じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


4月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
[今日の写真] 地味な花シリーズ。今日はモミジの花。


4月17日(月)

【思ったこと】
_00417(月)[教育]『受験勉強は子どもを救う』か(11)センター試験資格試験化と高卒資格はどう違うのか

 4/17の朝日新聞「きょういくTODAY」で「センター試験 見直し中」という話題が取り上げられていた。和田秀樹氏の著作内容からは外れるが、今日はこの問題を取り上げてみたいと思う。

 さて、記事によれば、大学審議会でのセンター試験に関する主な論点は、
  1. 年度内2回実施
  2. 前年度の成績の持ち越し活用
  3. 資格試験的な取り扱いの拡大
  4. 英語へのリスニング(聞き取り)導入
  5. 思考力などをみる総合的な問題の導入
  6. 過去に出題された問題の再出題の解禁
  7. 成績の受験生への開示
となっている。このうちの年度内2回実施については、国公立大の学長からは「現在の業務でさえ教員は悲鳴を上げている。これ以上増えたら研究活動に支障が出る」などと反発は強いという。

 しかし、(専門分野が心理学ということで直接出題業務に携わる可能性が全く無い)身軽な私の立場から言わせてもらえば、年度内複数回実施は大いに結構。単に受験生本位という発想だけでなく、大学にとっても、「本来は大学にとって求められているが、たまたまその時の緊張や不安で十分に実力を発揮できなかった受験生」を救い出すチャンスを増やすという点で大いに意味のあることだ。2回と言わず、3回、4回と実施できればそれにこしたことはないと思う。

 もう1つ注目すべき論点として、資格試験的な取り扱いの拡大を挙げることができる。この原点には
一点刻みで受験生を並べ、上から合格にしていくやり方こそ『公平』だ、という発想は捨てよう
という考え方があるようだ。
 この、センター試験を一種の「資格試験」と考えるという視点も基本的には大いに結構だと思う。資格を満たしているといって無制限に大学に入学させ大量の留年者や中退者を出すことは社会的に望ましくないけれど、それは別の形で解決するとして、そもそも
  • 大学教育に必要な基礎学力の有無をチェックすることと
  • 基礎以上の学力の差を選抜の手段として利用すること
では根本的に発想が異なる。この連載で繰り返し主張してきたように、私は個々人の努力(「要領の良さ」を含む努力)が出来る限り評価されるような選抜手段を用いるべきであると考えているけれど、それはそれとして、基礎学力以上のレベルのものを一律・網羅的に受験生に求めることは必ずしも必要ない。個々の特技を尊重し、多様な努力を評価することが望まれる。

 しかし、ここでもう1つ別の疑問が浮かんでくる。それは、もしセンター試験が資格試験になるとしたら、「高校卒業」資格とはどこが違うのかという点だ。
  • もし高卒の資格だけでは修得内容が不十分というのであれば、「中高→大学」という進学制度そのものに欠陥があることになる。となれば高卒から大学入学までの間に、予備校のような教育システムを挿入することが不可欠になる。
  • 大学入学の資格が高等学校修了程度であことを前提とした上でセンター試験を実施したところ、結果的に高卒者(見込み者を含む)の半数しか合格しなかったら、どう考えたらよいのだろう。これは、高校側がちゃんと教育せずにいい加減に卒業生を送り出していることの証拠になってしまうのではないか。
 いずれにせよ、資格試験化するのであれば、「満点の六割で合格」なんていうのはゼッタイにおかしい。資格試験というのは
学ぶべき項目をすべて修得したことの証し
として認定されるべきもののはずだから、「6割ぐらい知っていればいいだろう」なんていういい加減な判定基準であっては困る。車の運転免許の学科試験などと同様に、できれば満点の90%以上、最低でも80%以上を得点しなければ合格させるわけにはいかないだろう。もちろん、その一方で、
  • 高校であんなにたくさんのことを教える必要が本当にあるのか、
  • 社会人になった時にすっかり忘れてしまって、なおかつ不自由をきたさないような内容は、学ぶべき義務が無かったことと言える。そんなことまで高校で必修として教える必要があるのか。
ということについての問いかけも大切だ。時間が無くなってしまったので次回以降に続く。
【ちょっと思ったこと】
  • 「8割が国から戻るという指定講座」その後

     4月15日の日記で取り上げた教育訓練給付についての続報が4/18の朝日新聞「くらし」欄にあった。

     4/15の日記ではもっぱら通信教育のことを想定していたが、各種学校に通う場合形式の指定講座もあるようだ。財源は雇用保険。ソムリエ学校の受験対策講座の事例のところを見ると、授業は週に一回で六カ月間。雇用保険に五年以上入っている人なら、修了すれば受講料18万9000円の8割が国から戻ってくるという。本来の趣旨である「雇用の安定と再就職の促進」には必ずしも合致しないような趣味的な講座や、初級の英会話教室までが指定を受けている場合があるという。また、修了してもすぐに仕事が回ってくるとは限らない講座もある。

     4月15日の日記に書いた疑問のうち

    「8割補助」に目をつけた悪徳業者が、内容を伴わない講座を乱造。ニセ受講生をアルバイトに雇って補助金分を稼ぐなんていうことは無いのだろうか。
    については、
    • 雇用保険に五年以上入っているというような条件
    • 給付は学校に対してではなく、学費の全額をすでに払い込んだ本人に対する「戻し」であること
    • 修了しなければ給付されないこと
    などを考えると、通常では起こりにくいものと思う。もっとも、学校側が裏でこっそりと受講料半額割り戻し、ニセの修了認定などをやれば、
    • 受講者は「(8割給付)+(半額割り戻し額)−(学費払い込み)」により何もしなくても儲かるし
    • 学校側は受講料分が丸々儲かる
    という形で両者が得をするような不正は起こりうると思う。「受講者も民間業者も、誰もが得をする制度」という記事にもあるように、両者の利害が同じ方向に向かうシステムというのは何かと不正が起こりやすいものだ。指定基準の曖昧さが指摘されているということであれば、なおさら問題。今後の厳格なチェック、実績についての外部評価制度の導入がぜひとも必要かと思う。


【今日の畑仕事】

トマト、キュウリ、ナス、ピーマン植え付け用の畑を耕す。ホウレンソウ、ハツカダイコン、ブロッコリーを収穫。
【スクラップブック】