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【連載】チコちゃんに叱られる!「1mは何の長さ?」/時間に依存した長さの定義はできるのか? 1月21日に初回放送された、表記の番組についての感想と考察。この回は、
この基本単位の定義については、チコちゃんの番組では2018年9月21日の放送で「1グラムって何の重さ?」という疑問が取り上げられた。このほか、Web日記にはメモは残していないが、2020年5月27日放送の「又吉直樹のヘウレーカ」で「なぜ単位はいるのだろう?」という話題が取り上げられたことがあったが、私には簡単には理解できないところがあり、今回の放送でますます疑問が大きくなってしまった。 今回の放送では、まず、18世紀に、長さの単位が各国によってバラバラであり貿易をする時に問題が生じていたこと、そこで「世界で統一した極めて正確な基準を作ろう」という動きが起こり、フランスのシャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴールが中心となって、子午線長による定義が提唱された。そのさい、地球円周の4000万分の1の長さは男性が両手を広げた長さの半分くらいに相当し、日常社会の単位として利用しやすいメリットがあったという。 その後メートル原器が基準となっていたが、白金・イリジウム合金であっても衝撃によって欠けたり年月などによって伸び縮みするリスクがあることから、1960年、クリプトン-86スペクトル長による定義に変更された。ちなみに、1960年と言えば私が小学校2年生の時であり、小学生時代に読んだ子ども向け科学書の中には「1メートルとは、メートル原器の長さ」と記したものがまだまだ多く残っていた。 しかし、クリプトン-86スペクトル長による定義では目盛りの精度に問題があり、1983年の第17回CGPMでメートルの定義はさらに変更され、現在用いられている「光速」と「秒」で表す方法になった。ウィキペディアによれば、これは、これはセシウム原子時計が発明され、正確な「秒」が決められた事と表裏一体を成しているという。ちなみに1983年と言えば私はすでに31歳となっており、高校や大学で教わった定義とは異なっていた。質量kgの定義もそうだが、新たな変更にはついていけないところがある。なお放送では紹介されていなかったが、その後、2002年、国際度量衡委員会 (International Committee for Weights and Measures, CIPM) は、メートルが固有長であるべきであり、一般相対性理論が予測する効果はほとんど影響を及ぼさず、ありうる実測の不確かさは無視してもかまわないとみなしたという。 放送内容及びウィキペディアによる補足は以上であったが、私が分からないのは、 ●真空中で光が1/299792458秒に進む距離 という最新の定義の中に「秒」という時間が含まれていることであった。放送によれば、この基準はこの世で一番変わらないもの、つまり相対性理論で「誰から見ても一定の速度で進む」という光の速さを利用したものであるという。 ここで私が分からないのは、確かに光の速さは一定であったとしても、1/299792458秒という時間の長さは観測者によって異なってくるのではないかということだ。私が素朴に理解している相対性理論によれば、準光速で移動する宇宙船の中では、地球上に比べて時間がゆっくり進むとされている。であるならば、「真空中で光が1/299792458秒に進む距離」と言っても、地球上での1/299792458秒と、準光速宇宙船内での1/299792458秒では時間の長さが異なり、後者のほうが遅くなるはずだ。であるとすると、1mの長さも、宇宙船内のほうが長くなるはずではないか。それとも、地球上での原子時計と、宇宙船内での原子時計の動きをどこか別の場所で観察したとすると、全く同じように時を刻んでいることになるのだろうか。 このほか、
相対性理論の骨子を正確に理解することは私の老後の課題の1つではあるのだが、加齢が進む中で、理論的な理解はもはや困難。せめて、アナロジーやメタファーのレベルでよいから得心がいけばよいと思っている。 |