測)を目撃した。例によって、黄金の大黒天像とのコラボ。【世界三大黄金像についてはこちら】 |
【連載】ヒューマニエンス 「“睡眠” ヒトは眠りで進化した?」 その5 夢と眼球運動 昨日に続いて、 6月24日に放送されたNHKヒューマニエンス、 ●「“睡眠” ヒトは眠りで進化した?」 についての備忘録と感想。 番組の後半では夢についての最新の研究が紹介された。夢の話題については2020年8月16日放送のサイエンスZEROでも取り上げられており、今回の内容の一部はそれと重複していた。 まず、松田英子先生(東洋大学)によれば、「夢の内容は基本的に脳に蓄積した記憶情報が再生される」と考えられている。それがランダムに引き出されて関係なさそうな他の情報と結びつき、荒唐無稽な夢のストーリーを生じさせる。そのさい、夢に出てくる記憶情報は、主にレム睡眠中に整理されているという。このあたりのお話については特に異論は無いが、少なくとも私の場合、夢に出てくる風景やストーリーは過去体験そのものではない。先が読めない意外な展開に驚いたりすることもあり、夢を見ることは私にとって大きな楽しみでもある。しかし、大概は目が覚めた直後に急速に消去されてしまう。 続いて、小川景子先生(広島大学)の研究が紹介された。小川先生は、上掲のサイエンスZEROにも登場されていた。 最初に紹介された、レム睡眠時に生じる急速眼球運動の頻度と夢の鮮やかさに関する観察調査であり、
もっとも、この観察調査については疑問がある。そもそも、夢の鮮やかさには個体差があるし、個々人がどれだけ正確に「夢の鮮やかさ」なるものを評定できるのかどうか疑わしい。実験室の環境にある程度慣れた人について、何回か観察を行い、個体内比較として眼球運動と「鮮やかさの評定」を記録すれば、もう少し説得力のあるデータが得られたのではないかと思われた。なお番組で紹介されたデータは、「二宮(2004)」、「川野(2016)」、「未発表」となっていて、出典がよく分からなかった。 次に紹介されたのは、レム睡眠中に眼球運動が起こった時に脳のどの部位が活性化しているのかについて研究であった。それによれば、活発に活動していたのは視覚野であり、覚醒時に物を凝視した時の脳活動に酷似していた【Ogawa, K., Nittono, H., & Hori, T. (2006). Cortical regions activated after rapid eye movements during REM sleep. Sleep and Biological Rhythms,4, 63 - 71.】。このことから、レム睡眠の急速眼球運動後に視覚野の活動がありこれが夢と関係していることが示唆された。 ここまでの内容をふまえた上で、眼球運動と夢との関係については2つの仮説があると紹介された。
ちなみにMCの織田さんは、大人になってから夢を見たことがないという。このことに関連して、
ここからは私の感想になるが、「夢が先か、眼球運動が先か」については私は、いとうせいこうさんの仮説が妥当であるように思われる。 今回の番組では全く取り上げられていなかったが、この議論に関連して、「生まれつき全盲の人は夢を見るのか」という疑問が出てくる。ネットで「全盲 夢を見るのか」で検索すると、499000件もヒットするが、基本的には先天性全盲の人でも夢を「見る」ようだ。但し、晴眼者のような映像は体験できないので、夢を「聴く」、夢を「触る」、あるいはそれらから構成された特殊な映像空間を仮想体験するということに近いようにも思われる。 あと、夢の中で音が聞こえたり、特別のメロディーが流れたりすることがあるかどうかについては、私自身は全く記憶がない。昔聴いたメロディーをすっかり忘れてしまった時など、翌朝目が覚めた瞬間にそれを思い出すことは稀にあるが、これは夢の中で聴いたのではなく、あくまで目が覚めた後に思い出したことになるのではないかと思われる。 もう1つ、夢の中でケガをして痛みを感じることがあるかどうかも何とも言えない。あまりの痛みで目が覚めると、本当に痛みがあったということはあるが、これはホンモノの痛みであって、夢の中の仮想の痛みとは言い難いし。 次回に続く。 |