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半田山植物園の南東斜面にある寒紅梅。毎年、園内で最も早く開花する。1月13日には数輪が開花していたが、日本海を通過している低気圧の影響で1月14日朝の最低気温が10.2℃までしか下がらなかったことなどから、一気に開花が進むのではないかと思われる。
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【連載】ヒューマニエンス「“退化” もう1つの進化の道筋」(2)咀嚼筋、腓骨、フェロモン 昨日に続いて、2022年12月20日に初回放送されたNHKヒューマニエンス ●「“退化” もう1つの進化の道筋」 についての備忘録と感想。 昨日の最後の所に挙げたように、長掌筋以外の退化器官として以下のようなものがあった。
これらのうち、「立毛筋」は鳥肌を引き起こすことで知られており、少し前のチコちゃんに叱られる!でも取り上げられていた。 「耳介筋」は耳を動かす筋肉であり、解説者の坂井先生は実際、少しだけ動かすことができていた。私自身は全くできない。 放送では続いて、「あるものが退化したことで進化した」事例として、チンパンジーやゴリラと共通の遺伝子のなかからAとCが抜け、それによって硬い物を食べるための咀嚼筋の力が退化したという。ヒトは火を使うようになり食べ物を軟らかくして食べるようになったため強い咀嚼筋は必要ではなくなった。サルでは巨大な咀嚼筋が頭に張りついているが、この咀嚼筋が弱まることで頭の骨が大きくなる余地ができた。このおかげでヒトはチンパンジーのおよそ3倍の脳を得ることができた可能性がある。咀嚼筋の退化と脳の容積の増加がパラレルに進んできている(トレードオフ)という証拠もあるらしい。 咀嚼筋の退化によって顎も歯も貧弱になってきた。ヒトの骨の中で退化が始まった時期は、腓骨が2億年前、尾骨が3000万年前、13番目の肋骨と親知らすと犬歯が250万年前、眉弓が25万年前というようにズレがある。このうち、親知らずが生えにくくなったのは顎が小さくなって生える余地が無くなったことに起因している。出演者から歯が何度も生え替わらず、虫歯になるなどの現象は進化とは言えないという声も出されたが、坂井先生によれば、臼歯を使ってすり潰して食べるというのは哺乳類における進化であるという。 腓骨の退化は、最も古い2億年前から始まったとされているが、これは爬虫類と哺乳類の歩き方の違いに関係しているという。爬虫類はお腹を地面にこすりつけて歩いているが、哺乳類は手足を体の下に入れて体を持ち上げて歩く。そうすると後ろ足が体の下にきてかかとが生じる。これが腓骨の退化と、かかとの進化のトレードオフになっているという。かかとがあると、つま先立ちができ、つま先で地面を蹴ることで勢いよく歩くことができる。 体毛が退化していく中でなぜ眉毛が残ったのかについてもトークが交わされたが、一説としては額の汗が落ちないための「汗止め」の可能性がある。 続いて取り上げられたのは「フェロモン」に関する退化である。ヒト以外の動物ではフェロモンは相手を見極める大切な手がかりになっている。ネズミの場合、フェロモンを感じるためには、鋤鼻器(じょびき)、それを伝える神経、それを受け取る副嗅球(ふくきゅうきゅう)というセットが備わっているが、ヒトの場合は半数のヒトが鋤鼻器を失っており、その痕跡がある人でも鋤鼻器から脳に伸びている神経繊維が無いという。また脳組織の中にも副嗅球が存在しない。胎児の段階では鋤鼻器の近くに神経繊維が見られるが、生まれた時にはすでに消えているという。これらの知見からは、人はフェロモンを感じることができないはずなのだが、そのいっぽう、2013年に発表された論文では「男性は排卵期の女性の体臭を嗅ぐと男性ホルモンが増加する」と報告されている。このことは、若い女性が排卵期に何らかの物質を出していて、それを男性が受け止めている可能性を示唆するものである。もっともそれがニオイによるコミュニケーションなのか、フェロモン・コミュニケーションなのかは確たる証拠は得られていないようだ。 東原和成先生(東京大学)によれば、フェロモンは異性を引きつける役割以外にも、仲間を集める集合フェロモン、道しるべフェロモン、警報フェロモンなどがあるという。フェロモンなどを受容する遺伝子の数は、マウスでは378個もあるのに対してヒトは5個しかない。しかもその5個は、鋤鼻器ではなく、ニオイを感じる嗅上皮に関連しているという。東原先生はまた、鋤鼻器は社会コミュニケーションに関わる分子を感知する感覚器であるが、ヒトは目で見て言葉で会話してコミュニケーションできるようになったことで、必ずしもフェロモン・コミュニケーションが必要でなくなったと指摘された。フェロモンは画一的な行動を起こす性質があり、また代謝産物なので種を超えた共通の性質を持つ可能性がある。 古典的なフェロモンはヒトにはないが、心地よさとか安心するとか愛着心を感じるといった情動変化を引き起こすものは体臭の中に含まれていて広義のフェロモン・コミュニケーションがまだ残っている可能性がある。 ここからは私の感想・考察になるが、アロマテラピーで知られているように、さまざまな香りやニオイが心地安さをもたらすことは確かであろうと思う。また以前どこかで聞いた話だが、見知らぬ人に会ったイヌは、その人が自分に親近感をいだいているか、それとも恐怖や嫌悪感をいだいているのかを、その人が発するニオイで嗅ぎ分けているらしい。なので、犬好きの人が近寄ればシッポを振るし、逆に、噛みつかれるのが嫌だと怖がっている人が近寄るとイヌの方も警戒して吠えかかったりする。もちろんそれらの人たちのちょっとした仕草の違いも影響しているだろうが、イヌであればやはりニオイが最大の手がかりになっているように思われる。 次回に続く。 |