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【連載】ヒューマニエンス「“天体のチカラ” 絶滅と進化のインパクト」(3)「脳の巨大化と進化」「宇宙線による多細胞生物誕生」 昨日に続いて、2021年12月16日に初回放送された表記の番組についての備忘録と感想。 放送では恐竜の話題に関連して、恐竜は1億6000万年ものあいだ存在したがなぜその間に脳が大きくならなかったのか?という疑問が取り上げられた【人類はおよそ700万年間】。このことについて更科先生は、脳の巨大化は必ずしも良いことではないと指摘された。脳は無条件に良いことであり進歩であると思われがちであるが、実際には他の臓器に比べてエネルギーを多く使うが、お荷物になる場合もある。例えば、人間とネズミが無人島に流された時のことを考えると、いくら人間が俺のほうがネズミより頭がいいんだと自慢してネズミとサバイバル競争をしても、おそらくネズミより先に死んでしまう。 続いて取り上げられた話題は、絶えず飛来する莫大な量の宇宙線の影響であった。宇宙線は厚い大気と磁場という2つのバリアによって弱められているが、遠い過去には強力な宇宙線が地上に届き地球生命に影響を与えた可能性があるという。特に7億年前には天の川銀河と小さな銀河が衝突し、超新星爆発が次々と起こり、発生した宇宙線が地球に届いた。当時の地球は全球凍結の時代であったが、そのなかで細々と生き続けていた原始微生物が宇宙線の影響を受けた可能性がある。例えば、ある種の細菌に宇宙線と同じ効果をもたらす紫外線を与えると、抗生物質に耐性を持つような変異が起こることがある。じっさい、その細菌の遺伝子を分析すると、遺伝子の1つが突然変異を起こしていることが確認された。このことから、大量に到達した宇宙線が突然変異を起こして進化のスピードが速まった可能性がある。丸山茂徳先生(東京工業大学)によれば、全球凍結の前後で生物のサイズは1マイクロメートルの微生物は1メートルの大きさの多細胞生物に進化したが(面積比では1兆倍)、この進化には宇宙線が影響した可能性があるという。宇宙線には、粒子宇宙線(アルファ線・ベータ線など)と電磁放射線(ガンマ線・エックス線など)があるが、どちらもエネルギーが高いので生物には悪影響を与えるが、一部が適応的に進化することがある。 ここからは私の感想・考察になるが、脳の巨大化と適応の関係は確かにその通りであろうと思う。人間は高等生物であると言われるが、進化のプロセスは必ずしも「高等」の方向を目指すものではない。過酷な環境変化のもとで、速く動き回れることが適応的であればおそらく小蠅のようになるし、気温の変化が激しければ体毛や厚い皮膚を持つようになる。人類の脳も、祖先たちが集団生活をするなかで環境に適応しやすいように進化した結果に過ぎない。 7億年前の多細胞生物の出現については、隕石の落下によりリン濃度が増えて多細胞生物の進化を促したという仮説があり、実際そのころには多数の隕石が月や地球にやってきた可能性があるようだ。とはいえ、いくらリンが増えてもそれを利用できるように遺伝子が変化しなければ多細胞生物は生まれない。その変異を促したのが宇宙線であったという説にも納得できることがある。 7億年前に天の川銀河が別の銀河と衝突したという話は初めて聞いた。ネットで検索したところ、100億年前に衝突したという説があるが、7億年前についてはよく分からなかった。マゼラン雲のことも頭に浮かんだが、7億年前の衝突と関係があるかどうかは分からなかった。 次回に続く。 |