じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 2010年版・岡山大学構内の紅葉(25)偉大なる黄葉

 大学構内で黄葉する樹木の中でも最も背の高いケヤキ(写真左)とポプラ(写真右)。但し、ポプラの樹のほうは、隣の中学校の敷地内に生えているようだ。

 ※ケヤキは12月2日、ポプラは11月30日にそれぞれ撮影したものであり、現在はもっと落葉が進んでいる。

12月4日(土)

【思ったこと】
_a1204(土)日本質的心理学会第7回大会(8)「文化」と「発達」と質的心理学(3)中高年男性の失業に関する研究(1)

 日程が前後するが、一日目の

「文化」と「発達」と質的心理学

のシンポジウム(11月28日の日記参照)の中で、中高年男性を対象とした話題提供があった。私自身もいちおう中高年男性に含まれるため、興味深く拝聴した。

 この研究は、テーマを、「中高年」、「男性」、「失業者」に限定したものであり、リサーチクエスチョンとして、「社会人・生活人としての実感から」、「研究としての関心から」、「臨床現場の実感から」という3点が提示された。このうち「研究としての関心から」に関しては、「日本の失業率が国際的に低いにも関わらず中高年男性の自殺率が高いのはなぜか?」という疑問、また「臨床現場としての実感から」に関しては、「どうなるのが良いのか。社会復帰が望ましいのか?」が投げかけられた。

 実際に示されたデータによれば、日本の失業率はOECDの2007年調査では4%台となっており、29カ国中の比較では2番目の低さとなっているという。いっぽう、主要先進国の自殺率を5歳から75歳まで10歳刻みで年齢別に比較すると、全般的には年齢の増加とともに右上がりのカーブが描かれるが、日本の場合は45歳から64歳のあたりにピークがあり、特異的な傾向を示している(WHO2008年)。この原因を探ることも研究の1つの目的となっているようであった。

 念のため、ネットで検索したところ、こちらに関連する図録があり、確かに米国と比較すると、日本では中高年の自殺率が他の年齢層と比べて非常に高いという特徴が見て取れる。このことについて、リンク先のサイトでは「長引く経済不況や失業率の急増、日本型経営システムの制度疲労などに伴って、1998年以降、各年齢で自殺率が上昇し、特に中高年の自殺率が他の年齢層と比べて非常に高い...」というように分析していた。

 日本における中高年の自殺率の高さの原因が「長引く経済不況や失業率の急増」にあるということが量的研究で十分に明らかにできるのであれば、さらなる質的研究を行う意義はそれほどない。そういう意味でも、質的研究で何が分かるのかということには大いに関心があった。もっとも、研究対象となった中高年の方々は、非自発的離職経験者ではあるが、自殺未遂者では決してなく、いま現在、歯を食いしばって生きようとしている人たちであるように見受けられた。そういう人々を対象とした研究を通じて、果たして「日本の失業率が国際的に低いにも関わらず中高年男性の自殺率が高いのはなぜか?」という疑問を解明できるのかについては、よく分からないところがあった。(←といって、自殺に成功した人は現在生きていないわけだから、現実には面接調査を行うことはできない。)


次回に続く。