じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 昨日に続いて、文学部・耐震改修工事の進捗状況。3月13〜14日のあいだに、中庭に張り巡らされていたフェンスと、建物西側の足場が完全に撤去された。残るは内装工事のみ。


3月14日(水)

【思ったこと】
_c0314(水)日本環境心理学会第5回大会「場所愛着・再考」(3)地域アイデンティティと場所アイデンティティ

 昨日の続き。

 ワークショップの議論で印象に残った点の2番目は地域アイデンティティの形成と継承に関する話題であった。まず、話題提供においては、農村のどのような景観要素が、どのような関わりを通じて地域アイデンティティとして認識されるのかについて、調査結果が紹介された。これは、集団インタビューに基づくものであり、「なじみのある・懐かしい・誇らしい・地域らしい景観」についての語り合いをICレコーダーで録音し、テキストマイニングの手法により、「品詞分類→名詞抽出→出現頻度→景観要素の抽出」、あるいは「品詞分類→動詞・サ変名詞の抽出→景観要素との共起頻度の算出→対応分析→...Ward法によるクラスター分析」といった手順で分析を行ったものであり、土地固有の景観要素、生業と遊びを通じた関わりが農村地域での地域アイデンティティの形成に大きく寄与しているというような内容であった。

 この話題提供内容については、指定討論者から、「地域のアイデンティティ」と「地域愛着(self identityとしての場所アイデンティティ)」が混在しているのではないかというような指摘があった。前者の「地域アイデンティティ」というのは、社会学の研究対象でもあり、その地域の独自性を高め表現することにより、その地域の活性化を図る場合に、観光や広告やディベロッパーにおいて活用される。これに対して、場所アイデンティティというのは、私の地域であるといった郷土愛や、地域の一員であるといった所属意識に関わるものである。また、両者の融合する部分には、「私の地域のことがテレビで紹介されたり他の人が知っていてくれると嬉しい」といった肯定感が含まれるというようなお話であった。地域や社会的責任を担うことに寄与する「場所アイデンティティ」は地域における営みの中で形成される一方、観光や災害ボランティア、他者に語る言葉などに関わる「地域アイデンティティ」のほうは、営みの結果として形成されるものであるという。

 指定討論者によるご指摘はまことにもっともであり、実際、私自身が岡山市のことを考えた場合でも、地域アイデンティティとしては、後楽園、瀬戸大橋、桃太カ、倉敷美観地区、....といった景観要素を真っ先に挙げることができるが、私自身の場所アイデンティティとなると、大学構内の見慣れた風景が中心となる。また私の場合は、東京で生まれて京都の大学に通い、さらに、短期間、愛知県や長崎県に住んでから岡山に引っ越しという経緯をたどっており、かつ、一次産業従事者ほど自然景観には密着していないため、定年退職後に岡山に住み続けようと、全く別の場所に移り住もうと、日常生活に必要な条件さえ整っていれば殆ど問題にならないという気持ちがある。しょせん、人生は仮住まいということである。私のような者ばかりが集まり住んでいたら地域アイデンティティ全く形成されないということになってしまうかもしれない。

次回に続く。