じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 5月20日の朝5時台のNHK『おはよう日本』で、大阪市大正区と西成区を結ぶ無料の渡し船の話題を紹介していた【NHK+で視聴可能】。
 この放送は、4月にWEB特集として配信された、

無料で便利なだけじゃない! なにわの“人情”渡し船

という記事に関するローカル放送を『おはよう日本』で全国放送したものと推察される。

 リンク先に記されているように、大阪市には最盛期には31箇所に渡船場がありおよそ5700万人が利用。現在は8箇所に減っているいる。大型船が通るため歩行者用の低い橋が架けられないことから今でも市民の大切な移動手段になっているという。

 今回紹介された『落合上渡船場』は訪れたことが無いが、2013年3月に『千歳橋の渡船場』は見学したことがあった。2013年3月2日に関連記事あり。また旅行記がこちらにあり。

 なお、NHK朝ドラ『純と愛』は、私がこれまで全話を視聴した朝ドラ2作品のうちの1つになっている(もう1作品は『らんまん』)。私好みであったが、余りにも浮き沈みが激しい展開になっていたため、気持ちよい朝を過ごすためにドラマを観ていた人たちには不評であったようだ。たぶん再放送されることはあるまい。


2024年5月20日(月)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「ビリジアンとは?」/減法混色とか色の錯視とか

 昨日に続いて、5月17日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は以下の3つの話題のうち最後の3.について考察する。
  1. 走るときに腕を振ってしまうのはなぜ?
  2. 運転手の隣を助手席と呼ぶのはなぜ?
  3. ビリジアンってなに?


 さて、3番目の『ビリジアン』だが、言葉を聞いただけでは私には何のことか全く想像がつかなかった。放送では、「しろ、きいろ、レモンいろ、きみどり、ビリジアン、あお、あいいろ、あか、しゅいろ、ちゃいろ、おうどいろ、くろ」という12色セットの絵の具が示され、その中にある『ビリジアン』とは何かというクイズになっていた。いっけん『深緑色』のように見えたが、絵の具業界では『緑』とは全く別の色であるという。念のためRGBで表示すると以下のようになる。

ビリジアン■■■■■
みどり  ■■■■■

 放送ではビリジアンとは『混ぜても作れない水酸化クロム色』が正解であると説明された。色彩や画材について研究している岩泉慧さん(京都芸術大学)&ナレーションによる説明は以下の通り。
  1. ビリジアンは水酸化クロムを原料とした色。クロム鉱石を水酸化させた化学物質で、絵の具以外にも化粧品などの顔料として使われている。
  2. ビリジアンの語源は、ラテン語の『ビリディス』で、「草色の、青葉の茂った、若々しい」などの意味がある。
  3. 『ビリジアン』は『緑』と異なり、12色セットの絵の具では作れない。『緑』は『青』と『黄』を混ぜれば作れるが、『ビリジアン』は藍色と黄緑を混ぜることで似た色は作れるがビリジアンより青っぽい色になってしまい作ることができない。
  4. ビリジアンが12色セットの絵の具を混ぜて作れないポイントは彩度にある。彩度が高いほど色がくっきりする。
  5. 基本的に、【絵の具】の色というのは、混ぜれば混ぜるほど彩度が落ちてくすんだ色になる。
  6. 一度混ぜた絵の具の粒子は取り除くことができないので、彩度が低い色の絵の具を混ぜても彩度の高い色にすることはできない。
  7. 緑方向の彩度は、みどり色ではマイナス12.77、ビリジアンではマイナス20.07となっていてビリジアンのほうが彩度が高い。どうしても混ぜて作りたいなら、より彩度の高い絵の具が入っている108色セットが必要。放送では108色セットの中の『フタロブルーレッドシェード』に『イミダゾロンイエロー』を混ぜ、最後に『コバルトターコイズライト』を加えて、ビリジアンを作るという実演が行われた。
  8. 1951年の『学習指導要領』の改訂により、全国の小学校で水彩絵の具を使った授業が追加された。1952年に発売された12色の絵の具セットでは、
    ●ちゃいろ、くろ、あお、あいいろ、きみどり、あおみどり、きいろ、やまぶきいろ、あか、おうどいろ、しろ
    が基準の色となっており、このうち、あおみどり色が『Viridian』となっていた。
  9. なお現在の市販の12色セットは、
    ●しろ、きいろ、レモンいろ、きみどり、ビリジアン、あお、あいいろ、あか、しゅいろ、ちゃいろ、おうどいろ、く
    という色名になっているようだ。
  10. 色彩の学習には『混色』も含まれており、混色に使いやすいビリジアンが選ばれた。なおシンプルな緑色はビリジアン(あおみどり)に黄色(Lemon yellow)を加えることで作ることができる。
  11. クレヨンは色を混ぜて使わないので、ビリジアンではなく緑色が入っている。
  12. 放送では12色の絵の具から別の色を作る実演があった。
    • ビリジアン+レモン色+黄色+白→エメラルドグリーン 
    • ビリジアン+朱色+黄土色→苔色
  13. 補足:低学年用の絵の具はビリジアンの代わりに緑が入っている場合もある。





 ここからは私の感想・考察になるが、以上の解説を理解するためには絵の具の性質や混色の原理を理解しておく必要があると思う。
 まず、絵の具【ここでは水彩絵の具】というのは、基本的には水に溶けない細かい粒子であって、化学反応を起こさないことが前提となる。もし絵の具の成分につより酸性物質や鉄分などが含まれていると混ぜた時に酸化して別の色に変わってしまう。また、空気中の酸素や紫外線による変色・退色にも注意をしなければならない。

 次にそもそも色とは何ぞや?について理解しておく必要がある。私の理解は以下の通り。
  1. 色とは人間の目で感じられる波長に対応したものであるが、単純に波長の長さだけで決まる一次元的な違いであるなら、明るさの違いと変わらないことになってしまう。そうではなくて色が質的な違いとして感じられるのは、普通は3種類あるという受容器がそれぞれの波長の色に対応して反応しているためである。
  2. 絵の具を含めて、物の表面の色というのは反射した光の色である。リンゴが赤いというのは、別段、リンゴが赤いという本質を備えているからではない。いろいろな波長の色が一斉にリンゴにあたった時に、赤色の波長の光以外を吸収してしまうからこそ、赤く見えるのである。
  3. 絵の具を混ぜるというのは減法混色である。青と黄色の絵の具を混ぜるということは、青以外の波長を吸収する物質と黄色以外の波長を吸収する物質を混ぜるということであるから、そのぶん、吸収される波長が広範囲に及ぶので彩度が低下する。上掲の「彩度が低い色の絵の具を混ぜても彩度の高い色にすることはできない」というのはこのことを意味する。

 なお、今回の話題は以前に民放でも取り上げられたことがあり、こちらではより詳細な説明に加えて、混ぜて作れない色や、混ぜて作るのが難しい色が紹介されていた。

 ちなみに、私自身は、中学までの『図工』や『美術』のほか、高校で美術か音楽かを選択した際にも美術を選んでいたが、音楽よりはマシだろうという程度の理由であり、熱心に取り組んだことはなかった。それよりも、当時は、
  1. 絵の具を混ぜても化学反応が起こらないのはなぜか?
  2. 三原色の色が、光と絵の具で違うのはなぜか?
といったことに疑問を持っていたが、謎が解けたのは大学入学以降であった。

 余談だが、色の見え方にも錯視がある。最近は旧ツイッターで北岡先生のポストを日々拝見しているが、白と黒の縞模様の隙間が黄色に見えるという錯視などは本当に不思議だ。日常生活で見えている色も、いまリンクした錯視のほか、色の恒常性とか残像とかいろんな現象があり、本当は何色なのか確信が持てないことさえある。