【小さな話題】ベトナム語には「シ」や「ジ」の発音が存在しない/英語も?
2月7日の日記で、
今回のツアーは、北部、中部、南部でいずれも日本語が達者な現地ガイドのお世話になった。このうちお二人は、日本語の「シー」や「ジ-」を「スィー」や「ズィー」のように発音していた。もしかすると、ベトナム語の発音には「シ shi」や「ジ ji」が存在せず、「si」や「zi」というように発音しているのではないかと思ったが未確認。
と記した。
このことについてChatGPTに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
結論から言えば、**標準ベトナム語(特に北部ハノイ方言)には、日本語の「シ [ɕi]」「ジ [ʑi]」とほぼ同じ音は存在しません。**
そのため、日本語の「シ」「ジ」が「スィ」「ズィ」のように聞こえることがよくあります。
以下、音声学的に整理します。
- 日本語の「シ」「ジ」の音価
* 「シ」= **[ɕi]**(無声歯茎硬口蓋摩擦音+i)
* 「ジ」= **[ʑi]**(有声歯茎硬口蓋摩擦音+i)
ポイントは、
* 調音点が **歯茎硬口蓋(alveolo-palatal)**
* 子音と母音 /i/ が一体化して強く口蓋化している
という点です。
- ベトナム語の近い音
ベトナム語(特にハノイ標準音)には次の子音があります。
### (1) 「s」
* 北部発音:**[s]**(歯茎摩擦音)
* 口蓋化しません。
### (2) 「x」
* 北部発音:**[s]**(「s」とほぼ同じになる)
### (3) 「gi」「d」
* 北部発音:**[z]**(有声歯茎摩擦音)
重要なのは:
👉 **[ɕ] や [ʑ] という歯茎硬口蓋摩擦音は標準ベトナム語には基本的に存在しない**
👉 代わりに [s] や [z] で代用される
その結果:
* 日本語「シ」[ɕi] → ベトナム人には [si] に近く知覚・産出される
* 日本語「ジ」[ʑi] → [zi] に近くなる
これが「スィ」「ズィ」に聞こえる理由です。
- 「チ」や「ニ」はどうか?
ベトナム語には
* 「ch」= [c](無声硬口蓋破裂音)
* 「nh」= [ɲ](硬口蓋鼻音)
があり、**硬口蓋音そのものは存在します。**
しかし:
* 摩擦音の **[ɕ][ʑ] 系はない**
* i と結びついた強い口蓋化摩擦音が体系にない
というのが本質です。
- 南部方言の場合
南部(ホーチミン方言)では
* 「s」「x」→ [s]
* 「gi」「d」「r」→ [j]
となるため、日本語の「ジ」が「イ」に近く聞こえることもあります。
- なぜ「スィ」に聞こえるのか(知覚のメカニズム)
第二言語習得理論(音韻転移)では、
> 母語に存在しない音は、最も近い母語音カテゴリーに吸収される
と説明されます。
ベトナム語話者にとって:
* [ɕ] は [s] に分類される
* [ʑ] は [z](または [j])に分類される
そのため、日本語母語話者には
「シ」→「スィ」
「ジ」→「ズィ」
のように聞こえます。
- まとめ
|日本語音|音声記号|ベトナム語に存在?|代替される音 |
|ーーーー|ーーーー|ーーーーーーーーー|ーーーーーーー|
|シ |[ɕi] | ❌ |[si] |
|ジ |[ʑi] | ❌ |[zi]または[ji]|
したがって、
> ベトナム語に「シ」「ジ」という音はあるか?
**音韻体系としては存在しない**
ただし **学習によって習得は可能** です。
次にベトナム語以外にも「シ」や「ジ」の発音が存在しない言語があるのかどうか尋ねてみた。いただいた回答は以下の通り。
**日本語の「シ」[ɕ]・「ジ」[ʑ](歯茎硬口蓋摩擦音)を音韻として持たない言語は、ベトナム語以外にも多数あります。**
重要なのは、
* 単なる「s」「z」が無いのではなく
* **[ɕ][ʑ] という“歯茎硬口蓋摩擦音”が無い** という点です。
以下、言語類型論的に整理します。
- # 1. 英語
英語には
* [s](see)
* [z](zoo)
* [ʃ](she)
* [ʒ](measure)
はありますが、
👉 **[ɕ][ʑ] は存在しません。**
そのため英語話者は
* 「シ」→ [ʃi](“she”系)
* 「ジ」→ [ʒi] または [zi]
に近づけます。
- タイ語
タイ語には [s] はありますが、
* 歯茎硬口蓋摩擦音 [ɕ][ʑ] は音韻的にありません。
よって日本語「シ」は [si] に近づきやすいです。
- インドネシア語
* [s] は存在
* [z] は外来語中心
* [ɕ][ʑ] は存在しない
そのため「シ」は [si] に近くなります。
- スペイン語
標準スペイン語には:
* [s]
* (地域により)[θ]
がありますが、
👉 [ɕ][ʑ] も [ʃ][ʒ] も基本的にありません。
そのため「シ」は強く [si] に近づきます。
- アラビア語
* [s]
* [ʃ]
はありますが、
👉 歯茎硬口蓋摩擦音 [ɕ][ʑ] は存在しません。
- 逆に「シ」に近い音を持つ言語
参考までに:
* Mandarin Chinese → [ɕ](x 音)が存在
* Polish language → [ɕ][ʑ] を持つ
* Korean language → /si/ が強く口蓋化し [ɕi] に近い
これらの話者は日本語「シ」を比較的再現しやすいです。
- 世界的には珍しいのか?
実は:
* [s] は世界で最も一般的な子音の一つ
* しかし **[ɕ] はかなり限定的**
歯茎硬口蓋摩擦音は:
* 東アジア
* 一部スラヴ語
に比較的多く、**世界全体ではむしろ少数派**です。
- # 結論
ベトナム語だけでなく、
* 英語
* タイ語
* インドネシア語
* スペイン語
* アラビア語
など多くの言語は、**日本語の「シ」「ジ」と同じ調音の音を持っていません。**
したがって、日本語の「シ」「ジ」は世界的に見ると「やや特殊な音」に分類されます。
1
上記の回答の中で英語に「シ」「ジ」が無いというのは意外だった。英語学習歴は60年になるが、これまで「she」は「シー」と発音していた。ネイティブな英語話者には「she」とは異なる音に聞こえていたのだろうか。もっともChatGPTによれば、「シー」と発音しても「she」としてほぼ確実に通じる、但しネイティブではない、ということであった。
上掲の5語のうち、インドネシアは2025年6月、スペイン(但しカナリア諸島)は2025年5月に訪れたばかりであるが、「シ」や「ジ」の音が無いということには気づかなかった。もっともどちらの国の現地ガイドも日本語ではなく英語で喋っていたので気づくはずがなかったとも言える。
上掲の5語には含まれていないが、大学の時に第二外国語として習ったロシア語にも「シ」の音は無かった。私の名前「ヨシノリ」をロシア語で表す時に「シ」を「ши」と書いたら「си」に直されてしまった。「си」は「スィ」にしか聞こえないのだが致し方ない。ちなみにロシア語には「ワ」の発音も無いため、「ハセガワ」は「Хасэгава」となる。なのでネイティブのロシア語話者に「ハセガワ ヨシノリ」を発音してもらうと「ハセガヴァ ヨスィノリ」のように聞こえてしまう。
|