Copyright(C)長谷川芳典 |
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7月25日の夜はよく晴れ、南東の空に20時半頃には月齢15.4の赤い月が現れていた【写真上】。その後、細い雲に遮られて鉢巻き型の月も出現した。 |
【連載】ヒューマニエンス「“腸” 脳さえも支配する?」 その2 脳腸相関 昨日に続いて、NHK-BSP「ヒューマニエンス: 「“腸” 脳さえも支配する?」 についての備忘録と感想。 番組では続いて、栄養を吸収し毛細血管に送り込むという絨毛(じゅうもう)の役割が説明された。興味深いのは、腸の絨毛にも味覚センサーがあり、酸味を除く、甘み、塩味、苦味、うま味の4つのセンサーが腸で見つかっているという。その中でも、うま味は生まれた時に母乳を通じて体験されるという。このうま味が舌ではなく腸で感じることで大人になってからの性格に影響を与えるらしい。 飛田秀樹先生(名古屋市立大)の実験では、ラットが2つのグループに分けられ、一方には成長期にうま味を与え、もう一方にはうま味を与えない。大人になってからの行動を比較すると、うま味をとったラットのほうが攻撃性が減少し穏やかな性格になったという。この比較だけでは、うま味が舌で体験されたためなのか、腸で体験されたのかは区別できない。そこで、腸と脳の間の神経を切り、舌だけからうま味を感じられるようにしたところ、攻撃性は低下しなかった。このことから、腸でうま味を感じることが重要であると説明された。さらに、このことから、幼少期からうま味をたくさん経験している日本人の性格が議論された。 ここからは私の感想になるが、上掲の実験は、うま味の成分そのものではなく、また舌で感じるうま味でもなく、腸で感じられたうま味自体が攻撃性を低下させることを示しているのは確かだと思われる。もっともその効果がどの程度長期的に働くのか、また長期的に働いた場合それがどういう仕組によるのかはイマイチ分からなかった。うま味が直接的即時的に攻撃性を低下させるというなら、外国要人との会談は、うま味を多く含んだ夕食をとりながら行うことが望ましい。しかし、そうではなくて、発達過程での味覚体験がもたらす長期的な効果であるとすると、大人になってからではもはや変えられないようにも思われる。 このほか、腸でのうま味の直接体験が攻撃性を低下させるのではなく、うま味成分がまず腸内細菌に好影響を与え、好影響によってうまくバランスが保たれているという情報が脳に伝わって攻撃性を低下させているという可能性もあるように思う。 番組ではさらに、福土先生から「脳腸相関」についての説明があった。脳の興奮が自律神経やホルモンを通じて腸に影響を与える。一方、腸の中の環境の変化が脳に伝わって脳の特定の部位を刺激するというように脳と腸は密接に影響しあっているという。金井先生によれば、例えばパーキンソン病は脳に変性タンパク質が蓄積することで深刻な運動障害を引き起こす病気であるとされているが、腸で作られている変性タンパク質が脳で蓄積されることが分かってきているという。【最新の研究の一例がこちらに紹介されていた。】 次回に続く。 |