じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§  文学部耐震改修工事(建物の西半分の一期工事分)がいよいよ竣工間近となっている。写真の通り、南側の足場は3月11日に完全撤去された。楽天版(3月13日)にうっすら写っているが、西側のテラスのあたりは、まだ足場が残っている。

3月13日(火)

【思ったこと】
_c0313(火)日本環境心理学会第5回大会「場所愛着・再考」(2)地域コミットメントの意義

 昨日の続き。

 今回のワークショップでは、3名による話題提供と、2名による指定討論が行われた。この日記で学会・研究会参加のメモや感想を述べる場合、個人発表についてはイニシアルのみ、公開の講演やシンポ、ワークショップの場合は実名をそのまま掲載することを原則としているが、今回の話題提供では一部、未公刊の博論研究の紹介なども含まれていたようなので、ここでは、話題提供ごとではなく、全体として印象に残った点を順不同で記していくこととしたい。

 第1点は、地域コミットメントについての議論である。地域コミットメントというのは、地域への愛着・誇り、地域集団成員性を含む概念である。これに関連して組織コミットメントという概念がある。これは、特定の組織に対する個人の同一化あるいは関与として定義され、これが高いと、職務外のことにも熱心に取り組むといった献身的な行動が見られるようになるという。

 ここでちょっと脱線してゴミのポイ捨て問題を考えてみるが、いくら不心得者であっても自分の家の中にポイポイゴミをまき散らす者はいない。これは、室内という自分の関心空間と、家の外という非関心空間で、異なった行動をとることを示している。よって、行動分析学の手法を単純に適用して、ポイ捨て行動を弱化しようとしても、家の外でのポイ捨て行動を完全に無くすことは困難である可能性がある。しかし、そのさい、地域コミットメントを高める働きかけをすれば、わざわざポイ捨て行動を個別に弱化しなくても、自分から積極的に地域の環境美化につとめる行動に自発的に参加していくようになるかもしれない。要するに、地域コミットメントを高めると、その地域に貢献するという結果自体が強化的になっていくのである。同じようなことは、おそらく、地域内での高齢者互助や、緊急災害時の集団での避難、さらには、今回の震災の復興促進などにもあてはまると思う。

 では、どうすれば地域コミットメントを高めることができるのか? 集団を対象とした調査では、環境的要因(景観、歴史的風景、ランドマーク、医療施設、特産物、住民との交流、地域イベント、住民の人柄、治安)や個人的要因(居住年数)などが寄与すること、かつそれらは、少なくとも2段階程度のプロセスを経て形成されるものであることが明らかにされているようであった。

 話題提供では、今回の大震災ではとりわけ、第一次産業従事者が多いことから、津波による風景、住宅、他者等の喪失への悲嘆はことさらに大きく、このことに配慮した復興プランとして、「安住の地」を取り戻すこと、地域のシンボルを再生すること、津波被害の歴史を掘り起こし保存することの大切さが強調された。

 ところで、上掲の中でも指摘されているが、地域コミットメントを形成する上では、治安という要因はかなり重要であるようだ。日本は諸外国に比べるて治安がよい国とされているためあまり問題視されていないが、確かに、強盗や空き巣が横行するような地域では地域コミットメントは形成されにくい。そういう国では、人びとは、民族や宗派などを拠り所に自警団を作って、異端者を排除しようと動く。こうなると地域という単位でのコミットメントは形成されにくくなってしまう。もっとも、あまり報じられていないが、今回の被災地でもかなりの窃盗があったと聞く。

次回に続く。