じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 9月21日の朝5時30分頃、西の空に月齢13.9の月が沈む様子を眺めることができた。今回の満月は午前8時55分なのでほぼ満月。なおこの日の夕刻に昇る月が中秋の名月となる。写真下段は5時53分過ぎに撮影した日の出の写真。

2021年9月21日(火)



【連載】新型コロナとABO血液型(5)「免疫学からみた血液型と性格」(3)

 昨日に続いて、藤田紘一郎先生が『心理学ワールド46号』(2009年7月)に寄稿された、

巻頭随筆 ことばの森 免疫学からみた血液型と性格(2009年7月)』

に関する考察。

 昨日も述べたように、ABO血液型の違いによって、ある傾向(免疫力、あるいは何らかの行動傾向)に有意な差が見られるかどうかという調査は、未知のメカニズムを発見し応用に役立てるという面で大いに役立つ可能性がある。但しこれはあくまで、「何らかのバイアスがかからず、かつ、結果を左右するような別の諸要因の影響を取り除いたうえで、統計的に有意な差が得られた時」に限定される。

 まず、しばしば指摘されているように、自己成就現象の影響がある。質問紙型の性格検査では、しばしば自己評定型の質問が並べられているため、血液型本やかつての血液型性格判断喧伝番組を繰り返し視ていた人は、質問項目のなかで自分の血液型に合致する行動傾向があるかないかを問われた時に「あてはまる」と答えやすくなる。そういう人たちが調査対象に1割でも含まれていれば、見かけ上、血液型による有意な差が確認される可能性が高い。このほかにも様々な要因が考えられるがここでは省略する。

 今回取り上げた免疫学との関係で私が疑問に思うのは、まず、藤田先生の言われる免疫力と獲得免疫との関係である。藤田先生は、
免疫力は生まれながらにして決まっている。その順位は、免疫力の強い順に、

O>B>A>AB

となる
と論じておられるが、ここで免疫力が弱いとされているA型者やAB型者であっても、一度感染した上で強固な獲得免疫が形成されれば、その後の再感染を防ぐことができるはずだ。

 次に疑問に思うのは、「かかりやすい」と「かかった」との区別である。藤田先生は、
  1. A型者は、肺結核、癌、糖尿病、心筋梗塞など、いろいろな病気にかかりやすい。結核は伝染病なので、周囲の人たちを気にするようになる。また、多くの生活習慣病は人間関係から受けるストレスで悪化するため、A型者は周囲の人たちと協調するような性格になっていった可能性がある。
  2. B型者は、O型者の次に免疫力が高いので自己主張が強いが、肺炎や食中毒にかかりやすいので多少オタク気味になり、自由奔放に見られるようになる。
  3. AB型者は免疫力が最も弱いので、なるべく外出は避け、自分自身でコツコツと勉強し、芸術肌を身につけるようになった。
と論じておられるが、現代社会では、
  1. 「A型者は結核にかかりやすい」とされているが、現在では、よほど油断しない限りは【稀に社員寮、学生寮なので集団感染がある】、BCGなどで十分防げるはず。周囲の人たちを気にするほど深刻ではない。また、多くの生活習慣病は人間関係から受けるとしても、協調的になることがストレス軽減になるとは必ずしも言えない(協調することが逆にストレスになることもある)。
  2. B型者は肺炎や食中毒にかかりやすいので多少オタク気味になるというが、肺炎になったB型者はそんなに多くはない。またどの血液型者でも、一定頻度で食中毒にかかる。それを言うなら、食中毒にかかった人はみなオタク気味になるはず。
  3. AB型者は感染を避けるためになるべく外出を避けるというが、世の中、そこまで病原菌に充ち満ちているわけではない。
 ま、藤田先生の『心理学ワールド46号』への寄稿は、査読論文ではなく、あくまで「随筆」というジャンルであるゆえ、それなりの想像があっても掲載拒否になるものではなかろうが、そのことを勘案しても、飛躍やコジツケがありすぎるように思えてならない。

 一般論として、感染症にかかりやすい人とかかりにくい人で、日常の行動様式に違いが生じることは確かであろう。なので、「免疫力と性格には関係がある」ということは言える。それゆえ、形式上は、
  1. ABO血液型と免疫力には関係がある
  2. 免疫力と性格には関係がある
  3. よって、ABO血液型と性格には関係がある
という推論が成り立つように見える。しかし何度も指摘しているように、この推論が有用であるかどうかは、血液型という情報が不明であった時に比べて、血液型の情報を得た時のほうが、当事者の感染リスクの予測や治療が効果的に行えるのかどうかにかかっている。今のところ私が知り得た範囲では、血液型別に対処するよりも、血液型が何型であれ、とにかく、免疫力の弱い人、強い人、強すぎて自己免疫疾患に陥りやすい人、というように対処したほうが有効な感染防止対策や治療が行えるように思える。