じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 半田山植物園で見かけたホソバヒイラギナンテン。少し前から黄色い花(蕾?)が見えている【写真上】。写真下はヒイラギナンテン【写真下】。
 リンク先にはホソバヒイラギナンテンの「小葉はヒイラギナンテンよりも細長く、冬にも色づかない。花は黄色で、秋に咲く(ヒイラギナンテンは冬に咲く)」 と記されているが、この場所では冬に咲き始めている【ヒイラギナンテンのほうはようやく蕾が出てきたところ】。


2025年01月25日(土)




【連載】NHK『ダークサイドミステリー 神秘の古代ミステリー 徹底検証!日本・ユダヤ同祖論(10)2000年代以降のSNSの影響/まとめ

 昨日に続いて、2024年11月29日に再放送された表記の放送についてのメモと感想【初回放送は2023年7月13日】。本日で最終回。

 放送では1967年の『まぼろしの邪馬台国』や1970年代以降の出版ブームに続いて、2000年代以降のインターネット普及が日ユ同祖論の展開を変えて行ったと指摘された。それまでは書籍を通じた「著者→読者」という一方通行的なブームであったのに対して、2000年代からはネットが普及したことで個々人がホームページやブログで手軽に紹介できる「ちょっと不思議で目を引く」話題として、日ユ同祖論はうってつけであった。さらにスピリチュアルブームやパワースポットブームは、旅行先での神社仏閣などでユダヤの痕跡らしきものを見つけミステリー気分を味わえる楽しみを付け加えていった。学校で教わる日本の歴史をはるかに遡る神秘的な旧約聖書の世界とつながるロマン、「日ユ同祖論」は今やライトな感覚でネット上に広がっていると指摘された。

 放送の終わりのところではスタジオ出席者から以下のようなコメントが交わされた【要約・改変あり。敬称略】。
  1. 【原田実】高度経済成長期に働き盛りだった人たちは、戦前・戦時中の教育を受けた世代。その人たちは、敗戦によってそれまで持っていた「神国・日本」という物語をいきなり否定された。そこで第2の人生として民族レベルで自分の起源探しを始める。そして経済成長期からバブル期に突入する頃には、日本人がなぜ急成長できたのかということを自分たちでも問いかけるようになった。そこでユダヤ人のお金儲けの方法に関心を持つ。露骨にユダヤの商法に学ぼうという本も出てくる。それから『ユダヤ陰謀論』というものがビジネスの中でリアルな話として捉える人たちが出てくる。自分たちのルーツを探し求めていく過程で、戦前からあった日本・ユダヤ同祖論に突き当たる。
  2. 【雨宮純】SNSに神社の写真をあげる時にも、単に「旅行で来ました」ってあげるだけの場合よりも、「この神社はユダヤとつながっている」とあげたほうが反応しやすくなる。SNS的にも何かしら物語をくっつけたほうが投稿する側も楽しいし読む側も楽しいということで、聖地巡りの感覚で楽しんでいる。ライトのほうが広がりやすい。
  3. 【雨宮純】(インターネットとかでこれだけ情報がいろいろと発信されていく中で、どうやって情報をつかみ自分で判断していけば良いかについて)気持ち良すぎるものには気をつけたほうがいい。日本人というだけで「ユダヤとつながっていてすごい」と思ってしまうのではなく「ちょっと疑う」「気をつける」ことが重要。
  4. 【原田実】『日ユ同祖論』の中のユダヤというのは現実のユダヤ人ではなく、本当に観念の中のユダヤ人。例えば小谷部全一郎の著者への読者投稿の中に「私は『日本人ギリシャ起源説』の本にも、『日本人ヒッタイト起源説』の本にも感動した。そしてもちろんこの『日ユ同祖論』の本にも感動した。」という面白いものがあった。ヒッタイトとギリシャとユダヤは全然違うのになぜ感動できるのかと言えば、とにかく「西方の偉大な民族が日本人と結びついている」と言ってもらうだけでうれしいから。
  5. 【原田実】『ユダヤ陰謀論』とセットになりやすいということ自体が暴力や差別に結びつくような発想を含んでおりそういう歴史もある思想だということは踏まえたほうがいい。


 ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、もともとこの連載を始めた理由は、1月9日に記した通りであり、
なぜ一部の人たちがこうしたトンデモ説を信じてしまうのか、また「真実だと思わせるトリック」としてどのようなものがあるのか、という点には大いに興味がある。こうしたダマシのトリックを知っておくことは、健康食品の誇大な宣伝、高額な民間療法、脳科学モドキや進化生物学モドキのトンデモ理論を打ち破る上でも大いに有用ではないかと思う。
という点にあった。
 放送で紹介された、『ソーラン節』や『かごめかごめ』の歌詞に現れるヘブライ語モドキ、『六芒星』、『秦氏』、『三柱鳥居』、『いさら井』、そしてヘブライ語と日本語の音声的類似性などはいずれもトンデモ説のトリックの典型であり、ちょっとした証拠があれば論破できるものであることが分かった。
 もっとも、多くの人たちは、常日頃から科学的に正しい判断ばかりを追求しているわけではない。トンデモ説であっても話題性があれば日常会話の中では有用となる。これは血液型性格判断にも言えることであり、簡単に論破できるようなエピソード(例えば民放番組で保育園児の行動が血液型によって違っていたというような映像を視たというような胡散臭い話題)であってもその場で楽しめればエエじゃないか、真面目くさって反論するのは空気が読めない堅物だと見なされるのと同様かもしれない【←本当は差別・偏見の現れなのだが】。
 さらに言えば、人が何かを信じたり、賛意(もしくは反意)を表明したり、対立場面でどちらかの側についたりするのは、必ずしも科学的・論理的な判断に基づくものとは言えない。たいがいは、「そちらのほうが好感が持てる」、「こちらのほうは嫌いだから避ける」といった好き嫌いに基づいて選ばれるのである。なので、日ユ同祖論が「好き」な人に、いくら否定的証拠を突きつけても意見を変えさせることはできない。これは改宗を求める場合も同様【新興宗教に新たに入信する人なども、その宗教の教義が正しいとを論理的・哲学的に理解した上で信者になるのではなく、勧誘者や他の信者たちの親しみやすさとか信頼関係がもとになることが多い】。

 放送では、単に話題性があるという理由だけでなく、日ユ同祖論の場合は自分の起源探しの一環であるとも説明されていた。もっともこれは、「敗戦によってそれまで持っていた「神国・日本」という物語をいきなり否定された。そこで第2の人生として民族レベルで自分の起源探しを始める。」という世代についての説明である。「戦前・戦時中の教育を受けた世代」と言っても、例えば1935年生まれの人は今年90歳であってもはや少数派。なので、いまSNS上で日ユ同祖論を唱えたり、スピリチュアルやパワースポットを話題にしているような人たちは別の世代ということになる。そういう人たちが自分の起源探しにどこまで関心があるのか、それとも単に「SNS的にも何かしら物語をくっつけたほうが投稿する側も楽しいし読む側も楽しいということで、聖地巡りの感覚で楽しんでいる。」というレベルであるのか、精査する必要があるとは思う。

 いずれにせよ、今回の放送内容は、日ユ同祖論の全面否定となっていた。もともと日ユ同祖論を裏付けるような科学的根拠は皆無に等しいので、全面否定をしたからといって偏向放送ということにはならない。但し、なぜそれが今でもSNSなどでもてはやされているのかについてはいろいろな見方があり、スタジオゲストやVTR出演者のコメントだけが正しいということにはならない。それらのコメントを鵜呑みにしてしまうのは、日ユ同祖論を無批判に受け入れてしまうのと同じくらい危険であると言えよう。