じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 9月25日の朝5時52分〜53分頃、東の空に彗星のように尾を引いた飛行体が飛んでいるのを目撃した。光のスジの形は、2003年10月21日の日記に掲載した写真とそっくりであった。
 その時も書いたが、こんなに早い時間に発着する飛行機があるとは考えにくい。おそらく、関空か四国方面へ向かうカラの便だと思われるが、確証はない。


9月25日(土)

【ちょっと思ったこと】

金刀比羅宮奥書院一般公開と金毘羅大権現

 昨日の日記に書いたように、奥書院の特別公開見学のため、四国の金刀比羅宮に行ってきた。奥書院が公開されるのは125年ぶり、またふだんガラス越しに鑑賞する表書院・障壁画が室内から鑑賞できるのも30何年ぶりとか。忘れないうちに率直な感想を記しておこうと思う。

 ところで、そもそも私が金刀比羅宮を訪れたのは今回が初めてであった。無信心の私はこれまで金刀比羅宮については何も知らず、単に、子どもの頃、NHKみんなのうたで
♪こんぴら、ふねふね〜、追風(おいて)に帆かけて シュラシュシュシュ〜〜〜ッ!
という歌が流れていたことから、讃州那珂の郡に象頭山金毘羅大権現があるのだろうとインプリンティングされていた程度だった。

 しかし、今回訪れて初めて知ったのだが、さぬきの「こんぴらさん」というのはあくまで神社であって、大権現はどこにも無かった。念のためネットで検索したら、なっなんと、金比羅大権現のご本体は、岡山県・西大寺に安置されていたのである。リンク先の説明にもあるように、もともと金比羅大権現は神仏混淆の思想に基づいて広まった信仰であったようだが、明治維新直後の神仏分離、廃仏毀釈の影響で、象頭山松尾寺金光院の金毘羅様もその被害を受け、また、松尾寺の住職は僧職を辞して神職として日本の海上安全の神である金刀比羅様に奉仕することを決め、寺院から神社へとその姿を変えたということのようだ。なお、金刀比羅本教のあゆみによれば、宗教法人としての金刀比羅本教が認証されたのは昭和44年8月5日であるという。意外と新しいことに驚いた。

 金刀比羅宮には中腹の本宮までが785段、奥社までは1368段の階段があるというが、毎日の散歩の成果と言うべきか、少なくとも私は全く息が切れなかった。足腰の弱い人のためには籠もあるようだが、往復6500円はちょっと高い、それも、365段までしか運んでくれない。利用者は一人も見なかったが、あれで経営が成り立つのだろうか。

 さて、お目当ての表書院、奥書院の公開であるが、最初に見た円山応挙筆の「遊虎図」水呑みの虎は、顎や牙があまり発達しておらず、というより大型の猫に見えた。江戸時代にはホンモノの虎を目にするチャンスは無く、あるいは、猫をモデルに描いたのでは、と思ってみたりする。

 奥書院ではいよいよ、伊藤若沖の「花丸図」(1764年)があった。事前に得ていた情報どおり、ここに描かれている植物の葉はみな虫食いである。昆虫を含めてありのままに花を描いたということなのかもしれないが、どれもこれも葉っぱに同じような穴があけられているのはちょっと異様だ。何か特別の制作意図があったのだろうか。

 奥書院のもう1つのお目当ては、岸岱筆の「群蝶図」(1844年)である。この絵には、明治以前から日本に棲息していた各種の蝶が描かれており、特にギフチョウなどは、明治になって昆虫学者が発見・命名する以前から障壁画の中に含まれていたとか。

 このほか、奥書院の裏側の庭は、讃岐富士を借景としていてなかなか見事だった。

 御本宮を参拝したあと、高橋由一館に立ち寄った。ここには、小中学校の美術教科書でしばしば紹介されている「鮭」の絵(※注1)が特別展示されていた。もっとも、率直な感想を述べれば、私は、昔から、あの鮭の絵の芸術的価値というのが今ひとつ理解できなかった。たぶん、日本洋画の原点という意味で注目されているのだろうが、絵自体は、こう言ってはまことに失礼だが、なんだかお歳暮の見本みたいに見える。展示館にはほかに「豆腐」があったが、これはますます分からない。どう見ても、豆腐そのものである(※注2)。高橋由一の作品でむしろ興味を引いたのは、「琴平山遠望」(1881年)や浅草や東京湾周辺の風景画などであった。当時ののどかな風景が偲ばれる。
※注1高橋由一の「鮭」の絵は複数存在しており、こちらこちらこちらでは、切り取られている面積や向きが異なる。ええと、美術教科書に出ていたのはどれだっけ? ]
※注2リンクして分かったが、この「豆腐」には、「明治時代の初め油絵など見たこともない一般の人々のために、日常ありふれた生活用品を描いて油絵の普及をはかった」という意図があったようだ。]


 今回は6会場共通券を購入したが、時間の関係もあって結局5会場しか回れなかった。よほど興味のある方で無い限りは、両書院共通券1200円と、高橋由一館500円だけでも十分満足できるのではないかという気もした。

 金刀比羅宮へは高速道路・瀬戸大橋を使えば1時間足らずで行かれるほど近場なのだが、なんといっても瀬戸大橋の通行料金が高すぎる。何だかんだで片道4950円。もっと時間がかかるのに、蒜山までなら2750円、大山なら3200円で行かれる。四国を身近に感じるためにも通行料金を値下げしてもらいたいものだ。