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津山線沿いの柵には、マルバルコウ、西洋朝顔(ソライロアサガオ、アメリカアサガオ)2種が繁茂している。これらの葉っぱを比較してみた。 |
【連載】ヒューマニエンス「“虫” 地球のもうひとつの主人公」(2)昆虫の多様性、昆虫はなぜ海中に進出できない? 昨日に続いて、6月19日に初回放送された、表記の番組についてのメモと感想。 放送では、マダニやコナジラミの仲間が他の動植物の遺伝子を奪う力を持っていることが虫の多様性をもたらした一因になっていること、さらに多様性の一番のポイントが「短命」と「多産」にあるということが指摘された。
前回も引用したように、人間と虫の適応戦略の違いは「ヒトは環境を変えて生きていくが、虫は環境に合わせて生きていく」という点にある(岩永さん)。とはいえ、虫の繁殖が地球環境を変えることもある。海で生まれた脊椎動物が地上に進出したのは4億年よりも後であったが、虫はそれより遙か昔から上陸を果たしていた。 当時の陸上はコケ類に限られていた。その時代から進出した昆虫たちは植物との相互作用によって進化の多様性が作られたと説明された。
虫が脊椎動物よりも早く陸上に進出できたのは骨格の違いにあるという。虫の外骨格は乾燥に強いというメリットがある。そのいっぽう、巨大化ができないというデメリットがあった。虫の多くは肺を持っておらず、酸素を取り入れて体内に配る循環システムがあまり効率的ではないという弱点があったためである。しかし小さい体であることは、限られた資源しかない、小さな生活環境を選び取ることができる。 放送ではさらに人類が文明を築くために不可欠だった虫としてミミズが紹介された。かのクレオパトラは、ミミズを「豊穣をもたらす“聖なるもの”」と称し、国外への持ち出しを禁止した。ミミズは枯葉などを食べて糞を出すが、この糞が窒素やリンなどの植物にとって不可欠の成分を含んでいる。しかも団粒状の塊になることで、その隙間に根が張りやすく、さらに水を保つことができるようになっている。ミミズによって我々の農耕文明は成立したのである。じっさいミミズの世界分布を見ると農耕地とぴったり重なっていることが分かる。エジプトは砂漠化しておりミミズはいなかったが、ナイル川の氾濫で上流から運ばれることで農耕を可能にしたと考えられる。またミミズの糞粒は二酸化炭素を閉じ込める働きをするので、地球温暖化防止にも役立つ可能性があると説明された。 ここからは私の感想・考察になるが、「虫のほうが脊椎動物よりも先に陸上に進出した」という話題については少々疑問に思う所があった。「虫」と言っても、少なくとも昆虫は海中では棲息していない。このことは以前、 ●【100年未解決】海に昆虫が1匹もいない理由【ゆっくり解説】【雑学】 というYouTubeの解説動画で視たことがあった。なので、「昆虫が海から陸上に進出した」のではなくて「昆虫以外の節足動物あるいは環形動物が陸上に進出した」と見なす必要がある。昆虫自体は「節足動物が陸上に進出したあとで、陸上で誕生した」ということになるだろう。なお、上記でも取り上げられたトビムシは、「節足動物門六脚亜門内顎綱 (Entognatha) を構成する3目のうち1目である。内顎綱は昆虫に近縁でより原始的なグループ」であるとされている。また、ウィキペディアによれば、 昆虫は多様な節足動物の中でも、特に陸上で進化したグループである。また、Bingに昆虫が海中で生息できない理由を尋ねたところ、 昆虫が海中で生息できない理由は、浸透圧や塩分のせいで昆虫が海水に適応できないため、水圧で気管が壊れるため、捕食圧の高さ(魚の存在?)などが挙げられます1?。という回答をいただいた。こちらの研究では、 昆虫が海にいない理由として、1)昆虫が海水に適応できない(浸透圧、塩分)、2)水圧で気管が壊れる、3)捕食圧の高さ(魚の存在?)など様々な仮説が立てられていましたが、外洋や海水中、深海などでも生存可能な種が報告されるにつれて、これらは否定的に論じられるようになっています(Cheng and Mishra, 2022)。昆虫生理学的に説得力ある仮説が提示されないまま、現時点で最も有力だとされる仮説は生態学の用語による概念的解釈です。それは、「節足動物が占有できる生態学的地位(ニッチ)が、甲殻類を含む動物に予め占有されており、昆虫が後からつけ入る隙間がない」という説です。しかしこれは「昆虫が海にいない理由はまだよく分からないが、このような説明は可能」といった域を超えておらず、昆虫が海にいない理由に関するスッキリした説明は未だ提示されていないという状況です。その中で、我々はこの生態学的説明を支持しつつ、環境要因やゲノム情報・分子進化学的知見を組み入れEco-Evo的に「昆虫が海にいない理由」を考察しています。という考察がなされている。 上掲の解説動画では、上記の「ニッチ説」のほか、 ●昆虫は陸上で出現した時に酸素製の外骨格を作ったために、海中の生物がもつカルシウム製の外骨格に太刀打ちできない。 というような説が紹介されていた。カニなどの甲殻類は海水中のカルシウムを取り込んでいるが、陸上で誕生した昆虫は、カルシウムの代わりに体内のMCO2という酵素と空気中の酸素を掛け合わせて化学反応させ外骨格を硬くしている。酸素製の外骨格は軽いので空を飛ぶことができるが、カルシウム製の外骨格のカニは飛ぶことができない。昆虫が海中に戻ってもすでに存在している甲殻類には太刀打ちできないが、川などの淡水ではタガメやゲンゴロウのように空を飛べる力を活用してザリガニなどの甲殻類に対抗することができると説明された。 ということで、節足動物が海中から陸上に進出した際には、外骨格形成・強化の仕組みにおいて「酸素製の外骨格」という大転換が必要であったようだ。将来研究が進めば、海中に生息する節足動物の中から昆虫を祖先とする生物が発見される可能性はあると思う。但しその新生物の外骨格はおそらくカルシウム製に戻っているため、いくらその生物を解剖学的に分析しても先祖が昆虫であったという証拠は見つからないかもしれない。遺伝子の配列の特徴を詳しく調べればやっとのことで「海中の節足動物→陸上の昆虫→海に戻った節足動物」という進化の足跡を辿ることができるだろう。 次回に続く。 |