【連載】チコちゃんに叱られる!「なぜ梅雨はある? 気団ぶつかり説とチベット高原説」 5月26日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
さて、なぜ梅雨があるのか?については、小学校の理科の授業で、 ●性質の異なる寒冷なオホーツク気団と温暖な小笠原気団がぶつかり合い、ふたつの気団の間に梅雨前線が発生するため。 と習っており、これで説明が尽くされていると思っていた。もっともこの説明では、 ●なぜ、梅雨前線に比べて秋雨前線が発生する期間は短いのか? が分からない。小学校の時にその理由を担任の先生に質問したことがあるが先生もよく分からないとのことであった。その後、じあくまで自分の勝手な推測で、 ●オホーツク気団は5〜6月には流氷が溶けた冷たい海水によって勢力を強めるが、秋は海水温が相対的に高いため発達しにくい」ことで梅雨に比べれば長雨になりにくいから。 と考えて納得していた。なお、こちらの説明によれば、梅雨前線はオホーツク気団と小笠原気団のぶつかり合いによって発生するのに対して、秋雨前線は、オホーツク気団と揚子江気団のぶつかり合いが原因であるとされていた。 ちなみに、リンク先の説明によれば、 ●気団は高気圧の下に広がった空気のかたまりのこと であり、 この高気圧が特定の地域に長く滞在すると、上空の空気は下の地域からの影響を受けて、その地域の気候と同じような性質をもつようになります。と説明されていた。 さて、以上の説明とは異なり、放送では「チベット高原があるから」が正解であるとされた。 及川義教さん(気象庁大気海洋部気候情報課)によれば、梅雨が起こるメカニズムは以下の通り。
ということで、今回の放送では、梅雨の主役はチベット高原から運ばれた「暖かい空気」と「多量の水蒸気を含んだ風」であると説明された。気団のぶつかり合いについては上掲の6.で言及されているものの、オホーツク気団とか小笠原気団という名称は一度も出てこなかった。 しかし、今回の説明にはイマイチ納得できないところがある。
●日本の梅雨は、オホーツク気団と小笠原気団のぶつかり合いが原因で起こるとされていますが、チベット高原が無ければ梅雨は起こらなかったという説もあるそうです。夏になってチベット高原で暖気が発生することが梅雨の原因になるというのは本当でしょうか? と質問したところ、以下のような回答をいただいた。 梅雨は、北上してヒマラヤ山脈やチベット高原にジェット気流がぶつかることにより、ジェット気流が分流することでできるとされています1。チベット高原がなければ、梅雨は起こらなかったという説もあるそうです2。夏になってチベット高原で暖気が発生することが梅雨の原因になるというのは本当だそうです1。出典のなかのヒマラヤ山脈がなければ日本の梅雨もない!? という記事によれば、どうやらヒマラヤ山脈は、オホーツク海高気圧の発生と持続にかかわっているようである。確かに、「世界のほかの地域で同じように寒気と暖気がぶつかる場があっても、梅雨のような長雨にはなっていない。梅雨は東アジア独特の現象」であることは確かである。 最初に述べたように、私自身は、オホーツク海高気圧は流氷が溶けたばかりの冷たい海水温によって発生すると思っていたが、リンク先によれば、 この時期にオホーツク海高気圧が発生するのは、西から吹くジェット気流の流れの変化による。冬にヒマラヤ山脈の南側を通っていたジェット気流は、春に北側に移動すると、ヒマラヤ山脈とチベット高原にぶつかって二手に分かれる。北の流れは大気を冷やし、南の流れは大気を暖め、日本の東の海上で再び合流して高気圧をつくり出す。とのことであり、私が思いついた『流氷による低温説』は間違いであったようだ。 なおリンク先によれば「シミュレーションによると、もしもヒマラヤ山脈が今の半分の高さだったら、日本の雨量も半分程度になり、チベット高原の要素を外すと、梅雨は発生しなくなるという。」とのこと。確かに、単純な寒気と暖気がぶつかり合うだけではすぐに混ざって平均化されてしまう。性質の異なる気団として分離するためにはジェット気流の分流や蛇行が不可欠であるのかもしれない。 次回に続く。 |