じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 11月10日の岡山は晴れ時々曇りの1日であったが、15時半頃から黒い雲が到来し、わずかながら俄雨が降った【記録上の降水量はゼロ】。写真は雨が上がったあとに備前富士方向に出現した虹。16時20分頃から16時23分頃までの数分間の出来事であったため、気づいた人は少なかったのではないかと思われる。

2021年11月11日(木)



【連載】ヒューマニエンス「“イヌ” ヒトの心を照らす存在」(2) イヌの言語学習

 昨日に続いて、10月21日に初回放送された表記の番組についての感想・考察。
 昨日も取り上げたように、イヌは、言葉の意味【←弁別機能】や他者の情動を聞き取ることができるが、どうやらそれらを処理する大脳半球は異なっており、左脳では「言葉そのもの」、右脳では「イントネーション(を手がかりにした情動の察知)」を処理しているらしいことが説明されていた。
 このイントネーションという手がかりはなかなか興味深いところがある。最近、オンライン授業の関係で機械読み上げソフトを使うようになったが、「心がこもっていない」という批判的な指摘を受けることがある。機械読み上げは標準的なイントネーションで発音しているが【←大阪弁のソフトもある】、感情を込めたイントネーションとか、速度の変化、間合いなどは自動的には調整してくれないため、どうしても棒読み的な音声にならざるをえない。もう少しAIが進歩すれば、読み上げるテキストの文脈に合わせて、「嬉しそう」、「悲しそう」というように読み分けることができるのではないかと思う。

 次に、イヌがどの位の言葉を覚えられるのかということが話題になった。ドイツの研究者が行った実験では、Ricoというイヌは、別室に置かれた10種類のモノの中から指示されたモノを正確に選んで運んでくることができたという。また、別室に、今まで一度も名前を教えられていないモノを1個、すでに教えられているモノを9個配置した上で、一度も教えていない言葉をわざと言うと、今まで教わっていなかったモノを運んできたという。なお、オリジナルの論文はどうやら、

Juliane Kaminski, Josep Call, and Julia Fischer (20004).Word Learning in a Domestic Dog: Evidence for "Fast Mapping".

であり、以下に分かりやすい解説があった。
  • Ruder, K. (2004).Brainy Border Collie Knows 200 Words. 【番組ではこの解説記事が画面に映し出されていたため、これが出典かと思ったが、そうではなくてFischerほかの研究のほうが原典であった。】
  • Daniel J. DeNoon (2004). Smart Dog Knows 200 Words. Rico the Border Collie: A Model for How Humans Learn Language?
 原典を読んでいないので何とも言えないが、若干疑問に思ったのは、
  • 番組では400語以上を覚えると紹介されていたが、2004年時点での解説記事では「200以上の語彙」と半分であったこと。
  • 番組では10個のモノから選ぶとなっていたが、解説記事では「200個のおもちゃのコレクションからランダムに選ばれた40個のおもちゃが配置される」となっていたこと。
  • 慣れ親しんだおもちゃの中に新しいおもちゃを置き、聞いたことのない言葉を使ってそれを取ってくるように指示すると、リコはたいてい新しいおもちゃを取ってきた。その後、1ヶ月間新しいおもちゃを見なかった後、リコは半分の確率で新しいおもちゃを取り出すことができた。
といった点で食い違いがあったことだ。

 解説記事の中で興味深いのは、教わっていない言葉を発せられた時に、選択肢の中から新奇なアイテムを選ぶことができたという点である。この場合「教わっていない言葉」というのは、
  1. それは「初めて見たモノ」である。【特定事物の名前ではない】
  2. それは新奇なアイテムの名前である。
という2通りの意味があるが、このイヌの場合は新奇なアイテムの名前として学習されたようであった。解説記事の中でも言及されていたが、こういう学習は、新しいモノの名前を覚えていく上で重要なプロセスとなる。

 ちなみにこちらの記事を見る限りでは、イヌを対象とした刺激等価性の研究はあまり行われていないか、もしくは注目すべきような発見は報告されていないようであるが、勉強不足のため何とも言えない。

 次回に続く。