じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 10月19日の朝、備前富士(芥子山)の山頂から日が昇る『ダイヤモンド備前富士現象』のほか、西の空には虹が見えた。虹はほぼ半円形で日の出の直後から20分ほど出現していた。その後は厚い雲に覆われ、雨が降り出した。
※虹の写真は楽天版にも掲載予定。


2024年10月19日(土)





【連載】チコちゃんに叱られる! 「ハスキーボイスは大自然の音なので親しみやすさや癒やしを感じさせる」という胡散臭い説明

 10月18日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
  1. ハスキーボイスが魅力的に感じるのはなぜ?
  2. ゴシップカメラマンをパパラッチというのはなぜ?
  3. 大納言小豆はなぜ「大納言」?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。

 放送では、ハスキーボイスが魅力的に感じるのは「大自然の音だから」が正解であると説明された。

 尺八奏者で音楽の構造にも詳しい中村明一さん(順天堂大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 森や海で聞こえる大自然の音とハスキーボイスはいずれも非整数次倍音。
  2. 音には整数次倍音と非整数次倍音がある。
  3. ピアノで「ド」の鍵盤を押した時にでる音の波形を見ると、「ド」の周波数の音(基音)のほか、鍵盤を押していないにもかかわらず、いろいろな周波数の音(倍音)が同時に出ていることが分かる。基音が130.813Hzであるのに対して、倍音は261.626Hz、391.995Hz、523.25Hzというように基音の整数倍になっている。このような波形を持つ音のことを『整数次倍音』と呼ぶ。
  4. いっぽう、滝の音の波形は規則性が無い。波の音、稲穂の揺れる音、風と木々のざわめきなども同様で『非整数次倍音』と呼ばれる。
  5. ハリ・ツヤのある澄んでいて通る声をもっている人は整数次倍音が強い。特に民謡歌手はすばらしい声を持っている。整数次倍音の音には、はっきりとメッセージが伝わり、説得力やカリスマ性を感じるという声がある。
  6. いっぽう、ハスキーボイスの声は非整数次倍音になっている。私たちは大自然の音やハスキーボイスを聴くと、潜在的に親しみやすさを感じたり癒やされたり、とても魅力的な声に聞こえる。
  7. 整数次倍音が強い声のタレント、タモリさん、黒柳徹子さん。ハッキリ通る声でメッセージがストレートに伝わり、聞き手にカリスマ性を感じさせる。
  8. 非整数次倍音が強い声のタレントは、笑福亭鶴瓶さんやビートたけしさん。聞き手に親しみやすさや癒やしを感じさせる。
 放送では続いて、いろいとな歌手の声を、縦軸は整数次倍音の強さ、横軸は非整数次倍音の強さ、というダイヤグラムを作り、さまざまな歌手がどの位置にあるのかを表示した。ちなみに【整数次倍音と非整数次倍音は1次元の両極にあるのではなく、どちらも強い人、どちらも弱い人があるということらしい】。歌手やタレントさんのことは殆ど知らない私ではあるが、郷ひろみや小田和正さんが整数次倍音、森進一が非整数次倍音の声であることは納得できた。
 なお、中には整数次倍音と非整数次倍音の両方の声を使い分けている歌手もいる。代表的なのは美空ひばりさんで、『川のながれ』の歌では出だしの低音部は非整数次倍音、サビの高音部は整数次倍音で歌っている。Adoさんも同様。また、チコちゃんの「ボーっと生きてんじゃねーよ!」の「ねーよ」の部分は非整数次倍音であるという。




 ここからは私の感想・考察になるが、ピアノの音や一部の歌手の歌声が整数次倍音、大自然の音やハスキーボイスが非整数次倍音に分類されることはよく分かった。しかし、「私たちは大自然の音やハスキーボイスを聴くと、潜在的に親しみやすさを感じたり癒やされたり、とても魅力的な声に聞こえる。」という説明に限っては根拠が挙げられておらず、胡散臭い説明であるように感じた。というか、そもそもハスキーボイスのほうが整数次倍音の声よりも親しみやすさや癒やしを感じるという根拠は示されていない。
 いずれにせよ、ハスキーボイスのほうが大自然を感じさせるということであれば、大自然を描いた歌はハスキーボイスの歌手のほうが適していることになるのではないか。
 このほか、非整数次倍音には車の騒音も含まれているはずだが、癒やしを感じる人は少ない。となると、なぜ波や川や滝の音が癒やしになり、騒音は不快になるのかについて、もう少し説明が欲しいところであった【「1/fゆらぎ」の話は聞いたことがあるが】。

 今回の疑問の解説が始まる前、ドラえもんのアニメでジャイアンの声を演じる木村昴さんから、『ドラえもん』、『ばいきんまん』、『ちびまる子ちゃん』というように、子ども向けアニメのキャラクターではハスキーボイスが多いのではないかという指摘があった。『クレヨンしんちゃん』、『オバQ』、『銀河鉄道999』なども同様であったように思う。もっとも、その理由は、男の子の声を女性の声優がつとめていることにもあるのではないかと思われる。おそらく、男の子の声は、
  • 本当の男の子に任せたのでは、まだ未熟のため、うまくセリフが言えない。
  • 整数次倍音の女性の声優では、女の子の声と区別できない。
  • 成人男性の声優ではかわいらしさが出ない。
といった理由で非整数次倍音の女性の声になることが多いのではないかと思う。

 本題から外れるが、音楽の仕組みについては最近、

音楽ガチ分析チャンネル

という動画で、いろいろ学ばせてもらっているが、なかなか奧が深い。小中学生の頃、音階にはなんで長調と短調があるのか、なぜそれらが異なる印象をもたらすのか、などについて疑問に思っていたが、先生に尋ねても納得できるようには説明してもらえなかった。上掲の解説動画で、ようやくその理由の一部が分かったような気がしている【←「気がしている」だけだが】。

 次回に続く。