じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 7月18日(火)は半田山植物園が休園日のため、代替コースとして旭川土手を歩いた。午前中ではあったが気温はすでに32℃を超えていた、なおこの日の最高気温は35.5℃となり、3日連続の猛暑日となった。
 写真は、新鶴見橋東詰めから眺める後楽園方面。この場所で旭川(下流方面)は後楽園を包むように二手に分かれ、後楽園の南端で再び合流する。

2023年7月19日(水)




【連載】ヒューマニエンス「“超・変異” 次の進化をたくらむDNA」(2)トランスポゾン続き、トウモロコシの粒の色

 昨日に続いて、4月10日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス

●「“超・変異” 次の進化をたくらむDNA

についてのメモと感想。

 放送では続いてスタジオゲストの鈴木郁夫さんから、2018年に『NOTCH2NL』を発見した経緯が語られた。鈴木さんは、ヒトとチンパンジーのゲノムを比較し、違う部分をリストアップ、その中に【ヒトのゲノムの中にはでは】脳の細胞の数を増やす遺伝子があるのではないかと考え、その見通しのもとに探した。「探したら見つかった」と言うのは簡単だが、じっさいには見つけるまでに7年ぐらいかかったという。鈴木さんの発見を支えた一番大きな背景は、ゲノム解析データが蓄積されたことにあったという。トランスポゾンが多い領域は2013年頃に公開され、そこを重点的に探索すると人間にしか無いような遺伝子が見つかってきた。その中にはNOTCH2NLのような、脳を大きくする働きを持つものもあった。
 スタジオゲストの三好知一郎さんによれば、NOTCH2NLが生まれる仕組みは以下のようなものであった。
  • DNAの配列の中にトランスポゾンが連なった部分があり、その中に『NOTCH2』【←NOTCH2NLではない】が組み込まれている。
  • 細胞分裂の際に、その配列はコピーされ、DNAが2倍になる。
  • トランスポゾンがいっぱいあると、DNA上では稀に、同じ配列同士で組み替えが起こる。そうすると2つに分裂したDNAが融合し、NOTCH2が2つできる。
  • 重複された遺伝子を2個持っておく必要が無いことから、2個目のNOTCH2には変異が起こりやすくなる。そのようにして2個目がNOTCH2NLになり可能性を試すチャレンジャーになる。
ということであったが、このあたりの仕組みは難解で理解困難であった。

 続いて紹介されたのは、トウモロコシの粒におけるトランスポゾンであった。トウモロコシの1個1個の粒には、粒を黄色くする遺伝子があるが、粒に色がつく前に粒の遺伝子にトランスポゾンが挿入されると粒を黄色くする遺伝子の働きが阻害されもとの白い粒のままになる。また、一度ジャンプして挿入されたトランスポゾンが再びジャンプして出て行ってしまうと塩基が書き換えられて別の色になることがある。この働きを使用して作られたのがカラフルなトウモロコシである。
 三好知一郎さんによれば、トウモロコシの粒の色ばかりでなく、個人の間でもトランスポゾンの入っている場所は異なっており、私たちの個性や能力の違いもトランスポゾンによってもたらされている可能性があるという。
 もともと、トランスポゾンは、アメリカの細胞遺伝学者のバーバラ・マクリントック(1902-1992)であった。しかしジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによってDNAの二重らせん構造が発見されたのは1953年になってからであり、それ以前にトランスポゾンを提唱したマクリントックの説は学会では長らく無視されており、彼女がノーベル賞を受賞したのは81歳(1983年)になった時であった。
 ヒトのゲノムのうち遺伝子として機能しているのは2%、イントロンが28%で、これらを合わせた30%が広い意味での遺伝子となっており、残りの70%はジャンクDNAと呼ばれている。そのジャンクDNAのうち45%はトランスポゾンであることが分かっているという。「ジャンクDNA」の領域の機能についてはまだよく分かっていないことから、「ジャンク」という呼称を変えようという主張もあるという。いずれにせよジャンクDNAが進化の原動力となっていることは間違いない。
 三好さんによれば、トランスポゾンはたいがい、あまり害が起こらないところにジャンプしているため、通常はあまり大きな変化にはつながらない。しかし稀に、大事な遺伝子にトランスポゾンがジャンプしてしまうことでその遺伝子の機能が壊れてしまい病気になることが知られている。トランスポゾンが遺伝子を壊して病気につながったというケースが現在までに100症例以上報告されているという。
 トランスポゾンの部位は個人によって異なっており、たくさんの人について調べないとその役割は分からない。NOTCH2やNOTCH2NLがある場所はトランスポゾンがたくさんあり周囲の配列が似ている。そのためNOTCH2NLのコピー数は増減を繰り返しており、実は50%の人はNOTCH2NLを8個、残りの50%の人は7個しかコピーを持っていない。
 脳の拡大に関係している遺伝子はNOTCH2NL以外にも数百ぐらいが見つかっているが(2018年)、それらを応用して脳のサイズを人為的に変化させようとするといろいろな病気が生じることがあり、やはり「程よい大きさ」が最適であるようだ。




 ここでいったん感想・考察を述べさせていただくが、トランスポゾンの仕組みについては私の知識では殆ど分からなかった。「コピー&ペースト」という比喩はよく分かるが、「ジャンプ」して「挿入される」とか、「再びジャンプして出て行く」という比喩は理解困難であった。ラーメン屋の行列に並んでいるところに、不届き者が割り込んできたり、逆に行列から離れるということは分かるが、ゲノムというのはそんなに簡単にちぎれたりくっついたりできるものなのだろうか。

 このほか、あくまで私の妄想であるが、食品添加物や放射性物質、さらには昨今の新型コロナワクチン接種などによって、トランスポゾンのジャンプが頻繁に起こるようなことが無いのか気になるところでもある。いつのまにかトランスポゾン由来の遺伝病が多発し、気づいた時には人類滅亡が避けられない事態に陥っていた、ということは絶対に無いと言えるのかどうか、気になるところである。

 次回に続く。