じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 昨日の日記で、ツワブキの花弁数が8枚であると書いたあと、11枚や13枚の花もあると訂正した。写真はその証拠写真。
 さらに検索した結果、ウィキペディアによれば、ツワブキの花は、
花期は初冬から冬にかけて(10 - 12月ころ)。葉の間を抜けて花茎を伸ばして高さ30 - 75 cmになり、その先端が枝分かれした散房花序をつけ、直径5 cm前後のキクに似た黄色い頭状花を、ややまばらに数個まとめて咲かせる。花のつくりは、外周に舌状花が並び、中心には密に管状花が集まっていて、どちらの花も結実する。
というような構造を持っており、私が「花びらの数」として数えたのは外周の舌状花の部分だけであったことが分かった。こちらに写真入りの詳しい解説あり。また、オオツワブキという別の品種があるようだ。
 こうしてみると、一口に「花びらの数」とか言っても、見た目の「花びら」だけでなく、複雑な構造に注意を向けなければならないことが分かった。

2022年11月27日(日)



【連載】ヒューマニエンス「“数字” 世界の秘密を読み解くチカラ」(5)生物の形や構造は創造主ではなく相互作用で作られる

 昨日に続いて、11月15日に初回放送された、

NHK ニューマニエンス「“数字” 世界の秘密を読み解くチカラ

についてのメモと感想。今回で最終回。

 さて、昨日の日記で、
  • 黒色の縞 dXγ/dt=f(Xγ,Yγ)+μ(Xγ+1-2Xγ+Xγ-1
  • 白色の縞 dYγ/dt=g(Xγ,Yγ)+ν(Yγ+1-2Yγ+Yγ-1
  • γ=1,,,,,N
というチューリングの数式を取り上げた。この数式は、数値をちょっと変えるだけで、シマウマのような縞模様、チーターのような斑点模様、さらにマダラ模様まで、自然界の動物のほぼすべての模様を再現することができる。模様だけでなく、さまざまな生物の形まで数式で表現できるかもしれないとのことだった。
 人間や動物の形や模様は、多くの宗教では「創造主である神が設計した」と信じられている。また、世俗的・擬人的観点からも、偶然の産物であると見なすにはあまりにも規則的で精密な構造を持つ存在は、「設計図を基に、何らかの司令塔から役割指示が発せられて作りあげられた」と考えるのがごく自然であろう。じっさい、どんなに優秀な大工さんが集められたとしても、設計図と役割分担を指示する棟梁がいなければ建物を作ることはできない。
 しかし、生物の形や構造というのはもっとシンプルな原理、つまり細胞や分子の関わり合いや相互作用の中で、作りあげられるようである。もちろん、その結果の殆どは失敗作に終わるだろうが、ごく一部は環境にうまく適応して生き残り、同じ遺伝子を次の世代に伝えながら繁殖していくのである。そのプロセスに「創造主の意志」のようなものが入り込む余地はない。

 今回取り上げられたシマウマの縞模様の場合も同様であり、シマウマの設計図に基づいて模様が描かれたわけではなく、細胞や分子の相互作用だけで形成される(←設計図ではなく、数式で表現可能な相互作用の法則に基づいて形成される)という点がまことに興味深い。
 そのいっぽう、シマウマになぜ縞があるのか?という謎については、適応的価値からの説明が可能である。もっともウィキペディアによれば、シマウマの縞模様の効果については諸説があるようだ。世俗的な説明としては

●シマウマは草の多いアフリカのサバンナで暮らしている、捕食動物は色が見えにくいため、シマウマの縞と草は見分けにくくなるため、結果的に、縞の無いシマウマよりも縞のあるシマウマのほうが捕食されにくく、生き残った。

というのがあり私もそのように思っていた。しかし、そもそも肉食動物たちは、縞があってもなくてもそれを見分けられるほどの視力を持ち合わせていない。(ウィキペディアによれば、「天敵の大型肉食獣は人間ほど縞の認識ができておらず、このため同じところに暮らす他種の植物食動物の単一の色の被毛に対して、縞模様が特に天敵を混乱させることに優位ではないということが判明」) また、もし縞模様が「捕食動物から見えにくい」のであれば、シマウマ以外の草食動物たちもみな縞だらけに進化するはずであろう。
 ウィキペディアによれば、「捕食動物から見えにくい」に代わる有力な説としては、現時点では、
ツェツェバエは色彩が均一な面を好んで着地しシマウマのような模様のある面は避ける傾向にあることが実験により確認されたこと等により、吸血性ハエの被害からの防御と縞模様との関係は「きわめて高い」。
というのがあるようだ。

 放送ではさらに、縞模様と斑点の共通性が説明された。両者はいずれも「等間隔」を実現しており、「波」によって作り出されている。波の高い部分が平坦であるような形は上から見れば等間隔の縞となるいっぽう、山にあたる部分が尖っていれば斑点のように見えるというような話であったが、波の高い部分にさらに凹凸をつけるようなパラメターが数式のどの部分に含まれているのかはよく分からなかった(←というか、数式が何を意味するのかということ自体、さっぱり分からない)。

 チューリングの仮説の要点は、細胞が起こす反応としてどういうものがあれば波を作れるかということにある。2012年にスペインで行われた、遺伝子を操作してマウスの足の指を増やすという実験では、指を形成するタンパク質などの波が広がるさいにチューリングの数式がかかわっている。指紋、血管の間隔、肺の中の組織の広がり方も同様という研究報告もある(←ようやくヒューマニエンスらしい話題となったが、「数字」とは全く関係なさそう)。なお、指紋の認証の際には一部が欠けていて読み取れないことがあるが、コンピュータが指紋形成の波のパターンを推測して補っているという。

 もちろん、生物の構造は何でもかんでも等間隔であればよいというわけではない。じっさい、5本の指は間隔も長さも違っている。人間の体毛は体の部位によって生える長さや太さが異なっている。こうした分化のプロセスもまた細胞、分子のレベルで調整されているらしい(←調整が失敗して暴走が始まるのが癌細胞)。そういえば、福岡伸一先生も同じようなことを言っておられたと記憶している。