じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 半田山植物園のウマノスズクサにジャコウアゲハの芋虫がついていた。全部で10〜20匹で、過密状態になっている。昨年夏にウマノスズクサの茎が根元付近で切断されてしまい、夏以降はこの場所でジャコウアゲハが繁殖できない状況になっていたが、春以降、再び蔓を伸ばすことができた。但しこのままの数で芋虫が成長すると葉っぱが食い尽くされてしまう恐れがある。


2023年5月15日(月)



【連載】ヒューマニエンス『免疫』(3)B細胞、T細胞、胸腺

 5月12日に続いて、2023年1月10日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス』、

“免疫” 変異ウイルスを迎え撃て

のメモと感想。

 放送では続いて、「未知なる敵に対抗するリスク」という話題が取り上げられた。感染を抑えるはずの抗体が逆に感染を手助けしてしまう、ウイルス分子に抗体が結合する場所によっては感染性が高まってしまうという話。荒瀬尚さん(大阪大学)によれば、抗体はウイルスのスパイクタンパク質表面のいたるところに張りつくが、抗体の中には2つの突起の間にスッポリはまることがあり【感染増強抗体】、そうするとくっついていた特定の分子部分だけがその重みで沈み、突起の別の分子が飛び出して感染を助長してしまう。免疫側としてはどこを抑えたら感染を防げるのかは分からないので、未知なる敵に備えることにはリスクが伴う。

 放送では続いて、スタジオゲストの濱崎さんから抗体とB細胞との関係について説明があった。いま上に述べたように、抗体の中には変なくっつき方をするものがあるが、ウイルスに目印がたくさんつくこと自体はB細胞が食べやすくなるという利点をもたらすので無駄にはならない。今回の新型コロナワクチンに関して「感染防御はできなくても重症化リスクを抑えることができる」というのはこういうことを言うらしい。B細胞はウイルスに向けてたくさんの抗体を放出するが、その中でスパイクタンパク質にうまくはまった抗体からの情報がB細胞に伝達され、B細胞はより「はまりやすい」抗体を増産するようになる。
 抗体を生み出すB細胞は骨髄で作られる。そもそもB細胞という名前は、『骨髄(Bone marrow)』に由来するという。いっぽうT細胞は、『胸腺(Thymus)』で作られる。しかし胸腺は、新生児の時は相対的にいちばん大きく、小学校低学年の頃に最大となるが、成人になる頃には消滅してしまう。つまり成人は新たにT細胞を作ることができない。生き残っているT細胞の働きでどうにかこうにか獲得免疫を維持しているようである。濱崎洋子さんによれば、もともと私たちの寿命はもっと短かったので、その範囲では十分役割を果たしていた。それが医療の発達によって、生物として予想を超えて長生きしているため、今回のような新型コロナのようなものがポッと出てきた時に対抗できなくなる。であるなら成人にももういちど胸腺を埋め込めばいいという話になるが、濱崎洋子さんはiPS細胞を使ってじっさいにそのことに取り組んでおられるとのことであった。この研究がうまく行けば獲得免疫強化のほか、癌が抑えられる可能性がある。濱崎洋子さんは目標として5年先を想定しておられる。

 ここまでのところでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、荒瀬さんの研究の紹介の中で、『感染増強抗体』が突起の間にはまって「その重みで沈む」というところがイマイチ分からなかった。素朴に考えると、抗体のような微小の物体が液体の中で「重みで沈む」ということはありえないように思われる。何か別の力が働いているのではないだろうか。
 iPS細胞を使った胸腺再生の研究は大いに期待されるところだが、どうやら私の存命中には間に合いそうにもない。もっとも、癌や感染症にかからなくても、人間は90歳から120歳ぐらいまでの間には細胞分裂を停止し老衰で死んでしまう。また加齢により、身体能力ばかりでなく記憶力思考力も衰えてカオスの脳になっていく。なので、おおむね90歳くらいまでをメドに健康寿命を延ばすための医療には大いに期待されるが、それを超えた高齢者にはむしろよりよい終活をサポートするためのホーリスティックな医療が求められるように思う。

 次回に続く。