じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 半田山植物園のハーブ園で見かけたヒメウラナミジャノメ。なお、園内ではこれまでにも似たような紋様の蝶を見かけているが、小さな紋の有無などで微妙な違いがあり、別種の可能性もないとはいえない。



2024年4月28日(日)



【連載】チコちゃんに叱られる! 「新幹線にシートベルトが無い理由」と、疑問解決の筋道談義

 4月26日(日)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。

 この日は、
  1. 新幹線でシートベルトをしなくていいのはなぜ?
  2. 他人の目が気になっちゃうのはなぜ?
  3. 将棋の対局中に食べたモノがニュースになるのはなぜ?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。この1.の話題は、6歳の視聴者から寄せられた、

なんで? ひこうきにしいとべるとあるのにしんかんせんにわないの?

という質問に基づいて構成されていた。放送では、「新幹線は(自動車のような)急ブレーキをかけないから。」が正解であると説明された。
 近藤圭一郎さん(早稲田大学)&ナレーションによる解説は以下の通り。
  1. 新幹線はモーターを電気で回して車輪を動かしている。
  2. この車輪を両側から挟み、物理的な摩擦によってスピードを落とすのがるディスクブレーキ。
  3. さらにもう1つ、電気を使ったブレーキがある。簡単に説明すると前に進む力を10としたとき電気のブレーキをかけると10のうち3を使って発電を始める。その結果進む力が7になって速度が落ちる。このとき発電した電気はほかの新幹線の走行に有効活用される。
  4. 新幹線は時速約300kmなので急ブレーキをかけても停止するまで約4kmの距離が必要なため急ブレーキをかけなくていいように徹底して安全に配慮してつくられている。
    • 1つは、鉄道史上最大の発明とも言われるATC(自動列車制御装置)というシステム。新幹線の中にある装置が前を走る新幹線の位置を把握しており、前の列車にぶつからないように制限速度をたえず計算している。制限速度を上回った場合には自動的にブレーキがかかるため前の新幹線が急に停止しても列車どうしがぶつかることはない。ATCは世界の高速鉄道で初めて東海道新幹線が実用化した、飛行機やバスにはない画期的なシステム。
    • 2つめは新幹線専用の線路でぶつかる危険のあるものが入らないこと。海外の新幹線にあたる高速鉄道では一般の電車と同じ線路を使用し踏切から侵入した人や車との事故が起こっている。いっぽう日本の新幹線は高架や柵で囲まれた新幹線専用の線路なので踏切はなく人や車は入れない。じじつ新幹線は開業以来衝突事故ゼロという世界でも類を見ない高い安全性を誇っている。
    • 3つめは人の力。放送では、東京ドーム8個分の広さを持つ大井車両基地が紹介された。このうち検修庫では車両の点検・整備をする。放送ではボルトに緩みがないことを音で確認する『打音検査』が実演された。またこの基地は『ドクターイエロー』の待機場所になっている。放送ではドクターイエロー1号車が特別公開された。ドクターイエローは新幹線と同じ速度で走りながら、電線のすり減り具合や、電気の流れ、さらに今回取り上げられたATCの動作などをチェックしている。
  5. 放送では、「ホームにずっと居た場合にドクターイエローを見ることができる確率は?」というクイズがが出された。三択の内訳は「初恋の人と結婚する確率 1.0%【ライフネット調べ】」、「岡村隆史のこの番組での正解率 約4%【番組調べ】」、「自動販売機の下にお金が落ちている確率 約10%【番組調べ】」であったが、正解は約10%であるとされた。
  6. 新幹線でも地震などの緊急時には速やかに停止するが、急ブレーキではなく乗客の安全に配慮したブレーキになっているる
  7. 飛行機は離着陸するときや上空で気流が乱れたときに機体が揺れる可能性があるのでシートベルトをしなければいけない。
  8. 路線バスでは速いスピードでの走行が想定されていないことや利便性が損なわれることからシートベルトの着用は義務づけられていない。
 ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、まず、上記の5.「ホームにずっと居た場合にドクターイエローを見ることができる確率」をどうやって計算したのか、大いに疑問であった。非公式の運行情報によれば、2024年4月には、4往復計8回、のぞみ検測やこだま検測が目撃できるはずなので、任意の日に朝から晩までホームに立っていた時にドクターイエローが見られる確率は、当該ホームでは4/30、反対車線のホームを含めれば8/30となるはずだ。約10%が正解であるとされた根拠はイマイチ分からなかった。なおリンク先の運行予想日と予想時刻表を知った上で、予想日の予想時間帯にホームに立っていれば、ほぼ100%、出会うことができるはずだ(稀に突然変更になることもあるので100%確実とは言いがたいが)。

 さて本題に戻るが、今回の放送ではもっぱら新幹線の念入りな安全対策が紹介されていた。しかし、6歳の視聴者さんのもともとの疑問は、

飛行機にシートベルトがあるのに、新幹線には無いのはなぜ?

ということであった。上掲の説明を拡大解釈すると、

飛行機は危ないことがあるのでシートベルトが必要。新幹線は安全なので不要。

という説明をしたことと何ら変わりない。もう少し、シートベルトはどういう場合に役に立つのか、またどういう乗り物で着用が義務づけられているのか、という一般論から始めて、その1つとして新幹線にシートベルトが無い理由を説明する必要があるように思う。その際には街中の路線バス、電車、タクシーなども含めて理解を深めていく必要がある。

 こうした考察を進めるにあたっては、原則がなんであり、例外としてどういうケースがあるのか、議論の出発点を定める必要がある。今回の話題に関して言えば、以下の2つの原則が考えられる。
  1. シートベルト着用は一部の例外(妊婦さん、体型の合わない人など)を除いて、原則としてすべての乗り物で義務づけるべきである。但し、シートベルトをつけなくても安全であることが十分に確認されている乗り物については、乗り降りの利便性を配慮して除外することができる。
  2. 本来、乗り物にはシートベルトは不要だが、事故などで乗客が怪我をする恐れが大きい場合に限っては着用を義務づけるべきである。
 乗り物の発達の歴史から言えば、本来は2.が原則であったと思われるが、その後のさまざまな検証により、現在では、「シートベルト着用が原則、不着用は例外」と考えられるようになってきた。なので今回取り上げられた疑問は、

多くの乗り物ではシートベルト着用が義務づけられているが、新幹線では例外的に必要ないとされている。それはどのような理由によるものか?

ということであり、この観点から言えば、

新幹線の座席でもシートベルトがあるに越したことは無いが、新幹線は十分な安全対策がとられており急ブレーキや衝突で急激な加速度が加わる恐れはきわめて小さい。よってコスト面と、乗り降りの利便性を天秤にかけて、シートベルトを設置していない。

と説明するべきであろう。

 なお、新幹線に限らず、在来線の電車や路線バスなどにはシートベルトが無いが、観光バスでは高速道路を通らず街中を巡る場合であってもシートベルト着用が推奨されているようである。また海外では国によっては、観光バス(ツアーの専用バスを含む)でシートベルトをつけていない乗客がいると罰金をとられることがあるようだ。

 次回に続く。