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【連載】ChatGPTの親近感とデタラメ度(12)行動分析学について尋ねる(2) 2月9日に続いて、ChatGPTの話題。引き続き、行動分析学に関するやりとりについて取り上げる。昨日同様、一部のテーマについてはかなり正確な回答を得ることができたいっぽう、全くデタラメな内容になることもあり、行動分析学関連授業のレポートや答案作成に不正利用した場合には、大幅減点で不合格になる可能性が高いように思われた。なお、以下の記事の中の「採点」の数値は、期末試験でこれらの問題が出題された場合に、私ならこのように採点するだろうという意味。もちろん、実際に採点する場合は、より詳細な採点基準を明示する必要がある。 まず、スキナー関連の質問をいくつか。 ●スキナーの言語行動理論はどのように批判されていますか? 【AI】スキナーの言語行動理論は、言語に関する研究界隈では広く受け入れられていますが、様々な批判もあります。うーむ。全くの的外れというわけでもないが、関係フレーム理論で指摘されているような問題点は全く触れられておらず、30点/100点といったところか。 次に、 ●スキナーは「自己」についてどのように考えていますか? 【AI】スキナーは、「自己」を、行動を引き起こす内在的な要因であると考えています。彼は、「自己」を、生物学的な需要や欲求、そして環境からの刺激に反応する、単純な反応システムとして捉えています。上記の“「自己」を、行動を引き起こす内在的な要因であると考えています”というのは全く的外れと言わざるを得ない。また言語行動と自己についての関係も曖昧で、10点/100点といったところかと思う。 続いて、行動主義関連のやりとり。 ●徹底的行動主義(radical behaviorism)と方法論的行動主義(methodological behaviorism)の違いについて教えてください。 【AI】徹底的行動主義 (radical behaviorism) は、B.F.スキナーが提唱した思想で、心的現象は存在しないと考え、すべての行動は外部の刺激によって引き起こされると考えています。一方、方法論的行動主義 (methodological behaviorism)は、心的現象は考慮しないでも研究することができると考えて、行動を観察し、記述し、解釈することに重点を置きます。 なんだか、分かったようで分からないような回答となった。私的事象の扱いや、機能的文脈主義に言及していないところなど、不十分な点が多い。30点/100点といったところ。 ●巨視的行動主義と微視的行動主義の違いについて教えてください。 【AI】「巨視的行動主義」と「微視的行動主義」は、社会学における行動主義理論の二つのアプローチです。 この回答は社会学の別の理論には当てはまるかもしれないが、行動分析学分野での捉え方としては全く的外れと言わざるを得ない。個人単位(個体レベル)での行動を説明する上での巨視的視点と微視的視点の違いに言及されておらず、10点/100点と、大幅減点。 続いて、Rachlinからの連想で、 ●Rachlinの目的論的行動主義とはどのようなものでしょうか? 【AI】Rachlinの目的論的行動主義は、行動主義の分支として、個人の行動がどのように目標に向かって統合されるかを研究するアプローチです。 これも、分かっているようでちっとも分かっていない回答。どうやらRachlinの著作や論文は1つも読んでいないようだ。20点/100点程度か。 もう1つ、 ●シドマンの「刺激等価性」研究は、行動分析学にどのような影響を及ぼしたでしょうか? シドマンの「刺激等価性」研究は、行動分析学に大きな影響を及ぼしました。回答の前半部分は正しいが「言語は意味を持つ」というのが何を意味するのか分からない。こちらの説明にあるような「任意の事物・刺激間に成立した、機能的な交換可能性」に言及していないという点で35点/100点といったところか。 次回に続く。 |