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7月11日の日記で津山線沿いの柵に繁茂する蔓性植物の写真を掲載したが、そのうちのマルバルコウがますます勢いを増している。 なお、7月11日の日記では国立環境研究所のサイトに基づき「マルバルコウの蔓は左巻き」と書いたが、蔓が伸びる方向、つまり下から上を見た場合、蔓は右巻きになっていることが分かった。Bingに尋ねたところ、 マルバルコウの蔓は、全て右巻きだそうです1。という回答をいただいた。 ついでにアサガオについて尋ねたところ、 アサガオのつるは、上から見ると左巻きで、下から見ると右巻きですが、植物学者は習慣的に左巻きと呼ぶそうです1。ただし、アサガオのつるは右巻きか左巻きかという時はネジと同じに扱うことがあるようです2。という回答をいただいた。 引用文献中の(3)によれば、 このアサガオの巻き方の方向について、生物学者の人々はどのように呼んでいるのでしょうか。日本植物生理学会の「植物Q&A」で確認してみました。こちらによると、かつてアサガオは「左巻き」と定義されていたそうです。という経緯があるようだ。 個人的には、植物の蔓は伸びる方向に向かってどちらを巻いているのかで定義すべきだと思う。「○巻きに伸びる」というように成長を示す概念であるからだ。 |
【連載】ヒューマニエンス「“超・変異” 次の進化をたくらむDNA」(1)トランスポゾン、NOTCH2NL 4月10日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス、 ●「“超・変異” 次の進化をたくらむDNA」 についてのメモと感想。このエピソードは、「動物の遺伝子を奪い取るマダニ」や「跳躍的進化」と密接に関連しており興味を持っていたが、いざWeb日記で取り上げるとなるとかなりの理解が求められるため尻込みしていた。ヒューマニエンスで取り上げられた各種エピソードの中でも、難解度ランキングTop5に含められるのではないかと思うほどであった。 放送の冒頭では、
スタジオゲストの三好知一郎さん(京都大学生命科学研究科)によれば、突然変異の研究は最近大きく進んでいる。その背景として、1990年アメリカで発足した『ヒトゲノムプロジェクト』(ヒトの全ゲノム30億塩基を解読するプロジェクト)が2000年代初頭に一段落し、2022年にとうとう端から端まですべて解読することに成功したことがあるという。 同じくスタジオゲストの鈴木郁夫さん(東京大学理学系研究科)によれば、たくさんの生き物のゲノムを比べていくことで、魚にしかない特徴や霊長類にしかない特徴が明らかにできると述べられた。 トークパートナーは、デザイナーの太刀川英輔さんであった。ウィキペディアによれば、2021年に太刀川さんは、『進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』という著書を刊行しておられる。 放送では続いて、変異とは何かについて簡単なおさらいがあった。DNAは細胞の核の中に入っている二重螺旋のヒモ状のものであり、アデニンとチミン、グアニンとシトシンそれぞれの塩基の配列によって成り立っている。突然変異とはその並びが変わってしまうものであり、例えば、乳糖を分解できない配列になっているDNAの一部、グアニンとシトシンの塩基をアデニンとチミンの塩基に置き換えるだけで乳糖を分解できる配列に変わる。 三好さんによれば、本来、細胞はDNAを忠実にコピーして別のシステムに受け渡すシステムを持っているが、たまにエラーを起こしてしまうことがある。もちろんそのエラーを直すシステムもあるが、徐々にDNA上には突然変異がどうしても起こってしまうと説明された。 続いていよいよ、「DNAの気ままなジャンプがヒトを生んだ?」という興味深い話題が取り上げられた。それは『NOTCH2NLという遺伝子であり、ヒトにはあるがチンパンジーやゴリラにはない。今回のスタジオゲストの鈴木郁夫さんがその命名者であった。この遺伝子のおかげで、ヒトの脳はおよそ1300ccとなり、チンパンジーのおよそ400ccを大きく上回るサイズになった。この遺伝子の獲得にはトランスポゾンが大きく関わっているという。トランスポゾンは「動くDNA」とも訳される。スタジオゲストの三好さんによれば、トランスポゾンはDNA配列の一部であり通常はゲノムの中に収まっているが、細胞核から飛び出して再び核に入り、その固まりを「コピー&ペースト」して配列の中に割り込むことがあるという。NOTCH2NLもそのようにして変異した遺伝子であると考えられている。まだ研究段階であるが、生殖細胞、受精卵、神経細胞の中ではトランスポゾンがかなり高頻度でジャンプしているらしい。なおトランスポゾンには「コピー&ペースト」以外にも「カット&ペースト」があるが、ヒトのゲノム上ジャンプしているのは「コピー&ペースト」型であると言われている。 従来、DNAは同じ個体の中では均一であると考えられてきたが、トランスポゾンが起こると隣とは違った細胞になることがある。じっさい脳の細胞の中のゲノムには少しずつ異なっている場合がある。さらには隣の細胞にもトランスポゾンが起こることがあるという。極端に言えば、トランスポゾンは、日々、からだのどこかで起こっているほど高頻度である可能性がある。 次回に続く。 |