じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 このところの高温傾向と長雨のため、津山線の線路沿いでホトケノザが大繁殖している。除草剤が定期的に散布される夏期と異なり、秋以降は雑草が少ないため散布が休止されており、そのスキを狙って急速に成長したものと思われる。


2024年2月22日(木)




【連載】ヒューマニエンス「“死の迎え方” ヒトの穏やかな死とは」 (6)緩和医療/VRや夢で楽しむ最期

 昨日に続いて、2月13日に再放送された、NHK『ヒューマニエンス』、

「“死の迎え方” ヒトの穏やかな死とは」

についてのメモと感想。本日で最終回。

 放送では、死と向き合うがん患者の外傷後成長をふまえて、「死」が人類の歴史にも影響を与えた可能性についてコメントが交わされた。
  • 【いとうせいこうさん】宗教も哲学も「死」があってこそ生まれた。社会自体も死を乗り越えて自分たちの考えたことを次の世代に伝えるためのエネルギー。
  • 【小林武彦さん】「死」は、「みんな死ぬ」、「命は大切にしなければならない」、「同胞意識」といった人類共通の価値観を形成する。
  • 【清水研さん】死をもコントロールしたいと思う方は太古からいて不老不死の薬を求めた秦の始皇帝もそうだったが、多くの方は死には逆らえない。そのことが「日々を一生懸命生きよう」とか「みんな死に向かって生きるのだから助け合って生きよう」とか、そういう文化の深まりにつながっているのではないか。
  • 【藤井彩子アナ】「死」は数少ないみんなが共有できる概念。
  • 【いとうせいこうさん】「死」は共通の話題であり、絶対的に一回性のものだから、踏み込んだ、自分の体重のかかった議論ができる。

 続いてスタジオゲストが、在宅緩和ケア医の萬田緑平さんに交代した。萬田さんが考える「新しい死の迎え方」とは「死ぬまで“目一杯生きる”」ということであった。
 萬田さんが担当した患者さんの中には、
  • フェントス(医療用麻薬)50ml貼ってゴルフをした男性。1カ月後に亡くなる。
  • 3泊4日の夫婦旅行から戻った男性。その撮影から4日後に亡くなる。
  • 家族に囲まれて楽しい時を過ごした男性。数時間後に亡くなる。
という方がおられた。こうした人たちを支えるのが緩和医療になる。
 多くの患者に共通しているのは痛みであるが、萬田さんが処方しているのは各種の医療用麻薬であった。医療用麻薬の効果をもたらしているのが『オピオイド』。オピオイドが脳に取り込まれると、脳幹と脊髄をつなぐ特定の神経回路が活性化され、がん患部からの一次ニューロンと脊髄との間の痛み信号伝達部分にセロトニンやノルアドレナリンが分泌され、痛み信号の伝達を抑制してくれる。
 萬田さんは、そうした医療用麻薬を調整するほか、患者の心を明るくするための声かけなども行っている。寝ている時間が長くなると「棺おけに入る練習中ですね。そんなんじゃ死んじゃうよ。いいの? ちゃんと動きましょう」という冗談まじりの支援がウケたりしているという。また、死ぬのを待つんじゃなくて、例えば「孫に死ぬ姿を見せなきゃいけないんだよ」「ちゃんと格好つけなきゃいけないんだよ」といった話で心を明るくすることもあるという。
 萬田さんは、緩和医療について以下のようにも語っておられた。
やっぱり死んだときに「ああいい人生だった」と本人が言って、それを支えられたって家族は満足して、晴れ晴れしく亡くなっていく。人生成功で終わる、それを手伝うと医療にとって死は失敗だけど、俺にとっては死んだときに成功で「ありがとうございました」と言われるいい仕事。

 ちなみに、萬田さんは外科医を17年間つとめ、そのあと今の仕事を15年やっておられるという。外科医はたくさんいるが、家に居たい、治療したくないという患者さんを支える医者が殆どいなかったことから転身されたという。
 あと医療用麻薬、決して「気持ちいい」というような快感をもたらすものではない。多くの人は「医療用麻薬が効かなくなる」「おかしくなる」「依存症になる」「最後に痛みがとれない」などと誤解している。投与量を増やす時に副作用が出るのでゆっくり増やしていく。痛みは体を弱くする一番の要因なので、モルヒネを使わずに我慢をしているとどんどん体が弱っていく。また家族は、患者を励まそうと「頑張れ」を多発するのではなく、「ありがとう。大好きだよ」と感謝することが「いい人生だった」に繋がる。




 ここからは私の感想・考察になるが、私自身も、もし末期がんのような状態になった時は、抗がん剤の副作用に苦しむよりは早期に緩和医療を選びたいとは思っている。もっとも、「いい人生だった」と感じるためには、それ以前に自分自身の身辺整理をちゃんと果たし、やり残したことが無い状態を作る必要がある。いくら「ありがとう」とか声をかけられても、未練があるうちは死にきれない。
 緩和医療でいくら痛みが取れたとしても、一日中眠ってばかりでは生き続ける意味が無い。今の時代であれば、もっとVRを活用した多様な介護を受けられるのではないかと思われる。例えば病床に巨大なモニター画面をつけて、自分の行ってみたい世界(仮想世界を含む)を投映したり、大音響で好きな音楽を楽しめるような設備があればありがたい。また、仮に一日中寝てばかりになっても、日々、ワクワクするようなリアルな夢を見られるのであればVRの装置は必要ない。これはおそらく、脳のある部位に電気的な刺激を送れば実現できるはずだ。