じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 津山線の線路沿いの「お花畑」。ホトケノザに加えて、ノボロギクやハルノノゲシも目立つようになった。それなりに春らしい風景でもあるが、あまり有難くない雑草でもある。



2024年2月28日(水)




【連載】100分de名著 #136『偶然性・アイロニー・連帯』(6)第1回 近代哲学を葬り去った男(1)トランプ大統領誕生についての予言

 昨日に続いて、2024年2月5日からNHK-Eテレで放送が開始された、

100分de名著 #136『偶然性・アイロニー・連帯』

についての感想・考察。本日から放送内容に入る。なお、放送自体は2月26日(初回放送)をもってすでに終了している。

 さて、放送の第1回目ではまず、2016年11月にドナルド・トランプが大統領選挙で勝利したこと、それを20年前に予言したのがローティであると紹介された。ローティの予想は、

中間層がどんどん崩壊していき、国民の一体感は失われるだろう。その時点において何かが決壊する。【中略】一連の制度が破綻したと判断し、投票すべき「強い男」を探し始めることを決断するだろう。アメリカ 未完のプロジェクト(Achieving Our Country: Leftist Thought in Twentieth-Century America, 1998)

というものであったという。

 ここでいきなり脇道に逸れるが、念のため、ウィキペディア(英文)を参照したところ、こちらに、
Several writers have cited Rorty's prediction of the rise of an authoritarian strongman who gains popularity among blue-collar workers, as prophetic of Donald Trump's rise to political power.
Wolf Lepenies noted Rorty's foresight in a German-language publication as it happened.
The passage that went viral is as follows:
[M]embers of labor unions, and unorganized unskilled workers, will sooner or later realize that their government is not even trying to prevent wages from sinking or to prevent jobs from being exported. Around the same time, they will realize that suburban white-collar workers―themselves desperately afraid of being downsized―are not going to let themselves be taxed to provide social benefits for anyone else.
At that point, something will crack. The nonsuburban electorate will decide that the system has failed and start looking for a strongman to vote for ― someone willing to assure them that, once he is elected, the smug bureaucrats, tricky lawyers, overpaid bond salesmen, and postmodernist professors will no longer be calling the shots. A scenario like that of Sinclair Lewis' novel It Can't Happen Here may then be played out. For once such a strongman takes office, nobody can predict what will happen. In 1932, most of the predictions made about what would happen if Hindenburg named Hitler chancellor were wildly overoptimistic.
という記述があった。

 もっとも、ローティに対するこのような評価は、SNSで注目を集めたというだけであり、予言が実証された言えるほどのものであったかは疑わしいように思う。というのは、
  • 2016年11月のトランプの勝利は僅差によるものであり、選挙制度がより公正であればクリントンが勝っていた可能性があった。
  • そのトランプは2020年にはバイデンに負けている。
  • 2024年にトランプは再び勝利する可能性が高いと言われているが、仮に勝ったとしても僅差と思われる。高齢のバイデンに代わる魅力的な若手が対立候補になれば勝てないかもしれない。
  • トランプ大統領の誕生はバック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989年)でも予言されており、こちらのほうがより説得力がある。
 さらにリンク先によれば、ローティは、他にも以下のような予想をしているという。
One thing that is very likely to happen is that the gains made in the past 40 years by black and brown Americans, and by homosexuals, will be wiped out. Jocular contempt for women will come back into fashion. The words 'nigger' and 'kike' will once again be heard in the workplace. All the sadism which the academic left has tried to make unacceptable to its students will come flooding back. All the resentment which badly educated Americans feel about having their manners dictated to them by college graduates will find an outlet.
 最近のアメリカ事情はよく分からないので、人種差別などに関する上掲の予想がどの程度的中しているのかは分からない。トランプはしばしば「失言」をするが、その失言が熱狂的ファンの支持をさらに強めるというのであれば、少なくとも一部のアメリカ人の本音を反映したものであるかもしれない。但し、これまでのところ、トランプの失言を自分自身の本音を言語化したものであると受け止めている人たちはアメリカ人の4割以下にとどまっているのではないかという気もする。

 次回に続く。