じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§ 2012年版・岡山大学構内でお花見(10)スノーフレーク

 文法経・講義棟の南側に咲いているスノーフレーク(別名、鈴蘭水仙)。私が赴任した21年前にはすでに生えていて、毎年、それほど殖えもせず減りもせず、同じ場所で花を咲かせている。下向きに咲くため、デジカメのレンズを根元に置いて上を見上げるように接写すると、花の中の様子を撮ることができる。

 ※岡山大学構内の花だよりのアルバム(追記更新型)をLife-Xに公開中です。随時追加していきますので、時たま覗いていただければ光栄です。


4月10日(火)

【思ったこと】
_c0410(火)第17回人間行動分析研究会(13)価値を測る:マッチング関数・割引関数・需要関数(4)選択行動とマッチング法則(3)マッチング法則が成り立つ場面とは?

 昨日の続き。

 Herrnsteinの「対応法則(マッチング法則)」は行動分析学関係の学会や研究会でも時たま取り上げられる。過去日記を調べたところ、2001年9月5日(学会参加報告全体のインデックスはこちら)でも言及したことがあった。以下のその一部を再掲しておく。

【ソーンダイクの「効果の法則」は】

●行動はその結果によって変わる

という行動随伴性の基礎に関わる原理のほかに、

●有用な結果をもたらす行動は増え、有害な結果をもたらす行動あるいは何の役にも立たない行動は減る。

という意味を含蓄している。しかしこの原理だけでは、有用な行動は無限に増えていくことになる。果たして動物はそれだけで環境に適応できるだろうか。「対応法則(マッチング法則)」は、それらに対して、「ただ際限なく反応を増やすのではなく、最適な遂行をめざす」ということを示唆するものであった。平岡氏は
  • 背景的強化を考えなくてはならない
  • 強化は複数の行動の間の均衡点を設定する
という2点を挙げる一方、説明理論としての不十分さを指摘し、その上で、逐次改善理論、巨視的最大化理論、微視的最大化理論、その他の諸モデルを概観し、今後の方向を展望された。

【中略】
「対応法則」は、実は私自身の卒論のテーマであった。
  • 日常行動のすべては選択行動であること
  • 選択行動はしばしば葛藤状態をもたらすこと
という状況のもとで、動物や人間がどこまで最適な行動を取りうるのか、を考えるツールとして対応法則は大いに意義があると思う。もっとも、私が知りうる範囲で言えば、この方面の研究は
  • 量的モデルの改訂のために研究のエネルギーが注がれることの問題点や限界
  • 質的に異なる好子(強化子)が個別に随伴するような選択行動(←実際の日常生活はこれ)をどこまで分析できるか
  • 「強化率」や「強化数」というように、随伴させる事象の機能を固定的にとらえることの弊害。
という点でいろいろと問題点をかかえているようにも思う。

 ところでこのマッチング法則というのは、一般的な選択場面で確実に見られるというのものではない。ウィキペディア(英語版)の当該項目では以下のように定義されている。
In operant conditioning, the matching law is a quantitative relationship that holds between the relative rates of response and the relative rates of reinforcement in concurrent schedules of reinforcement. It applies reliably when non-human subjects are exposed to concurrent variable interval schedules; its applicability in other situations is less clear, depending on the assumptions made and the details of the experimental situation. This law has significantly helped behaviour analysts lawfully relate behaviour to environment and write equations that clearly show how these two covary.

Stated simply, the matching law suggests that an animal's response rate to a scenario will be proportionate to the amount/duration of positive reinforcement delivered.

There are three ideas on how humans and animals maximize reinforcement, molecular maximizing, molar maximizing and melioration.
  • molecular maximizing: organisms always choose whichever response alternative is most likely to be reinforced at the time.
  • molar maximizing: organisms distribute their responses among various alternatives so as to maximize the amount of reinforcement they earn over the long run.
  • melioration: organisms respond so as to improve the local rates of reinforcement for response alternatives.
 上掲の冒頭にもあるが、もともとこの法則は並立変時隔強化スケジュール(concurrent variable interval schedules)の中で見出されたものであった。これは、ライバル関係にある2軒のスーパーが隣接しているという例で考えれば以下のようになる。
2軒のうちA店では、ランダムだが平均すると10分に一回、お一人様1個限りで試食品が提供される。いっぽうB店はランダムだが平均20分、同じくお一人様1個限りで試食品が提供される。ただ食い目当てのお客はどういう行動をとればよいだろうか?
この場合、もし試食品がきっちり10分おきとか20分おきで提供されるのであれば、時計を見ながらその時刻に間に合うようにお店に言えばよい。しかしランダムに提供されるとなると、A店とB店の間をせっせと行き来しなければならない。もちろん、A店だけに留まってもA店の試食品は確実に貰えるのだが、時々B店に行けば、両店合わせて試食品を受け取れるのでその分有利ということになる。そうした中で、A店とB店に留まった時間の比率が、2:1になったとすれば、マッチング法則が成り立ったということになる。

 しかし、こういうケースが選択行動のカテゴリに含まれるのかどうかは何とも言えない。要するに、ただ食い目当てのお客はただ単に、効率よく試食品を手に入れるために行ったり来たりしているだけなのであって、そのつど二者択一型の選択をしているわけではないからだ。



次回に続く。