【連載】チコちゃんに叱られる! 「甘エビが甘い理由と自己消化」
6月21日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
- 甘エビが甘いのはなぜ?
- 夏はなぜ暑い?
- 「とことんやる」の「とことん」ってなに?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。
甘エビが甘い理由について、放送では「海の深い場所に住んでいるから」が正解であると説明された。大富潤さん(鹿児島大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 一般的に甘エビと言われているのはホッコクアカエビと呼ばれるエビ。
- エビがどの深さに住んでいるのかは種類によって異なっており、イセエビはごく浅い所から30mほど、クルマエビは100mほど。これらに対して甘エビは500mから700m、中には1000mを超える深海に住んでいることもある。
- 水深1000mは太陽の光が届かないミッドナイトゾーンと呼ばれダイオウイカや神秘的な深海生物が生きる世界。
- 放送では福井県の三国港で実際に甘エビを捕獲する場面を取材した。
- 甘エビが住む深海は魚群探知機が反応しないために漁師が長年培った勘で場所を選び、底引き網漁で沈めた網を船で引きずり魚介類をとる。
- 甘エビ漁のポイントに到着したが水深は700m以上。網をおろし引きずりながら深い所に向かって船を走らせ、網を引き上げていく。
- 捕れたてとれたての甘エビを食べてみたがスタッフは普段の甘エビよりは甘くないと答えた。捕れたての甘エビはそんなに甘くはない。
- 甘エビの甘さのカギは体内にある酵素。本来は食べたものを消化するためにあるが、死んでしまうと酵素が体を分解し始める【『自己消化』】。
- 自己消化でタンパク質が分解されるとグリシンなどのアミノ酸に変わる。それが甘みの元になる。
- 甘エビが特に甘くなるのは深海に住んでいたため。一般的に酵素が働く環境は人間の体温かそれ以上の温度。甘エビが住む深海は水温が0度から5度で、酵素の働きが鈍くなる。なので甘エビがもつ酵素は分解力が高くないといけない。甘エビの酵素は分解力が高く甘みの元のグリシンが多め。
- まだ生きている捕りたての甘エビは自己消化が始まっていないのであまり甘くない。
ちなみに、魚の場合は水揚げされて時間がたつと徐々に「うま味」が出ると言われている。放送では、東京・新宿区の寿司屋で魚を熟成されている場面が紹介された。
- 熟成に適している温度は0℃から5℃。数日間ねかせるが、取材対象となったシマアジ2kgサイズでは8日、長ければ12日。最長はマグロで2カ月。
- 甘エビでは酵素による自己消化でタンパク質がグリシンに変化し甘味の元となるが、魚の場合はイノシン酸などのうまみ成分に変わる。
- 熟成に向いている魚は白身魚で、淡白な味わいでうまいを感じやすく身が柔らかい食感になるという。
なお、以上から言えるのは、釣りや漁港めぐりのテレビ番組などで捕りたての甘エビを食べた人が「甘〜い」という口にするのは疑わしい。正確には「まだ甘くないですね」とすべきだと指摘された。
ここからは私の感想・考察になるが、たまに回転寿司を食べに行った時に、自分から甘エビの皿を選ぶことはない。特に理由はないが、ぜひとも食べたいという寿司ネタでもない。なので甘エビがどれほどに甘いのかを味わった記憶も無かった。次回はぜひ1皿食べてみたいと思う。
これまで、「熟成」というのはくさやと同じようなもので、魚を何らかの発酵液につけて作るものだと思っていた。しかし外部からの発酵菌の助けを借りるのではなく、体内部の自己消化によりタンパク質が変化するということは知らなかった。もっともこちらの説明にあるように、料理で「ねかす」という時には、
●材料に下味をつける、煮込み料理の味をなじませる、クッキーやパイなどの生地を扱いやすくする等の目的のためにしばらくおく、または冷蔵すること。
という意味があり、回転寿司で提供される『熟成マグロ』や『熟成サバ』なども何かの汁に漬け込んだような味になっているように思う。
熟成については、熟成期間中に有害な雑菌が繁殖しないのかということが気になっていた。ま、0℃から5℃という気温であれば通常の冷蔵庫保存と変わらないので腐敗することはないとは思う。もっとも私のような合理主義者から言えば、何か健康にプラスに働くような変化があれば別だが、単に甘味や旨味を増やすだけの工程であればあまり意味が無いように思える。
甘エビ『自己消化』については、なぜ死んでから起こるのか、生きている時にはなぜ自己消化が起こらないのかが疑問になったのでBingに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
甘エビが生きている時に自己消化が起こらない理由は、消化酵素が適切に制御されているからです。以下に詳しく説明します。
1. **消化酵素の制御**:
- 生きている甘エビは、消化酵素を適切に制御しています。消化酵素は、食物を消化するために特定のタイミングで分泌されますが、エビ自身の体を消化しないように制御されています1。
2. **細胞膜の保護**:
- 生きている間は、細胞膜がしっかりと機能しており、消化酵素が細胞内に漏れ出すことを防いでいます。これにより、自己消化が起こらないようになっています2。
3. **死後の変化**:
- 甘エビが死ぬと、細胞膜の機能が失われ、消化酵素が細胞内に漏れ出します。この結果、自己消化が始まり、タンパク質がアミノ酸に分解され、甘味成分が生成されます3。
このように、生きている間は消化酵素が適切に制御されているため、自己消化が起こらないのです。123
(1) 甘エビのお話 - 株式会社貞正. https://sadasho.com/pages/27/detail=1/b_id=126/r_id=176.
(2) 甘エビ(ホッコクアカエビ) ― 魚卵一筋 −三浦水産. https://miurasuisan.com/%e7%9f%a5%e8%ad%98%e6%83%85%e5%a0%b1/%e7%94%98%e3%82%a8%e3%83%93/.
(3) 甘エビが甘いのはなぜ?チコちゃん - What an Interesting World. https://tmbi-joho.com/2024/06/21/chiko257-sh/.
(4) 甘エビ、なぜ甘いの? | 横浜丸魚株式会社. https://www.yokohama-maruuo.co.jp/food/%e7%94%98%e3%82%a8%e3%83%93%e3%80%81%e3%81%aa%e3%81%9c%e7%94%98%e3%81%84%e3%81%ae%ef%bc%9f/20151120.html.
なお、追加質問によれば、「人間の体でも、死後に自己消化が起こります。これは、細胞内のリソソームやペルオキシソームが破壊され、内部の酵素が細胞を分解するためです。」とのことで、棺おけの中の遺体内部でも通夜から火葬までの間にそれなりの変化が起こるようである。また自己消化を防ぐ方法については以下のような説明をいただいた。
自己消化を防ぐためには、以下の方法が有効です:
1. **低温保存**:
- 自己消化は温度が高いと進行しやすいため、低温で保存することが重要です。例えば、肉や魚を冷蔵や冷凍することで自己消化を遅らせることができます?。
2. **塩漬け**:
- 塩漬けにすることで、自己消化を遅らせることができます。塩は酵素の活動を抑制し、細菌の繁殖も防ぐ効果があります?。
3. **酸性環境の調整**:
- 酸性環境を調整することで、自己消化を抑えることができます。例えば、酢を使った保存方法などが有効です?。
(1) 自己消化(ジコショウカ)とは? 意味や使い方 - コトバンク. https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E6%B6%88%E5%8C%96-518694.
(2) 【医師監修】すぐに、誰にでもできる、消化不良の改善方法と .... https://medicommi.jp/76476.
(3) 消化不良はどうして起こるの?その原因や予防策について解説 .... https://www.tamapla-ichounaika.com/knowledge/category/post-37999/.
(4) 消化不良の原因とは?消化不良(胃もたれ・胃のむかつき .... https://www.wakamoto-pharm.co.jp/tips/intestine-body/indigestion/.
次回につづく。
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