じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 昨日の日記に「落ちないモミジバフウ」の写真を掲載したところであるが、岡大西門近くの座主川沿いに、まだ葉を落とさず鮮やかに紅葉している木が1本だけ残っていることに気づいた。葉っぱの特徴から「サンカクバフウ(フウ、タイワンフウ)と思われる。もともとモミジバフウに比べるとサンカクバフウのほうが紅葉や落葉が遅いことに加えて、この場所は他の常緑樹が周りにあり、寒気が当たりにくくなっているためと思われる。


2021年12月18日(土)



【連載】チコちゃんに叱られる!「痒みとは何か?」

 12月17日に放送された表記の番組についての感想と考察。この回は、
  1. かゆいってなに?
  2. ストラディバリウスが高いのはなぜ?
  3. から揚げといえば鶏肉ばかりなのはなぜ?
という3つの疑問が取り上げられた。本日はそのうちの1.について考察する。

 番組によれば、痒みについての研究は1950年頃から行われてきたが、当初、痒みは「軽い痛み」であり、痒みを感じる神経は存在しないと考えられてきた。それが誤りであることが分かったのは1997年であったという。もし痒みが「軽い痛み」であるとするなら、胃の軽い痛みは「胃が痒い」と表現できるはずだが、実際は内臓は痒みを感じることはない。実際は、痒みを伝える神経や、痛点とは別の痒点(ようてん)が別に存在することが約25年前に解明された。
 痒みは、「体に良くないものがついたサイン」であり、体を異物から守る防衛反応、警告反応として機能している。硬い繊維などで背中が痒くなるのは警告のサイン、また虫に刺されて痒くなるのも、虫が持っている毒のせいではなく「これから炎症が起きますよ」という警告のサインであるという。皮膚に異物などがついたり虫に刺されたりすると、その近くにある肥満細胞からヒスタミンが分泌され、それが痒みを伝える神経により脳に伝わり痒みを引き起こす。

 次に問題となるのは、痒い時になぜ掻くのか?という疑問であるが、最新の研究によれば、痛みの神経が痒みの神経を抑えることが科学的に明らかにされた。痒いところを掻くと、その近くにある痛みの神経も同時に刺激され、GABAやグリシンが分泌され、これ痒みの神経を抑えるのでり痒みがおさまる。
 痒みを抑える方法としてもっと効果的なのは皮膚を冷やすことであり、皮膚を痛めずに痒みを取り除くことができる。もっとも、痒みには、内臓の病気を伝える役割もあり、例えば癌の場合、癌細胞から大量の痒み物質が放出され、痒点のある皮膚の表面が痒くなる。このほか、肝硬変、糖尿病、悪性リンパ腫などでも痒みが生じることがあるので、ただ皮膚を冷やして放っておいてよいというものではなさそうだ。

 ここからは私の感想・考察になるが、痒みについては私自身、「痒みは軽い痛みである。痒みを感じる点やそれを個別に伝えるような神経細胞は存在しない」と思っていたので、今回の説明は驚きであった。ウィキペディアでも痒みの項目には「痒点」という言葉さえ登場せず、なぜ痒みが起こるのかについての体系的は説明はなかった。また痒みと痛みについては共通点や違いが羅列されているだけで、痛みの神経が痒みの神経の働きを抑えるということについても全く言及されていなかった。現在までに知られている主な感覚には含まれておらず、他の感覚の項目のところに、

●什痒感:いわゆる「痒み」の感覚。長い間「痒みは“痛み”の軽いもの」と思われていたが、近年、独立した感覚である可能性が示された。

という記述があるのみだった。その注からのリンクでこちらの記事【但し旧バージョンのURL】に2009年のリリースがあり、
これまでの脳科学研究では“痛み”についての脳内メカニズムの研究は進んでいますが、“痒み”はどういったものか、脳の反応について、明確な回答は得られていませんでした。それは“痛み”と違って実験的に“痒み”を引き起こす方法が難しく、“痛み”とは異なる純粋な“痒み”に対する脳の反応を調べることができなかったからです。今回、自然科学研究機構 生理学研究所の柿木隆介教授、望月秀紀研究員らの研究グループは、新たに“痒み”を電気的に刺激する方法を開発し、それを用いて、“痒み”を感じる脳の部位を特定しました。“痒み”を感じる脳内メカニズムを明らかにし、“痛み”と“痒み”が異なることを明確にする研究成果です。アメリカ生理学会の神経生理学雑誌に発表されました(8月26日よりオンライン版で先行公開)。
と記されていたが、あれっ?柿木先生と言えば、チコちゃんのレギュラー解説者のお一人ではなかったかな?
 いずれにせよ、痒みの研究は最近になってから急展開し、かつての通説(俗説)は否定されつつあるようだ。

 私がいまだによく分からないのは、
  1. 痒みを感じた上で、その部位を「掻く」ということにはどういう適応的意義があるのか?
  2. 痒みはなぜ不快で、それを掻くことはなぜ「気持ちいい」という快感になるのか?
  3. 瞑想などの方法を通じて、痒みはどこまで消し去る(←正確には、痒みを受け流す)ことができるのか?
といった点である。1.については、掻くことで皮膚表面の異物を取り除けるのであれば適応的だろうが、大概の場合は、掻けば掻くほど炎症が酷くなり化膿する場合さえある。

 このほか、痛みとの関連で思い出したが、辛味というのは生理学的定義に基づく味覚とは異なり、舌・口腔のバニロイド受容体(カプサイシン受容体)で感じる痛覚であるとされている。ならば、口の中で、痒みに相当する擬似的な味覚があっても良さそうな気がするが、口の中が痒い、舌が痒いという現象は起こらないとことが興味深い【鼻の中、耳の中、目の表面は痒みを感じるようだが】。

 次回に続く。