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半田山植物園には5月11日までアイスランドポピーが咲いており、まだまだ楽しめそうだと思っていたが、次の花(おそらくトレニア)への植え替えのため、5月12日にはすっかり抜き取られてしまった。 ポット苗を埋め込んで花期だけ展示するような花壇は私はあまり好まない。多年草や樹木の四季の移ろいが楽しめないため。 |
【連載】チコちゃんに叱られる!「桜の開花予想と、関東地方で開花が早い理由」「赤ちゃんを抱っこして歩くと泣き止む理由」 昨日に続いて、5月12日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
まず3.のサクラの開花日予想については「23.8になる魔法の計算式があるから」と説明された。桜が咲くメカニズムを研究している青野靖之さん(大阪公立大学)によれば、桜の花芽(つぼみ)は前年の7〜8月にすでに作られており、この時点でいつでも開花できる体勢を整えている。しかしこのまま成長してしまうと咲いた花が冬の寒さを乗り越えられなくなるため、花が咲くのを我慢するようになる。10月から12月には、成長を抑える『アブシシン酸』が葉っぱの中で作られる。それが花芽に届くと、花芽は咲くのをガマンして眠りにつく。12月下旬から2月の初め頃、寒さに晒された花芽は寒さに耐えられなくなって目を覚ます。これは『休眠打破』もしくは『休眠覚醒』と呼ばれている。そして目を覚ました花芽はその後の暖かさで成長する。休眠打破から開花するまでには、気温15℃の暖かさが23.8日分必要であり、このことから青野靖之さんは、開花日を予測する数式を考案した。素朴に考えると、休眠打破と推定される日のあと気温15℃以上になるたびに23.8の値を1つずつ減らしていっても同じことになるのではないかと思われるが、数式では気温の変動に即してもう少し精密な予測が可能になっているようである。 もっとも、この式では気温の予測まではできないため、気象庁から発表される気温予想が修正されるたびに開花日の予想のほうも変動する。じっさい、放送では3月28日に桜が開花する場所として、当初は福岡と予想されたがその後の気象庁からの気温予想が変わったことで、横浜、熊谷あたりに変更された。 ここからは私の感想・考察になるが、桜(ソメイヨシノ)の開花は、例年、関東地方が最も早く、2023年の場合は東京が3月14日、名古屋が3月17日、福岡が3月18日、鹿児島が3月25日となっている。しかし関東地方は他の地域よりも特別に寒いわけでも暖かいわけでもない。なぜ関東が一番早いのか、長年疑問に思っていた。さっそくBingに尋ねてみたところ、 東京の桜の開花が一番早い理由は、最高気温が20度を超える日が3月8日から11日までの4日間続いたことや南からの暖かい風が吹く日が多かったことなどがあげられます1。また、夜は気温が低い地方でも、日中の気温が高くなったことから、桜の開花が早まったという報告もあります2。という回答をいただいた。Bingの回答は、2023年の開花がなぜ早かったかという説明だけであって期待された内容ではなかったが、出典の(4)に説明があり、論点を要約させていただくと以下のようになる。
なお、私が観察した限りでは、岡山市内のソメイヨシノの開花は、半田山植物園のほうが後楽園よりも早い。半田山植物園のソメイヨシノの樹齢は私の年齢並みで、後楽園よりもかなり古い。さらに園内でいちばん古い『長寿桜』の開花などを見ても、やはり樹齢が要因の1つであることは間違いなさそう。 最後の4.の赤ちゃんをだっこして歩くと泣きやむ理由については、放送では「自分とパパ・ママの命を守るため」と説明された。大村菜美さん(広島大学)によれば、祖先の時代、私たちは危険と隣り合わせの生活を送っていた。例えば突然猛獣に襲われた時には赤ちゃんを抱っこして逃げるが、その際に赤ちゃんが泣いていると見つかりやすくなるし、また赤ちゃんが暴れると逃げにくくなる。生存確率を高める「逃げるときにおとなしくなる」という習性が現代の赤ちゃんにも本能的に残っている。 大村さんの研究によれば、赤ちゃんを抱っこして歩くと、静止している時に比べて、心拍数が低下してリラックス状態になる。なお、抱っこではなくベビーカーで移動している時にも、赤ちゃんは泣き止むことが多かった。このことから大事なのは「動き」や「運ばれている感覚」であり、運ばれる時に泣き止む反応は『輸送反応』と呼ばれる。輸送反応は哺乳類の赤ちゃんに備わっていて、ライオンやネコの赤ちゃんが首をくわえて運ばれるときにおとなしくなるのも同様であると説明された。 放送ではさらに、赤ちゃんをベッドに寝かせた瞬間に起きてしまう現象について、目を覚ましてしまう「スイッチ」は背中ではなくおなかにあること、おなかが離れると心拍数が早くなり起きてしまうと説明された。対策としては、眠り始めて8分ほどたって眠りが安定してから寝かせると起きづらいこと、また深く眠らせるには揺らさずじっと座って待つといいこと、などが説明された。 ここからは私の感想・考察になるが、まず、『輸送反応』自体については、精密な測定に基づいて確認されたものであり大きな発見であると思う。『輸送反射』と呼んだほうがよさそうな気もするが。 もっとも、リス、レッサーパンダ、キツネザル、ライオンが運ばれる時の姿勢と、人間の赤ちゃんが抱っこやおんぶされて運ばれる時の姿勢には違いがあり、リンク先にも補足的に説明されているように、小脳皮質、固有感覚、副交感神経の働きの度合いは種によって異なっているのではないかという気もする。 さらに、『輸送反応』が猛獣から逃れる際の生存確率を高めるからといって、進化の過程でそういう習性を持つ動物だけが淘汰されてきたのかどうかについては、まだまだ証拠が足りないように思われる。とはいえ「親子関係が一方的なものではなく、双方の協力によって成り立つ相互作用であることを実証するものです。」という意義づけは興味深い。親の行動とそれに対する赤ちゃんの反応(反射)の両方が協調的に働くように進化してきたということか。 あと、運ばれている時のほうがおとなしくなり、リラックスするというのであれば、水平方向への移動が可能になるような揺りかごが開発できるようにも思う。もちろん、ロボットには過度に頼らず、親子のスキンシップを大切にすることが第一ではあるが。 |