じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡大では例年、3月25日が卒業式であるが、今年は日曜日にあたっているため、2日早い23日に行われることになった。あいにくの雨の中、全学の式場から学部別の授与式会場に向かう卒業生のほか、工学系の全国学会が行われていた関係で、学内は大勢の人たちで賑わっていた。

 ちなみに岡山県岡山では、3月24日朝07時までに24時間積算で24.0ミリ、72時間積算で30.0ミリの降水量を記録している。これにより、今年の3月の合計降水量は、3月の平年値の86.7ミリを上回る101.5ミリとなった。

3月23日(金)

【思ったこと】
_c0323(金)心理学教育の目標設定の再検討(6)心理学教育の実益性・教養(4)科学教育のあり方との関連

 昨日の日記に引用したように、日本学術会議心理学・教育学委員会・心理学教育プログラム検討分科会の2008年の対外報告では、科学としての地位を確立しているという点が強調されており、また、世間一般において、心理学を未だ疑似科学としての域を出ない学問と認識されており、そのような誤解を払拭する必要があると説かれていた。しかしもしこの方針に沿って心理学教育を行うとするならば、単に実験のやり方やデータの解析法を修得してもらうだけではきわめて不十分であり、もっと根本的な、科学教育のあり方から議論しなければならない。科学としての心理学教育では、実験の手法を教えるよりも、実験によって何が証明されるのか、何が限界なのかを教えることのほうが大切ではないかと思う。じっさい、心理学モドキの疑似科学が横行するのは、結果のこじつけや結論の過度の一般化、ご都合主義の条件設定などに騙されていることが多いように思われる。

 なお、科学教育のあり方については、企画趣旨説明のあとに行われた、松原克志氏による、

科学技術の学部教育の目標と方法,そして課題 −科学の不確実性と向き合う−

という話題提供の中で詳しく論じられたので、そのメモ・感想のところで再度取り上げることにしたい。

 さて、荒川氏の企画趣旨説明では、続いて、荒川氏御自身の教育方針が示された。その基本は、「そうそう。あるある」で終わらず、
  • 人の「心理」システムを相対化する。
  • 諸問題に対して心理学的に取り組む態度も学ぶ。
ということであるという。簡単に言えば、一面的で画一的な決めつけをやめて、それぞれの人にとっての固有の見え方や意味を尊重しましょう、そのために心理学を活用しましょうということであると理解した。こういう形の教養教育では、心理学入門や心理学概論といったような体系性や網羅性は失われるが、私自身もそういうあり方のほうが教養教育としてはふさわしいように思っている。荒川氏は、さらに、そういう教養教育を通して、「思考促進性」や「簡潔性」(知識の暗記ではなく理解)、「現在性」(現在の悩みに答える形式)を重視しておられた。

 このあたりの話題は、フロアをまじえてのディスカッションの中でも取り上げられた。例えば、クリティカルシンキングや、アイエンガーの「選択の技術」のようなテーマに絞って教養教育を行うことのほうが、心理学全体の概論的知見を提供するようりも遙かに有益ではないかという主張は成り立つとは思う。さらに言えば、心理学が1つの学問として体系化できているか、むしろ、サトウタツヤ氏なども指摘しておられたように、ある時代には自然科学、後に社会科学、さらに人文学(人文科学)というように、変節していった可能性も無いとは言えない。

次回に続く。