Copyright(C)長谷川芳典 |
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7月25日の朝5時19分頃、南西の空に沈む月が見えた。月齢は14.8でほぼ満月。旧・京山タワーとピッタリ重なる「京山皆既月食現象」が見られるのではないかと期待したが、あいにく、空が明るくなるにつれて輝きが目立たなくなり、月の入り前に薄雲に隠れてしまった。 太陽が旧・京山タワーと重なる「京山皆既日食現象」と同様、ほぼ満月となる月が旧・京山タワーと重なる「京山皆既月食現象」は1年に2回、おそらく夏至の前後1カ月以内の範囲で見られると思われるが、その日の天候に影響されるため今まで見たことがない。月齢にこだわらなければ、理論上、29.5日につき2回、見られるはず。但し、日中は空が明るいため月の入りの観察は困難。また月入りの方位は日々大きく変動するため、ぴったり重なるチャンスはきわめて少ない。 |
【連載】ヒューマニエンス「“腸” 脳さえも支配する?」 その1 脳は腸から進化した 7月15日と22日に、NHK-BSP「ヒューマニエンスで、腸内細菌に関連したテーマが2週連続で放送された。腸内細菌の話題は、単に知的好奇心を満たすというばかりでなく、自分自身の健康管理にとっても重要であり、さっそく感想を書こうと思ったが、まずは腸自体についてしっかり復習しておく必要があると考え、BDにダビングしてあった、 「“腸” 脳さえも支配する?」 について備忘録・感想を記しておくことにしたい。この放送は、私のBDでは2020年12月14日録画となっているが、冒頭で「この番組は10月15日に放送したものです」という字幕が流れており、どうやら2020年の放送開始以来、3番目に取り上げられた話題であったようだ。なおその一部は、2021年5月29日に初回放送された90分SP 「人間を生んだ力とは?」 にも再録されていた。 まず、番組の初めのあたりでは、「腸(はらわた)が煮えくり返る」、「断腸の思い」、「腹が立つ」「腹の虫がおさまらない」などというように、腸を重視した表現がたくさんあり、かつ思考や感情に関係していることが紹介された。そう言えば新渡戸稲造『武士道』の第十二章の切腹の話の中でも「魂は腹に宿るという思想」について述べられている(但し「腹」は、肝臓や腎臓を指す場合もあるようだ)。 腸と脳との関係については、ヒドラの紹介された。清水裕先生(アブドラ国王科学技術大学)によれば、ヒドラは血液も心臓も脳もなく、体の殆どが腸から構成されている。腸には網目状の神経があり、これは哺乳類の腸の神経ともよく似ている。ラットから腸だけを取り出すと、腸だけとなっても独立した生き物のように蠕動運動を繰り返す。進化の過程では、まず腸の神経から神経節が構成され、脊髄の原型ができあがり、さらにより複雑な動きを可能にするため、神経細胞が一部に集まって脳が誕生した。このことから「腸から脳が生まれた」と結論できる。 福土審先生(東北大学)によれば、古典的な神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンはもともと腸の中で存在する。腸の中で使われていたものが脳の中でも使い回されるようになったという。こうして、腸と脳が協力しあって進化していった。 福土先生によれば、栄養があるものはゆっくり消化・吸収するいっぽう、毒性があるものを早めに排出する仕組は腸だけ判断されている。 出演者の金井隆典先生(慶應義塾大学)は、脳だけで生きている生物はいない。生命活動の基本は、自分の子孫を残すことと自分を活かすことであり、食べる、栄養をとることが原典となっている。 脳の中枢神経でも腸の周りの神経でも対等であり、同じ神経伝達物質を使っているが、その働きは全く異なるという。例えばセロトニンは、脳では「幸せな気持ちにさせてくれる」と言われるが、腸では平滑筋に作用し、蠕動運動を起こすという。なのでセロトニンが出なくなると便秘、出過ぎると下痢になる。アセチルコリンは脳の大脳皮質に働きかけ考える能力を活性化させるが、腸の中では平滑筋を収縮させる機能があるという。番組では特に説明はなかったが、ノルアドレナリンについても脳と腸では働きに違いがあるらしい。 ここからは私の感想になるが、最近、歳を取るにつれて、自分の精神状態、欲求、活発さなどが体の状態によって大きく影響されることを強く感じるようになってきた。その中でも特に、腸の状態は重要である。眠気覚ましにコーヒーをたくさん飲んでも、お腹の中がゴボゴボになれば頭はちっともスッキリしない。気分の原点はおそらく腸に依存している。私の場合、規則正しい生活は非常に重視しているが、なぜ規則正しくなければダメなのかと言えば、けっきょくは、腸の状態を健康に保つということであり、もしかすれば、これは腸内細菌に支配されているためかもしれないと思ってみたりする。 次回に続く。 |