じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 ツイッター経由で、札幌市・モエレ沼公園に積もった雪に亀裂が入り、急遽利用禁止になったというニュースが話題になっていた。モエレ沼公園は私も一度だけ訪れたことがあり、モエレ山にも登ったことがあった。
 もっとも、今回報じられている「亀裂」とは積もった雪の亀裂であって、山体自体に亀裂が入ったわけではいようだ。見出しが不正確なため、山自体がポッカリ割れてしまったと勘違いしているツイートも見受けられた。


2022年2月13日(日)



【連載】コズミックフロント「宇宙をひらく 究極の“時間”に迫れ!」(1)光格子時計と卵パック
 1月6日に初回放送された表記の放送を録画・再生で視た。ウィキペディアの履歴によれば、187回目の放送ということになるという。

 公式サイトによれば、この回は、
どこでも一定に流れるように思う「時間」。しかしその本質に迫る研究では「時間の流れが場所により異なる」ことが語られる。天文学、物理学、脳科学での時間研究の最前線!
という内容となっているが、後半に進むにつれて話が難しくなり、理解困難になってしまった。以下、疑問に思った点を記すことで、少しでも理解を深めていきたいと思う。

 この回の放送ではまず、東京大学木曾観測所で、105cmシュミット望遠鏡に「トモエゴゼン カメラ」を取り付け、1秒間に2枚の画像を取得し、夜空を動画化して捉えるという研究が紹介された。動画化することで、長時間の短時間の変化や、未知の小惑星の発見が可能になった。観測に時間軸を取り入れた「時間軸天文学」の発展が期待された。
 もっとも、ここまでは、時間そのものの研究ではなく、後半の内容とは全く関係が無いようにも思われた。おそらく番組制作上、後半部分だけでは難解すぎてクレームがつけられるため、敢えて分かりやすい内容を前半に付け加えたのではないかと推測された。

 放送では続いて、1972年に発掘された奈良県明日香村飛鳥水落遺跡にある日本最古の時計「漏尅(漏刻、ろうこく)」、さらに明石市立天文科学館に展示されている日時計、砂時計、振り子時計、クォーツ時計、セシウム原子時計「5071A」というような、より精密な時計が作られていった歴史が簡単に紹介された。

 ということでここまでは分かりやすい内容であったが、この先からは急に話が難しくなる。

 まず原子時計の仕組みについて、
物質を作る原子は、種類ごとにそれぞれ決まった固有の周波数の電磁波に当たった時だけ「励起」という高いエネルギー状態になることが分かっている。そこでその周波数を測り、励起した時の1周期にかかる時間をもとに特定の倍数をかけて1秒を求める。セシウム原子時計では、1周期の91億9263万1770倍を1秒と定めている。
と説明された。これは現行の「秒」の定義であり、ウィキペディアでは
秒(記号は s)は、時間の SI 単位であり、セシウム周波数 ΔνCs、すなわち、セシウム 133 原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位 Hz(s-1 に等しい)で表したときに、その数値を 9192631770 と定めることによって定義される
と定義されているようである。
 放送では上記を上回る精度を持つ時計として、光格子時計の研究が紹介された。光格子時計ではセシウムの代わりにストロンチウムが使用される。ストロンチウム原子が励起する周波数は1秒間に429兆回であり、セシウムの92億回よりも4万倍を超える精度を持つ。但しその振動を図るには光格子という原子を捕まえる容れ物を開発する必要がある。光格子を作るにはまずレーザー光を鏡で反射させて重ね合わせて定常波を作る必要がある。定常波は卵パックに喩えることができる。卵パックの凹み(定常波のエネルギーが低いところ)に落ち込むので、それを一気に測ることでより正確な時間が分かる。しかし、卵パックに入った原子をレーザーで励起させようとすると、励起した原子の影響で卵パック自体が形を変えてしまい、計測の邪魔をしてしまう。放送に登場された香取秀俊先生(東京大学)たちは、レーザーをある特定の周波数にしておくと、基底状態と励起状態の卵パックの形が全く同じになることを発見した(=魔法周波数)。こうして10の18乗分の1の誤差で1秒を決めることに成功したという。

 ここまでのところの内容はすでに私の理解能力を超えてしまったが、透明卵パックの開発経緯についてはチコちゃんの番組で紹介されたことがあり記憶が残っていた。香取先生が卵パックを喩えに使うことができたのも、元はと言えば卵パックが存在しているからに他ならない。もしかすると、卵パックの発明が魔法周波数の発見のヒントになったという可能性もある。【もちろん、卵パックが存在しなくてもいずれは光格子時計は開発されたとは思うが】。

 次回に続く。