じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 タラヨウの花を撮影中、交尾中にハナムグリを見つけた。こちらによれば、害虫のコガネムシとは異なり、ハナムグリやカナブンが葉や根を食べることはなく、幼虫は腐葉土から栄養を得て育つことから、腐葉土の分解を促進し土壌を豊かにするため益虫といえる、とのこと。
 なお、ハナムグリの幼虫が背面歩行している動画がこちらにあり。【←イモムシが嫌いな方はクリックしないでください。】


2024年5月3日(金)



【連載】チコちゃんに叱られる! 「将棋めしがニュースになる理由」

 少し間が空いてしまったが、4月30日に続いて、4月26日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 新幹線でシートベルトをしなくていいのはなぜ?
  2. 他人の目が気になっちゃうのはなぜ?
  3. 将棋の対局中に食べたモノがニュースになるのはなぜ?
という3つの話題のうち最後の3.について考察する。

 放送では、将棋の対局中に食べたモノがニュースになるのは「そこに勝負の空気があるから」であると説明された。
 将棋めし研究家の小笠原輝さん&ナレーションによる解説は以下の通り。
  1. 将棋の対局中の食事がニュースになったのは、勝負の空気感を伝えるため。
  2. 現在プロの将棋界には8つのタイトル戦がありそれぞれ対局のルールや条件が違うが、持ち時間は短いもので1人4時間(叡王戦、棋王戦、棋聖戦)、一番長いもので1人9時間(名人戦)となっている。
  3. 上記の3つと、持ち時間が各5時間の王座戦を合わせた4タイトル戦は1日制、持ち時間が各8時間の竜王戦、王位戦、王将戦と、各9時間の名人戦は2日制となっている。
  4. それだけ長い戦いになると途中で昼食休憩や夕食休憩が挟まれる。また頭を使うとかなりのエネルギーが消費されるので対局中におやつが出されることがある。
  5. 対局中の食事からはいろんな情報が読み取れるという。このことを最初に発見したのは倉島竹二郎【ペンネーム『棋狂子(ききょうし)』】であった。
  6. 倉島竹二郎はもともと駆け出しの小説家だったが友人からの依頼で1932年から『國民新聞』(現在の『東京新聞』で将棋の観戦記を書くことになった。
  7. 棋士たちの食事に目をつけたのは理由があった。1932年当時の将棋欄は勝敗に関することしか書かれていなかった。まだテレビ放送はなく新聞の将棋欄でしか情報を得られず実際の棋士がどういう人物なのかは知られていなかった。そこで倉島は対局風景の描写としてその日の天候、対局場の紹介、服装、対局中の顔色などを詳しく書くことで勝負の場の空気を感じさせようとした。
  8. しかし連日同じ場所で行われ周りの変化もあまりなくそのうち書くことがなくなってしまった。
  9. そんなとき倉島は食事に目をつけ対局中の食事風景を見出しにした。食事を通して棋士たちがどういう人物かを読者に伝えようとした。
  10. すると将棋好きだけでなく将棋のルールを知らない人でも楽しく読めると話題になっていきニュースの定番になっていった。
 放送では続いて人間性が表れた将棋めしエピソードが紹介された。
  • 加藤一二三九段の大好物はうな重で昼も夜もうな重というスタイルを40年続けた。
  • 羽生善治九段の料理の注文のうち最も世間をざわつかせた注文が「天ざるそばの天ぷら抜き」。
 最近では藤井聡太竜王名人が史上初の八冠達成で盛り上がっているが、将棋めしもその熱狂を支えている。その将棋めしブームの元になった倉島竹二郎はおよそ50年にわたり、食事を通して勝負の空気を伝え続けた。

 ここからは私の感想・考察になるが、倉島竹二郎さんは、私が子どもの頃には、NHK杯テレビ将棋トーナメントの聞き手を務めたことがあり、かすかにその時の記憶が残っている。解説者が加藤治郎さんだったときの大盤解説でとんでもない手が出て慌てていたようなシーンがあったはずだが、どなたの対局だったのかは忘れてしまった。ちなみに、NHK杯の司会・聞き手で記憶に残っているのは、神田山陽さんと永井英明さん。永井さんが降板された1991年以降は、ちょうど子育ての時期で毎週日曜日はどこかへ出かけていたため、将棋放送を視なくなった。再び視聴するようになったのは2009年の矢内理絵子さん以降となった。

 さて将棋めし紹介の話題であるが、その由来については今回の放送で理解できた。しかし、倉島竹二郎が観戦記を執筆していた頃は今とは事情が異なる。上掲のように、当時は対局者の顔色や対局場の雰囲気などは全く伝えられておらず、活字となった観戦記が唯一の速報記事であったからこそ、将棋めしの話題には臨場感を高める効果があった。
 しかし現在では種々の動画配信により注目度の高い対局は生中継されるようになっている。なので、今なお将棋めしに注目が集まるとしたら、別の理由を考える必要がある。
 私なりに考えてみるに、
  • 食事や服装を紹介することで、将棋を知らない人や棋譜に興味が無い人にも関心を持ってもらう。
  • 食事やおやつを提供した旅館や仕出し屋さんの宣伝になる。
というのが、今なお将棋めしの紹介が存続している理由ではないかと思われる。

 この日記で何度も指摘しているように、特別な習慣や言語表現などがなぜ今の時代に行われている(使われている)のか?という疑問に対しては、それらの由来を解説するだけでは不十分と言わざるを得ない。どういう由来で始まったにせよ、それが今なお行われている(使われている)としたらその原因は現代に求められなければならない。例えば、ヨコ型信号機はなぜ左から青、黄、赤に並んでいるのか?【←但し、車が左側通行の国・地域】という疑問に答えるためには、過去の由来を述べただけでは不十分。そうではなくて、右端が赤であるほうがなぜ有用なのかという理由を現代社会の中から見つける必要がある。【←もちろん中には、現代では不合理だが今さら変更するのは混乱が大きすぎるという理由で存続しているものもある。例えばキーボードのQWERTY配列など】

 ところで、放送でも取り上げられた藤井聡太八冠の活躍ぶりであるが、ちょうど昨日、叡王戦第三局で伊藤匠七段が勝利し2勝1敗となりタイトル奪取に王手をかけた。伊藤匠七段はこれまでも善戦しており、しかも次回は勝利確率の高い先手番ということなので、八冠独占はかなり危うくなってきた。藤井八冠は、このところ一般棋戦でも、朝日杯、銀河戦、NHK杯それぞれの決勝で3連敗しており、特に早指し戦で苦戦をしているようだ。ま、大相撲の横綱の人数などもそうだが、観る側からすれば、藤井一強時代より、藤井・伊藤二強時代、さらには、藤本渚五段を加えた「三藤」三強あたりまでのほうが面白いという気もする。いずれにせよ、この先もAI超えの好手が出現することに期待したい。