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【連載】チコちゃんに叱られる! 「泡で汚れた落ちる理由」「“私はワクワクしている”と叫びながら変な踊りを踊れば不安は解消されるか?」 9月15日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。今回は以下の4つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.と2.について考察する。
まず1.の泡の話題であるが、放送では「泡がぎゅうぎゅうなところから逃げたいから。」が正解であると説明された。放送では子ども向けに擬人化された表現で説明されていたが、要するに、泡は当初はぎゅうぎゅうに詰まったいびつな形をしており、汚れた液体に接するとその液体を吸収しながら丸い形に変わろうとする。これによって汚れが泡の隙間に入り込むため汚れが落ちるというような話であった。なおその際、小さい泡のほうが隙間の数が多いため、より効果的に汚れを吸収できるということであった。 ここからは私の感想・考察になるが、今回説明された内容は、衣服からしみ出した汚れの液体がなぜ洗い落とせるのかということに関連した説明であって、なぜ衣服そのものから汚れ成分が分離するのかについては言及されていなかったように思われた。 念のためウィキペディアを参照したところ、 ●【石鹸とは】界面活性剤であり、油や油を含む汚れを水に分散させる作用により洗浄能力を発揮する。 と説明されており、いくら泡だらけにしても、界面活性剤の働きが無ければ、汚れを落とすことはできないように思われた。なお、泡は、洗剤として利用されるほか、消化器、発泡スチロール、鮮度保全などで利用されている。また逆に泡を抑制する技術もあるという。 次の2.の「不安ってなに?」については、TVの番組表を見た時から、どんな解説者が登場されるのかに興味を持っていた。まっとうな心理学の研究者が登場するのか、それとも「進化生物学」や「脳科学」を標榜する胡散臭い説明になるのだろうか? でもってじっさいに登場されたのは、心理学や脳科学に詳しい堀田秀吾さん(明治大学)であった。明治大学の教授と聞くと、いぜんチコちゃんの番組で といった、私にとっては全く受け入れがたいトンデモ進化心理学と関係がありそうな印象を抱いており身構えてしまったが、今回登場されたのは、全くの別人であり、過去日記を検索した限りでは、2010年11月11日の日記で裁判員裁判に関する御著書に言及させていただいたことがあったようである。なおウィキペディアでは、 堀田 秀吾(ほった しゅうご、1968年6月15日 - )は、日本の言語学者(法言語学、心理言語学、コミュニケーション論、理論言語学)。明治大学教授。と紹介されていた。 さて、その堀田秀吾さんは、不安とは「人類誕生から備わっている生き抜くための武器」であると説明された。人類は大昔から不安を感じ、不安に対して準備し対処することで有利に生き残ってきた。今は石器時代ではないが、私たちの心や体はとの時からあまり変わっていない。狩りをやめたのはほんの1万年前であり、石器時代のころの本能が残っている。 不安は現在でもピンチの際に行動を起こす準備に役立っている。そのおかげで集中力が高まり危険に対する準備ができる。不安とうまく付き合うことで武器になる、と説明された。 上掲の「不安観」はACTの入門書[※]でも言及されている。 [※]ハリス著 岩下慶一訳(2015).『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない―マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』筑摩書房
以上に引用したように「不安」は、言語的に危険を予期しそれに備えるという点で適応的価値があると言える。このことから、我々は、幸福についての4つの神話:
堀田秀吾さんはもともと言語学や心理言語学がご専門ということなので、あらゆる苦悩の原因がことばにあるという点は十分に理解されてていると拝察される。但し、今回の放送で紹介されたようなやり方で本当に不安が取り除けるのかどうかについては、もう少し臨床的な証拠を重ねてもらいたいところがある【放送では、ハーバード大学での実験が1つ紹介されただけ】。 なお、この話題の終わりの部分では、さすがに放送内容だけではトンデモ批判が浴びせられる恐れがあると判断されたのか、 ●“不安とはなにか”については現在も研究が進められているため諸説あります。 という但し書きのテロップがつけられていた。 なお、ちょうど昨日、東洋経済に ●不安にとらわれず"しなやかに"生きるススメ 「心の言葉は、ときに有害」だからどうする? という記事が掲載された。放送で推奨された「私はワクワクしている」と叫びながらヘンテコな踊りをおどるよりは、こちらの記事のほうが、体系的な理論に基づき、多くのエビデンスが得られているという点で大いに納得できる。いっそのこと武藤さんがチコちゃんの番組に出ればよかった。 次回に続く。 |