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北九州から岡山に戻る途中で立ち寄った美東サービスエリア(上り線)。 このSAには「ラーメン花月嵐」があり、いくつかの名物ラーメンのなかから好きなものを選ぶことができる。また、中国道・山陽道の上り線の中では特に眺めがよく、日本的な田園風景や秋吉台方面のパノラマが広がっている。 |
【連載】ヒューマニエンス「“文字” ヒトを虜にした諸刃の剣」(3)文字認識の早とちり、Electroharmonix、ゲシタルト崩壊 昨日に続いて、10月25日に初回放送された、 NHK ニューマニエンス「“文字” ヒトを虜にした諸刃の剣」 についてのメモと感想。 放送では、続いて、「文字を読む脳は“早とちり”」という興味深い実験が紹介された。文字を扱うようになった人類には大転換が起こった。中村仁洋先生(国立障害者リハビリテーションセンタ)によれば、視覚と聴覚など違う感覚をまとめるのは脳にとってコストが大きい。大人が文字を読んでいる時には文字の形を認識する視覚野、文字の形を手がかりに音に変換する側頭頭頂移行部、話し言葉や思考にかかわる言語野、これらが同時に複雑に働いている。この複雑な作業を効率化するため、脳は一字一字順番に見ていなくて、ある程度自動的に、適当にざっと読む、という省エネ方法で単語を認識しているという。実際、「ヘリプコター」、「みさなん、こんちには!」、「メソポタアミ文明」、「マカロニグタラン」、「アンドメロダ銀河」、というように、一部の文字が入れ替わった日本語単語を1秒ずつ提示して読み上げてもらうという実験で、多くの実験協力者はその入れ替えに気づかず、「ヘリコプター」、「みなさん、こんにちは!」、「メソポタミア文明」、「マカロニグタラン」、「アンドロメダ銀河」というように日本語単語であると「早とちり」して読み上げた。 放送では、この「早とちり」について、「これだけたくさんの仕事を同時の処理する私たちの脳、これを効率化するため、あえて早とちりする、いわば自動化をしているのだ」と解説していた。文字を読むというのはかなりコストを要する仕事であり、速く読むためには、文字を正確に分析しているのではなく、予想したり置き換えたり解釈しながら読むという作業が行われているという。 放送では、脳で行われている「文字認識→音声化→対応する言葉の検出」という複雑な作業を効率化するために「早とちり」が生じると説明していたが、放送で示された「早とちり」実験に限っては「音声化」のプロセスは必ずしも関与していないように思われた。というのは、多義図形や種々の錯視実験で示されているように、「早とちり」は音声に対応していない図形に対しても同様に生じるからである。このほか「視力が悪い人ほどよく見えるというのも同様であり、本来は見えていない部分を脳が勝手に予測する仕組みが働くが、視力の悪い人のほうがその補完の力が大きくなるため視力の良い人よりも見えやすくなると解説されていた。 要するに、「早とちり」というのは文字認識特有の現象ではなく、曖昧な図形や絵でも同様に起こる。また、聞き間違いが示すように音声への早とちりでも同様に起こると考えるべきであろう【このことは中村先生からも説明された】。 放送では、さらに英語話者にはなんなく「GOOD MORNING!」と読めるが、日本語話者には読めないという文字列が紹介された。ネットで調べたところ、Electroharmonixという、カタカナ、ひらがな、漢字をモチーフにした擬似日本語表示書体であるという。こうした文字列を見た日本語話者は、脳がカタカナだと認識して処理しようとするたマッチしないため読めない。またそのことに妨害されて英単語として認識できなくなってしまう。 放送では続いて、文字を学習中の子どもでは「自動化」がまだ行われておらず、大人の脳と比較すると、自分の行動を監視したりエラーをチェックする前帯状回が活発になっているという画像が紹介された。中村先生によれば、自動化による「省エネ」は、脳の一般的な性質であり文字に限ったことではない、日常の様々な行動は自動化されており、これにより時間的余裕が生じて深い思考につながった。 放送ではもう1つ「野」という漢字を見つめていると奇妙な感覚が生じるという現象が紹介された。これは「ゲシタルト崩壊」と呼ばれており、リンク先にもあるように同じ漢字を長時間注視しているとその漢字の各部分がバラバラに見え、その漢字が何という文字であったかわからなくなる現象が含まれる。自動化を止めると、本来関係のないものに気づくと説明された。 「ゲシタルト崩壊」は漢字の文字認識では起こりがちであり、私自身も手書きで文字を書こうとした時に「これで正しく書けているだろうか?」感じることがある。もっともアルファベット1文字や英単語ではそのような現象は(少なくとも私では)起こらない。このあたりにも、漢字認識特有のメカニズムがあるように思うのだが、今回の放送ではこれ以上の説明は無かった。 次回に続く。 |