じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 恒例の「廊下に射し込む夕日」写真。研究室前の廊下は真西にガラス扉があるため、毎年、春分の日と秋分の日の前後に限って、廊下の奥まで西日が射し込む。過去の写真としては などあり。



3月21日(金)

【ちょっと思ったこと】

春分・秋分の日の日付が毎年違う理由

 3月22日の朝日新聞(大阪本社版)2面に、

●ニュースがわからん! 春分・秋分の日 毎年日付が違う?

という解説記事(執筆者:鍛冶信太郎氏)があった。

 それによれば、
  1. うるう年の挿入により、うるう年前年は3月21日、うるう年は3月20日というように日付が動く。
  2. 春分・秋分の日付けは、前年2月に国立天文台が確定して発表する。1年ずつ発表する理由は、地球が春分、秋分になる日が予測からずれるかもしれないから。
  3. ずれるかもしれないのは、金星に引っ張られて地球の公転速度が変わったり、地球の自転速度が遅くなったりするせいだ。
とされていたが、不正確な内容になっているように思う。

 まず1.は、大ざっぱに言えばそれでよいが、うるう年前年の春分の日は3月21日、うるう年には3月20日になるというのは確実とは言えない。こちらの予測表1998年4月29日の日記の付録)にあるように、2056年以降2099年までは、春分の日が3月21日になることは無い。こうしたズレが生じる理由については、2000年2月29日の日記に書いた通りである。要するに、現行のグレゴリオ暦のルールにより、西暦が100で割り切れる年はうるう年とならないが、そのうち400で割り切れる年はうるう年となる。1年の長さが365.2422日であることによって毎年生じる11分15秒のズレは、このルールによって、西暦1900年から2100年までの200年間、無修正のまま「放置」されるために、日付が早いほうにずれていくのである。

 次に2.だが、国立天文台が発表するのではなくて、正確には

国立天文台が作成する『暦象年表』という小冊子に基づいて閣議で決定され、前年2月第1平日付の官報で発表される。【ウィキペディアによる】
元の記事では「天文台が祝日を決めるのは世界でも珍しい」と書かれてあったが、決定はあくまで政府ということになるかと思う。

 いちばんの問題は、3.の「金星に引っ張られて地球の公転速度が変わったり、地球の自転速度が遅くなったりする」という部分だ。私の知る限りでは、金星の引力は、地球の公転速度を変えるほどの大きな影響は及ぼさない。そんなことで日付が変わるようでは、そもそもグレゴリオ暦自体が成り立たなくなってしまうではないか。

 「地球の自転速度が遅くなったりする」というのも、妙な話だ。もちろん何万年も前と比べればいまの地球の自転速度は遅くなっているらしい。しかし、現行のグレゴリオ暦に影響を及ぼすほどではない。ちなみに、自転速度が遅くなる最大の原因としては、潮汐摩擦であると言われている。元の記事の文は「〜たり、〜たりする」という表現になっていて、金星の影響であると書いているようにも読み取れるが、金星が原因で地球の自転速度が遅くなるなどという話は聞いたことがないぞ。

 それはそれとして、地球の自転速度が微妙に変動することは事実であり、その誤差は「うるう秒」で修正されている。春分の日や秋分の日は、地球が春分点や秋分点(←歳差により、いずれも毎年移動していく)を通過した瞬間を含む日とするべきところであるが、もし、日付変更時刻とそれらを通過する瞬間が1〜2秒の違いしかなかったとすると、うるう秒挿入により通過の瞬間の日付が変わってしまう恐れが出てくる。日本ではじっさい、今後100年あまりのあいだに2回、そういう年があるらしい。もっとも、もともと春分の日なるものは、人間が勝手に作った祝日であるからして、うるう秒の挿入によって春分点通過日が1日ずれたから慌てて修正しなければならないという性質のものでもない。前年に決めた日付のままにしておけばよいと思う。