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9月3日の朝の西空。東空よりも西空のほうが朝焼けがきれいだった。雲の上には月齢17.5の饅頭型の月が輝いていた。 |
【連載】ヒューマニエンス「“免疫” 曖昧な“わたし”をめぐるドラマ」(2)「免疫のスパルタ教室“胸腺”」 昨日に続いて、8月28日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス』、 ●「“免疫” 曖昧な“わたし”をめぐるドラマ」 についてのメモと感想。 冒頭の自然免疫と獲得免疫についての「おさらい」ではまず、
ここまでのところは一応理解していたつもりであったが、ウィキペディアには、 T細胞(ティーさいぼう、英: T cell, T lymphocyte)とは、リンパ球の一種で、骨髄で産生された前駆細胞が胸腺での選択を経て分化成熟したもの。となっていて、T細胞の元は骨髄で作られているようにも思われた。さらに「最近では胸腺を介さずに分化成熟する末梢性T細胞が存在することも知られるようになった。」という記述もある。 あと、T細胞にもそれなりの寿命があるのではないかと思い、Bingに尋ねてみたところ、 獲得免疫で活躍するT細胞の寿命は、種類や状態によって異なりますが、一般には数週間から数年と考えられています1。しかし、加齢によってT細胞の機能は低下し、感染症や炎症に対する抵抗力が弱まります2。一方で、110歳以上の超長寿者は特殊なキラーT細胞を多く持っており、これが長寿の秘訣の一つと考えられています3。という回答をいただいた。私が以前から疑問に思っているのは、Bingの回答にあるようにもしT細胞の寿命が長くても数年であるとするならば、胸腺が退縮した成人ではすべてのT細胞がすでに寿命を終えているはず。このあたりのからくりがよく分からない。 番組では続いて、「免疫のスパルタ教室“胸腺”」という学園ドラマ仕立ての解説があった。心臓のすぐ上にある胸腺は、いわば、T細胞をスパルタ教育する教室のような場であるという。T細胞の候補生はここで、自分の体の中で作られるすべてのタンパク質を1つ1つ覚えなければならない。候補生たちは胸腺の中にある特別の細胞の中を通り、保存されている1万8000種類の遺伝子から作り出されるタンパク質をすべて学ぶ。候補生は次々と脱落し、最終的に残るのは全体のわずか1割に過ぎないという。そうして生き残ったT細胞は3つのグループに分かれる。
学園ドラマでは、学園の中に異物(不良の転校生)が入ってきた時に、その存在が樹状細胞(風紀委員)によって発見され、通報を受けて全遺伝子情報と照合され、キラーTはパーフォリン(細胞を溶解するタンパク質)で異物を攻撃・排除する、というたとえ話が演じられた。 以上のドラマについてMア洋子さんから補足説明があり、
学園ドラマでは続いて『Tレグ』の役目が紹介された。上述と同様に、学園内に異物(不良生徒)が入ってきたとする。但し今度は、外部からの転校生ではなくて、もともとその学校に在学していた生徒が夏休み期間中に突然ギャル化してしまった場合であった。このケースではTレグによって攻撃が抑制される。 堀昌平さん(東京大学)によれば、Tレグは、自己を見張っていて、いっけん異物に見えているような自己に対して免疫応答を起こさないよう、樹状細胞に伝える役割を担っている。Tレグの役割はまさに自己を見ることに特化しているのであった。学園ドラマはあくまで比喩であるが、こうした「自己の変異」はストレスを受けたり紫外線を浴びることでじっさいに起こっているという。T細胞の比率は、ヘルパーTとキラーTで9割を占めていて(ヘルパーTのほうが若干多い)、Tレグは1割程度となっている。Tレグは普通のT細胞と同様に血液の中をぐるぐる回っているほか、大腸、皮膚、脂肪組織に定着するタイプがあるという。 ここまでのところで、いったん感想・考察を述べさせていただくが、「免疫のスパルタ教室“胸腺”」の喩え話については、ウィキペディアに詳しく解説されており、じっさいにはもう少し複雑な選別システムになっているようだ。自己タンパクと相互作用する細胞は、 胸腺内の樹状細胞やマクロファージなどによって負の選択を受ける。これらの細胞によって提示された自己タンパクと相互作用した胸腺細胞もアポトーシスにより死滅する。これは自己反応性のT細胞を除去するためと考えられている。胸腺内で発現しない自己タンパクと相互作用するT細胞はこの機構で選別することはできないため、末梢系に入ったのちアネルギーにより不応答化される。とのことである。 このほかウィキペディアにはγδT細胞(ガンマデルタティーさいぼう)という上掲とは異なるT細胞があることも解説されていた。また「活性化細胞傷害性T細胞は効果的に感染細胞や腫瘍細胞を排除することができる。この事実は癌や感染症の免疫療法に応用出来るかもしれない。」という記述もあった。 次回に続く。 |