じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



06月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る




クリックで全体表示。



 半田山植物園で見かけたオオヒラタシデムシの幼虫。古生代の生物を連想させる。


2024年6月21日(金)




【小さな話題】NHKトリセツ『腸内細菌』改訂版(1)酪酸産生菌と短鎖脂肪酸

 6月13日に初回放送された、NHK『あしたが変わるトリセツショー

改訂版・腸内細菌★新育菌カードで健康&老化防止

のメモと感想。腸内細菌については、科学・教養・雑学系番組や健康支援番組などでたびたび取り上げられており、この日記でも、
  • 2021年7月29日ヒューマニエンス「“腸内細菌” 見えない支配者たち」 その1 腸内細菌が好みを決める
  • 2023年10月10日人間を操る?!〜腸内細菌で人生変わっちゃう?
などで取り上げたことがあった。これまでいろいろな話を聞いてきたので今回の内容は特に目新しいというものではなかったが、復習を兼ねて概略をメモしておくことにしたい【要約・改変あり】。
  1. 人の腸内には約500〜1000種の腸内細菌がおよそ40兆以上生息していると考えられている。その殆どは大腸に済んでいる。
  2. 腸内細菌は、下痢・便秘改善、美肌、がん予防、ダイエット、運動能力向上などに貢献しているが、その中でも最近、老化防止に繋がる菌が注目されるようになった。
  3. この菌が注目されるようになったきっかけは京都府京丹後市で行われた調査にあった。この地域では人口10万人当たりの100歳以上の割合が226.3人で、全国平均73.7人のおよそ3倍になっていた【←単に100歳以上の比率が大きいというだけであれば、若者が転出し高齢者だけが残っているという可能性もあるように思うが】
  4. 種々の調査の結果、この町の住人の腸内細菌には酪酸産生菌が多く、この菌が健康や長生きに関与していることが分かってきた。京丹後市に住む人たちは京都市に住む人たちに比べて酪酸産生菌を含む腸内細菌のグループの比率がおよそ10%高かった。
  5. 薬品メーカーの協力により、糖の液体の入った試験管に腸内細菌(酪酸産生菌?)を加えた条件と加えなかった条件で比較したところ、腸内細菌を加えた条件では短鎖脂肪酸が作り出されていることが確認できた。
  6. 腸内ではT細胞の指示により免疫細胞が病原体と闘っている。T細胞が居ないとどれが敵でどれが味方なのかが混乱し、炎症を起こしたりする。短鎖脂肪酸はT細胞を生み出し、腸内での病原体排除を適切に保つ。
  7. 短鎖脂肪酸にはこのほか、運動能力の向上や肥満改善の関連性があると考えられている。
  8. 主な短鎖脂肪酸としては、お酢などの酢酸や、酪酸、プロピオン酸などがあるが、これらは通常、口から吸収しても小腸で吸収されてしまい大腸には届かない。なので、腸内細菌が大腸の中で短鎖脂肪酸を作る必要がある。
  9. 短鎖脂肪酸は免疫の暴走を抑えるので、それがうまく働いているかどうかは肌を見ても分かる。
  10. 短鎖脂肪酸がうまく作られていれば、バナナのようなウンチがでるのでこれを目安にすることもできる。
  11. これまでは「体質」だと思われていたものが実は腸内細菌の影響の違いであったという可能性があり、自身の腸内細菌を意識しながら生活する必要がある。

 ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、短鎖脂肪酸については、『チコちゃんに叱られる!』の中の醍醐味ってなんの味?にも関連しており、「醍醐は短鎖脂肪酸が多く低温で液体になるバターオイルと考えられる。」という記述があった。

 上掲の6.で「短鎖脂肪酸はT細胞を生み出し、腸内での病原体排除を適切に保つ。 」についてはよく分からない。ヒューマニエンス『免疫』では、
...T細胞は、『胸腺(Thymus)』で作られる。しかし胸腺は、新生児の時は相対的にいちばん大きく、小学校低学年の頃に最大となるが、成人になる頃には消滅してしまう。つまり成人は新たにT細胞を作ることができない。生き残っているT細胞の働きでどうにかこうにか獲得免疫を維持しているようである。濱崎洋子さんによれば、もともと私たちの寿命はもっと短かったので、その範囲では十分役割を果たしていた。それが医療の発達によって、生物として予想を超えて長生きしているため、今回のような新型コロナのようなものがポッと出てきた時に対抗できなくなる。
と解説されており、今回の、短鎖脂肪酸がT細胞を作るという説明はこれに矛盾している。さっそくBingに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
腸内で産出される短鎖脂肪酸が**制御性T細胞**の分化誘導に影響を与えることが明らかにされています123. 以下に詳細を説明します。

- **酪酸(Butyric Acid)**という短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維を代謝する際に生成されます。
- 酪酸は、**制御性T細胞(Treg)**への分化誘導に重要な遺伝子である**Foxp3**の発現を高めます。
- 制御性T細胞は、炎症やアレルギーなどの過剰な免疫反応を抑える役割を果たす免疫細胞です。
- 高繊維食を摂ることで腸内細菌の活動が高まり、酪酸の生成量が増加します。
- 酪酸によって分化誘導された制御性T細胞は、大腸炎などの炎症を抑制する効果があります。

この発見は、炎症性腸疾患の病態解明や新たな治療法の開発に期待されています123。

(1) 腸内細菌が作る酪酸が制御性T細胞への分化誘導のカギ | 理化学 .... https://www.riken.jp/press/2013/20131114_1/.
(2) 腸活のポイントは「短鎖脂肪酸」! | 腸内細菌が生み出す物質 .... https://bing.com/search?q=%e8%85%b8%e5%86%85+%e7%9f%ad%e9%8e%96%e8%84%82%e8%82%aa%e9%85%b8+%ef%bc%b4%e7%b4%b0%e8%83%9e+%e5%bd%b1%e9%9f%bf.
(3) 腸活のポイントは「短鎖脂肪酸」! | 腸内細菌が生み出す物質 .... https://www.karadacare-navi.com/foods/21/.
(4) 94. 免疫調節作用を有する新規腸内代謝産物の探索 長谷 耕二. https://www.ueharazaidan.or.jp/houkokushu/Vol.30/pdf/report/094_report.pdf.
(5) 腸内細菌と免疫系の接点 - J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/35/4/35_205/_pdf.
ということで、どうやら「酪酸は、**制御性T細胞(Treg)**への分化誘導に重要な遺伝子である**Foxp3**の発現を高めます。 」という働きはあるようだ。もっとも分化誘導のしくみについては私の知識レベルではよく分からなかった。

 次回に続く。