じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 岡大構内・野球場横にある、オオイヌノフグリのお花畑。なお、岡大構内では、このほかに、創立五十周年記念館東側の芝地にも大規模な群生が出現している。

3月20日(火)

【思ったこと】
_c0320(火)心理学教育の目標設定の再検討(3)心理学教育の実益性・教養(1)デセコの3つのキー・コンピテンシー

 昨日の続き。

 研究者養成課程としての心理学教育の話題に続き、荒川氏は企画趣旨説明の中で、実益性・教養という観点からの心理学教育の役割についても言及された。

 最初に取り上げられたのは、DeSeCoの能力概念「キー・コンピテンシー」であった。

 この経緯はウィキペディアで以下のように説明されている。
DeSeCo(デセコ、Definition and Selection of Competencies:Theoretical and Conceptual Foundations)とは、国際化と高度情報化の進行とともに多様性が増した複雑な社会に適合することが要求される能力概念「コンピテンシー」を、国際的、学際的かつ政策指向的に研究するため、経済協力開発機構(OECD)が組織したプロジェクトである。組織名称は、「コンピテンシーの定義と選択:その理論的・概念的基礎」と題する。1997年12月から活動を始め、2003年に最終報告を行い研究プログラムを終了した。

...単なる知識や技能の習得を越え、共に生きるための学力を身に付けて、人生の成功と、良好な社会を形成するための鍵となる能力概念「キー・コンピテンシー」を定義した。


 ウィキペディアの該当項目にもあるように、そこでは3つのキー・コンピテンシーが定められている。
  1. .相互作用的に道具を用いる:技術を最新のものにし続ける。自分の目的に道具を合わせる。世界と活発な対話をする。
    • 1A.言語、シンボル、テキストを相互作用的に用いる能力
    • 1B.知識や情報を相互作用的に用いる能力
    • 1C.技術を相互作用的に用いる能力
      ※道具とは、言語・情報・知識等のツールのこと。相互作用的とは、人が周囲の環境と積極的に対話をすること。
  2. .異質な集団で交流する:多元的社会の多様性に対応する。思いやりの重要性。社会資本の重要性。
    • 2A.他人といい関係を作る能力
    • 2B.協力する。チームで働く能力
    • 2C.争いを処理し、解決する能力
  3. 自律的に活動する:複雑な社会で自分のアイデンティティーを実現し、目標を設定する。権利を行使して責任を取る。自分の環境を理解してその働きを知る。
    • 3A.大きな展望の中で活動する能力
    • 3B.人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する能力
    • 3C.自らの権利、利害、限界やニーズを表明する能力
 なお、ウィキペディアでは、このほか、この「コンピテンシー」概念が、「スキル」や「リテラシー」とどのように異なるのかについても解説されている。
  • スキルとは、身につけた基礎的な能力を指すことが多く、それは抽象的な規則やアルゴリズムへと分解できるもの、経験によって十分に自動化されたものなど、スキルを獲得することは複雑な原動力へ適応できる可能性が発生することとなる理論とした。それに対してコンピテンスは、複雑な行為のシステムを指し、認知的スキル、態度、他の非認知的要素を包含し、構成要素を分離することはできないものとした。
  • リテラシーは、元来、社会で最小限の機能として必要とされる読み書きが出来るか出来ないか、といった能力レベルを分ける二分法であった。1990年代に、国際成人リテラシー調査(IALS)に基づくOECD加盟国の政策議論ではリテラシーの新しい概念が提唱された。その内容は、リテラシーの低い人々が目標を達成し、潜在的な知識を発達させていく、またはそれが継続されている(生涯学習)、それらの概念に関する評価法を確立しようとするものであった。
  • リテラシー概念の枠組は、個人的な目標を達成し、社会への適切な参加をしているかという評価を目指していると位置づけられた。国際調査の枠組みでは、適用変化したリテラシーとコンピテンスの概念を置き換えることで利点も見出している。DeSeCoの研究成果は、PISAにおける教科領域の横断的なリテラシー評価に反映している。


 いずれにせよ、これらの能力を体系的、効率的に身につけたり、その効果を検証するツールとして、心理学の知見がきわめて有効であることは疑いが無い。

次回に続く。