じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 昨日の日記で、6月24日に放送された、

体感!グレートネイチャー 6億年!軌跡の絶景 〜初公開!サウジアラビア〜

で紹介されていた「火星のような砂漠」や「砂岩の大渓谷」がドバイからカサブランカに向かう機上から見えていた、と記した。また、同様の景色がアブダビからアテネに向かう途中にも眺めたことがあり、クレーターのようなものも写っていた、と記した。
 その「クレーターのようなもの」を精査したところ、撮影地点は画像中段の航路図が示す通りであり、今回の放送で紹介された「白黒の大地」の近くにある『ハイバール火山帯』上空を通過していたことが確認できた。放送で紹介された『キドゥル山』や『バイダ山』、『アビヤド山』は見えていないようだが、その近くの火口であったことは間違いないようだ。
 なお中段の画像では、飛行機はこのあとアンマンからイスラエル上空を通ってアテネに向かうように描かれているが、じっさいはスエズ運河の南からカイロ、アレキサンドリア上空を通ってアテネに到着した。


2023年6月27日(火)


【連載】サイエンスZERO「認知症の転換点」(4)日常生活での留意点、超音波治療、またまた「治験の残酷さ」

 昨日に続いて、6月4日に放送された、NHK「サイエンスZERO」、

●「認知症の転換点#2 アルツハイマー病は“脳血管障害”!?」 についての感想と考察。

 昨日のところでは、脳の血管壁にアミロイドβが蓄積することとアルツハイマー病の関係について取り上げた。じっさいアルツハイマー病患者の9割近くで、脳血管にアミロイドβが見られる。高齢になると血管壁が硬くなり、ポンプとしての機能が落ちる。そうするとアミロイドβの排出が妨げられ血管壁に溜まりやすくなる。その悪循環でさらに血管壁が硬くなっていく。
 血管が硬くなるのは加齢によるものであり避けられないようにも思われるが、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの要因があればそのリスクはさらに高まる。脳梗塞や脳出血ばかりでなく、アルツハイマー病のリスクにも注意を向ける必要がある。

 ということで、血管を硬くなるのを防ぐために私たちができることとしては、結局は日々健康的な生活(規則的な生活、栄養バランス、適度な運動、禁煙など)を続けるほかは無さそうである。

 では脳血管にアミロイドβが溜まってしまった場合はどうすればいいのか? これまでのところでは、効果が証明された治療法は無いが、昨年11月には低出力パルス波超音波(LIPUS)を使った治療法の研究が日本認知症学会学術集会で発表された。この方法はもともとは狭心症の治療のために心臓の細い血管を修復する方法として開発された。その応用としてアルツハイマー病の患者さんの脳にLIPUSをあてて脳血管の細胞を刺激します。すると血管を広げる作用のある「一酸化窒素・NO」などが出され、脳の細い血管の障害が修復されると考えられる。マウスの実験ではすでに効果が確認されており、さらに2019年、少数の早期アルツハイマー病の患者さんで超音波治療の有効性や安全性を確かめる探索的治験が行われた。超音波治療が行われるグループと機械を装着するものの超音波治療が行われないグループ(プラセボ)に無作為に分けて比較する試験で、22人が参加。患者さんは定期的に脳に超音波を当てる治療を、3か月おきに6クール、合計で約1年半、行われた。人数が少ないため有意な差が認められなかったが、今後は大規模な検証的治験で効果や安全性が検討されるという。なおこの治療に用いられる機械は厚生労働省の「先駆的医療機器」第1号に指定された。

 上にも述べたが、現状ではとにかくアミロイドβをしっかり排出するような生活習慣を守ることが大切。放送の終わりのところでは、
  • アミロイドβは睡眠の最中に脳から排出される。若い人でも、一晩徹夜すると脳内のアミロイドβの量が増える。若い頃から睡眠に気をつけること。
  • 運動:身体的運動のほか、脳を働かせるような運動(人とのコミュニケーション、サークル活動など)も必要。
という2点が強調された。




 ここからは私の感想・考察になるが、まず上記の超音波治療では、またまた治験の残酷さが浮き彫りになった。「機械を装着するものの超音波治療が行われないグループ(プラセボ)」に割り当てられたといっても、超音波治療を行わなければ担当医にはそのことが分かるし、患者自身もそのことに気づくはずだ。担当医はウソをついて、治療をやっているような仕草を見せるのだろうか。
 一般に『二重盲検法』は、結果を観察する研究者自身にもわからないようにする措置が求められる。新薬であればともかく、治療操作をプラセボで行うということは操作者にウソをつかせなければならず原理的に困難であるように思う。
 このほか、一連の治療操作を受けることはそれ自体、患者さんや家族に期待を抱かせ、治験に参加していない患者さんよりもポジティブな生活環境を構築した可能性もある。となると、プラセボ群でも認知機能の悪化がある程度遅くなった可能性があり、そのために有意差が認められなかった可能性があるように思われた。
 とにかく、人間を実験動物と同じように扱い、実験群と統制群(対照群)に分けて有意差を見つけるというような古くさい検証手段はやめて欲しいものだ。むしろ様々な症状の人にこうした治療法を実施し、その中で個体内で有意な改善が認められた人とそうでなかった人を比較し、どういう条件が揃えば改善につながっていたのかという共通要因を探り当てる方法のほうが医学的に意義があるように思う【←誰一人改善が認められなければ「効果無し」、改善が認められた人が少数であり共通点が無ければ「偶然」と見なせばよい。但し「偶然」というのは、確率論のにおける方便のようなものであり、量子論の世界を別とすれば、普通は、作用する要因があまりにも多かったり複雑に相互作用をしていたりするために、原因を特定できない場合に便宜的にそう扱われるようなものだ】。

 アミロイドβの排出に関しては、私自身は毎日のウォーキングのほか、Web日記執筆や詰め将棋を解くことである程度「体を動かす運動」と「頭を動かす運動」を実践しているが、対面での他者とのコミュニケーションは殆ど無い。