じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 日の出の方位が北東方向に移動したことで、岡山・百間川橋梁を通過する新幹線の車両が、朝日に照らされて輝く現象が見られるようになった。写真は橋梁の上ですれ違う車両で、左が上り、右が下りとなっている。背景は備前富士(芥子山)。


2024年5月21日(火)




【連載】隠居人が楽しめる素数の話題(12)素数の間隔の規則性

 1カ月ほど間が空いてしまったが、4月20日に続いて素数の話題。

●かーるのゆっくり数学 近年解明された素数の法則 6選【総集編】
を中心にメモと感想を記す。今回は『素数の間隔の規則性』をめぐる話題。

 動画によれば最近、

どんな大きな数でも600個ずつの区切りで見ると素数が2個入っている区間がある

という法則が発見された。

 自然数を適当な数で区切っていくと、その中に含まれる素数の個数はしだいに減っていくように見える。じっさい、
  • 1〜100:素数は25個
  • 10万1〜10万100:素数は6個
というように減っている事例を示すことができる。
 では、素数と素数の間の距離(素数を小さい順に並べた時に、2つの素数の間に入る合成数の個数)は、素数が大きくなればなるほど広がっていくのだろうか? しかし、今回の発見はこれを否定するものであった。動画によると、
  1. まず自然数を「1〜600」、「601〜1200」、「1201〜1800」、...というように600個ずつのグループに分ける。
  2. 数が小さいうちはどのグループにも素数が存在するが、数が大きくなると素数が1個も存在しないグループが出てくる。
  3. 素数は無限に存在するので、どんなに数が大きくなっていっても、どこかのグループには必ず素数が1個登場する。【もし1個も存在しなくなってしまったら、素数は無限に存在しなくなってしまう】
  4. では、素数が2個以上存在するグループは無限にあるだろうか? 今回紹介された定理では、どんなに数が大きくなろうとも、どこかのグループには必ず2個以上の素数が存在することが証明されている。
  5. この定理を証明したのは、ジェームズ・メイナードとテレンス・タオであった。この発見は他の数学者から「教科書を書き換える必要がある」とも言われており、素数の法則に関する超重要な手がかりになると期待されている。
 この定理に関しては、「なんで600個ずつグループ分けしたのか? なぜ500個ずつ、とか300個ずつではダメなのか?」という素朴な疑問が生じる。動画によれば、現時点では600が最小であるが、今後はもっと小さくなる可能性はあるという。
 さらにもう1つの素朴な疑問として、「どんな大きな数でも600個ずつの区切りで見ると素数が2個入っている区間がある」という定理の「2個」という部分を3個、あるいはそれ以上に書き換えることはできないのかという問題がある。これについては、

395122個ずつに区切ると、どんな大きな数でも素数が3個入っている区間がある

ということが証明されているという。また、理論上は、素数が4個や5個の場合でも同じように計算できるらしいという。

 動画ではこのあと、発見者のテレンス・タオとジェームズ・メイナードについて簡単な紹介があった。そのなかでメイナード氏が、

数学は計算ではなくアイデアであることを理解してもらうことが重要だと思います。

と述べていることが、この解説動画チャンネルの開設趣旨に一致していると言及された。




 ここからは私の感想・考察になるが、ウィキペディアでは、上掲のジェームズ・メイナードについてはこちらに、またテレンス・タオについてはこちらに、それぞれ紹介記事がある。今回の発見に関する記述としては、
  • テレンス・タオ:2013年 - 素数が極端に偏ることなく分布することに関する素数の新定理発見。
  • ジェームズ・メイナード:「隣り合った素数の組には隔たりが600以下のものが無数に存在する」ことを示した。その後、Polymath8bが創設され、共同研究によりこの間隔は246まで下げられたと2014年4月14日にPolymath project(英語版)で発表があった。さらに、エリオット・ハルバースタム予想(英語版)を仮定すると間隔は12まで、予想の一般形を仮定すると間隔は6まで下げられることがPolymath Projectウィキで述べられている。
となっており、解説動画のほうで「600」とされていた区間は、現在では「246」まで、また一定の仮定のもとでは「6」まで減らすことに成功しているようだ。

 念のためBingに「どんな大きな数でもn個ずつの区切りで見ると素数が2個入っている区間がある」という定理がありますが、現時点でnの最小値はいくつでしょうか?」と尋ねてみたところ以下のような回答をいただいた。
この定理は、ジェームズ・メイナード博士とテレンス・タオ博士によって発見されました。その内容は、どんな大きな数でも、**600個ごとに区切ると素数が2個含まれる場合がある**というものです12.

具体的には、ある大きな数$n$を例に考えます。$n$、$n+1$、$n+2$、...、$n+1000$、...、$n+2000$と順番に大きくなる数字を書いた札を作り、600個ずつ同じ箱に入れます。すると、全ての箱に2個の素数が入るわけではありませんが、素数2個が入った箱は無限に存在することが分かりました。

この定理は、双子素数予想とも関連しています。双子素数予想は、差が2であるような連続する素数の組(双子素数)が無限に存在するという予想です。新定理は、この双子素数予想に対して、素数の間隔が600個ごとに2個の素数を含むことを示しています3.

現時点では、600が最小の幅とされていますが、今後の研究でさらに狭まる可能性があることに注意してください。123

(1) 一時期話題になった素数のスモールギャップに関するプレ .... https://tsujimotter.hatenablog.com/entry/primes-smallgap.
(2) 素数の間隔で新定理発見 極端な偏りなく分布、米英数学者 .... https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20140226/181201.
(3) 素数の判定法、エラトステネスのふるい、1000以下の素数の個数. https://examist.jp/mathematics/integer/sosuu-hantei/.
(4) エラトステネスの篩(ふるい)で100までにある素数を見つける方法 .... https://magazine.mathchannel.jp/knowledge/520/.
(5) undefined. http://www.47news.jp/CN/201402/CN2014022601001180.html.
(6) undefined. http://www.sponichi.co.jp/society/news/2014/02/26/kiji/K20140226007668140.html.

 なお出典の中の千葉日報の記事(2014.2.26付け)は秀逸で分かりやすい。地方紙のオリジナルの記事であったとしたらどこかで表彰されても良さそう。

 なお、今回の話題に関連して『素数砂漠』というのがある。こちらによれば、

素数砂漠:素数の間隔が広い場所,すなわち合成数が連続する場所。

であるが、リンク先にあるとおり、

いくらでも長い素数砂漠が存在する。

ということは少なくとも3通りに証明することができる。但しこれは「無限の長さの素数砂漠が存在する」という意味ではない。ちなみに、1から109までの区間での最長の素数砂漠は281であるという。