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【連載】ヒューマニエンス「“老化” その宿命にあらがうか 従うか」(5)センチナリアンの体質、APOEの型 昨日に続いて、2022年4月12日に初回放送された表記の番組についての備忘録と感想。 放送では続いて、4番目のテーマとして「センチナリアンがもつ特殊な遺伝子」という話題が取り上げられた。ここでいうセンチナリアン(センテナリアン)とは100歳以上のお年寄りであり、日本では「百寿者」とも呼ばれている。 センチナリアンを対象とした研究のポイントは、長生きの原因が
岡野栄之先生(慶應義塾大学)の研究室では100歳以上の方の生体材料の分子生物学的な解析を行っているが、100歳以上生きる方々は特殊な性質を持った人と言わざるを得ないことが分かってきたという。放送冒頭でも紹介された箱石シツイさん(105歳)の場合、かなりひどい怪我をしても治りが早く、血管年齢は普通の人より20年は若いと言われている。しかし、軽い運動を欠かせないということ以外は特に気を配っておらず、食事内容も特に変わった内容ではない。さらに脳には萎縮は殆ど見られない。ちなみに、岡野先生によれば、110歳以上まで生きる人は、100歳以降ほとんど認知能力が低下していない。 岡野先生が488名のセンチナリアンの細胞からDNAを抜き出して解析したところ、センチナリアンと、一般人、アルツハイマーに罹りやすい人の違いは、APOE(アポイー、アポリポプロテインE、Apolipoprotein E)にあることが分かってきた。APOEによって作られるタンパク質は人間では変異型を含み3種類が確認されているが、
岡野先生によれば、センチナリアンになる人は少々不摂生をしても長生きできるが、一般人が不摂生をするとダメになる。放送では、カーンきょうだい(4人)のように、全員が100歳以上長生きしたケースがあり、遺伝的要因が働いていることが示唆される。このほか、センチナリアンは、糖尿病など病気のリスクを減らす要因が積み重なっているとも指摘された。 ここからは私の感想・考察になるが、私の家系でも何人か長寿者が出ているが、おおむね90歳半ばぐらいまでは健康であり、新幹線を利用した旅行もできるものの、90歳代半ばを過ぎたあたりからは急激に体力が衰えたり、物忘れがひどくなるといった老化が加速していた。ま、一般人の家系では95歳くらいまで長生きできれば長寿を全うしたと言ってよいのではないかと思う。 放送でも言及されていたが、現在でも、自分のAPOEが何型であるかは調べられることができるという。であるならば、ぜひとも、安価で検査できる体制を整えて欲しいと思う。これが分かれば、例えば、年金の受給開始年齢を先送りしたほうが良いかどうかもある程度判断できるし、より計画的に終活を行うこともできる。もっとも大多数がAPOEの型に基づいて年金受給開始年齢を選択するようになることで、みんながお得になるわけではない。年金財政は、早死にするか長生きするかということをランダムな確率現象として捉えたうえで成り立っているので、早死タイプの人が若い時から、また長生きできそうな人が受給開始を先延ばしすると、大赤字になってしまうからである。 次回に続く。 |