じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 前線の停滞で各地で大雨被害が出ているが、岡山南部では8月15日の朝が止み、わずかな時間ではあるが日も射した。
 写真は、側溝を流れる雨水。楽天版(8月14日付け)にも掲載したように、雨水が側溝や坂道を流れる時には、滑らかな流れにはならず、階段状、あるいは棚田型(波紋状)に流れる場合があるようだ。上流に間欠泉があるわけではないので、おそらく、流れがデコボコの斜面と摩擦を起こすことによって渦を作り、規則的な波動を生み出すのではないかと思われるが、流体工学の知識が無いので全く分からない。



2021年8月16日(月)



【連載】#チコちゃんに叱られる!「ネクタイをつける理由」

 8月13日(金)に初回放送された、NHK「チコちゃんに叱られる!』の感想と考察。

 この回は、石原さとみさん、郷ひろみさん、奥田民生さんが出演し、放送時間を1時間12分に延長した「真夏のエキゾチッコ・ジャパ?ン スペシャル」として放送された。しかし、翌日土曜日は、大雨情報に切り替えられ、再放送は中止となった。この回は、
  1. なぜネクタイをつける?
  2. ブドウに付いている白い粉ってなに?
  3. 消せるボールペンで書いた文字が消えるのはなぜ?
  4. お茶は緑色なのになぜ茶色という?
  5. なぜ人は怒る?
という5つの疑問が取り上げられた。本日は、このうち1.のネクタイについて考察する。

 ネクタイの由来について、番組では「生きて帰るため」と説明された、戦争真っ只中の17世紀、フランスでは外国から多くの傭兵を雇った。その中にいたクロアチアの兵士は首にカラフルな布ぎれをつけており、勘違いから、首に巻かれた布きれの呼称ではなくクロアチア人を意味するクラバットと呼ばれるようになった。この布きれの由来は、「これを身につけていれば(戦争で)死なないと信じられていたことにある。クラヴァットの呼称は、その後、単に首(ネック)に結ぶ(タイ)という意味の「ネクタイ」の呼称が使われるようになった。
 流行の変遷により、クラヴァットの結び方はいろいろ変化したが、1860年頃、上流階級の若者達が馬車でスピードを競うフォアインハンドクラブで、現在も主流となる縦結びが流行した。
 ネクタイはもともと長方形の布を折りたたんで使っていたためほどけやすいという欠点があったが、1923年、ジェシー・ラングスドルフが、1枚の生地を45°の角度で「中継」「小剣」「大剣」という3つのパーツに分けて裁断する方式の特許を申請した。これにより、結びやすくほどけにくい現在のネクタイが誕生したという。

 このことでふと思ったが、先日再放送が始まった、ジェレミー・ブレッド主演のシャーロック・ホームズの冒険の第1回「ボヘミアの醜聞」の最初のシーンでは、ワトソンは今と同じ縦結びのネクタイをしていた(ホームズは横結び)。こちらの資料によれば、「ボヘミアの醜聞」は1887年の5月の出来事なので、細い布を縦結びするネクタイが当時に出回っていたのかどうか考証する必要がありそうだ。もっとも、録画・再生でチェックしてみたところ、細いネクタイを縦結びにしている登場人物は、ワトソンの冒頭のシーンを除いて見当たらず、もし時代考証が正確であるならば、ホームズの時代には現代風のネクタイは定着しておらず、マフラーのように布を首に巻く人のほうが多かったようにも思えた。

 さて、この連載の中で何度も指摘しているように、「人はなぜ○○するのか?」という疑問に対しては、
  1. その行動の起源、由来、意味などを解明
  2. 由来はどうあれ、なぜ、現代社会でそれが行われているのか
という2つの観点から原因を解明する必要がある。後者に関して、番組では、
  • ネクタイをちゃんと結んでいると、相手に対して失礼じゃない
  • 仕事に失敗しないで帰ってくることができる
という点で、現代人のお守りになっていると説明されたが、これだけでは納得できないところがある。

 そもそも、ネクタイの習慣は西欧由来であり、例えば文革の頃の中国はみな人民服を着ていた。そのほか、アジア、中東、アフリカの人々もみな、自国の独自の民族服で正装することが多かった。ところがいまの時代、サミットでも国際学会でも、たいがいの男性はネクタイを着用しており、比較的ラフなスタイルを好むアメリカ人男性でさえ、式典や講演の際にはネクタイをつけている。これらの現象は、かつてのクロアチア兵の「クラヴァット」とは直接関係ない。いまなぜ、ネクタイ着用が男性の正装とされているのか、別の観点から説明する必要があるように思われる。

 ちなみに私自身は、定年退職時に、手持ちのネクタイの大部分を、布対象の資源ゴミで捨ててしまった。葬儀用の黒のネクタイだけはとってあるが、できれば使わないままにしておきたいものだ。

 次回に続く。