じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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§§ 2012年版・岡山大学構内でお花見(19)東西通りのハナミズキ

 岡大・東西通りのハナミズキが見頃となっている。楽天版の写真にあるように、ハナミズキは、赤、白、ピンクなど少なくとも3色の花があるが、東西通りでは8割方が赤花となっている。

 ※岡山大学構内の花だよりのアルバム(追記更新型)をLife-Xに公開中です。随時追加していきますので、時たま覗いていただければ光栄です。



4月25日(水)

【思ったこと】
_c0425(水)選択はどこまで重要か?(3)「行動的QOL」の概念(1)

 昨日の続き。

 選択の機会を増やすことがどこまで重要かという議論は、高齢者のQOLに関しても行われている。

望月(2001)はまず、現行(2001年当時)のQOL評価が「環境と個人」(「生活環境側の物理的社会的設定」と「個人の主観的な満足度」)という2元的で独立的な図式をとっていることについて、
  • 環境尺度においては、個人がそれぞれに持つ固有な環境との関係(個人的な好みなど)が希薄になりがちである
  • 主観的満足度に関する表明(言語報告)は、往々にして当該の環境との関係とは独立に、その言語行動自体が、独立に形成されてしまう可能性がある。
という2点を批判した上で、
個人の行動によって測定され、そこでは個人が環境を自ら選び取り、またその測定の度合いをその選ばれた環境との相互作用(=行動)として示す必要がある。
という行動分析学的な視点から、以下のような「行動的QOL」を提唱した。
  • 第一のレベル:ある個人において、「正の強化を受ける行動」を成立させる段階。選択はできないが、正の強化で維持される行動が個人に準備されているもの。
  • 第二のレベル:正の強化を受ける行動選択肢が存在し対象者が選択できる段階。個人にいくつかの選択肢が準備され、それぞれの選択ができるもの。
  • 第三のレベル:拡大する選択肢の内容決定に本人が関与できる。個人が既存の選択肢を拒否して新しい選択肢を要求できる。あるいは、特定対象は指定しないが、新たな欲求を探索するような行動を許容する選択事態。
このうち、第二のレベルが、本連載でとりあげている「選択の機会」に相当している。

 現在投稿中の紀要論文にも書いたところであるが、「行動的QO」Lの導入は以下の点で有用であると思う。

 まず、行動的QOLのうちの第二レベルや第三レベルを高める介入を行うことは、発達障害でしばしば見られる固執傾向(画一的、ステレオタイプな選択)の改善を促すことになるであろう。但し、これは、選択肢拡大というよりは、いろいろな選択肢を不規則に選べるという意味で、行動変動性を高める改善ととらえるべきかもしれない(長谷川,2008a)。
 第2に、「選択はできないが、正の強化で維持される行動」という第一レベルの行動的QOLだけでは、好子を繰り返し獲得しているうちに好子への飽和化*7が起こり、好子の強化力が低下することが考えられる。行動選択肢拡大により多様な行動が次々と出現すればそれに対応した多様な好子も伴うようになり、全体として飽和化が起こりにくくなると期待できる。
 以上は、経験的事実から示唆される有用性であった。これとは全く別の次元で、発達障がい者や認知症高齢者施設における対応の改善をはかる上でも、大きな推進力になることが期待される。望月(2001)はこの点に関して、
行動的QOLという枠組は、障害を持つ個人の「障害性」(impairmentsやdisabilities)を改善し、その結果として「生活の質」を高めるという「能力のボトムアップ」の展開を想定したものではない。現状の障害性のままに、その障害の軽重に関わらず、行動の選択、つまり環境あるいは社会的参加の決定権を本人に委ねるというものである。その意味では、個人における個別の行動の成立としての「権利のボトムアップ」をはかるものであると表現することができよう。
と述べている。

 全面的「受容」や極端な処遇を続けている旧態施設において改善を実現させるにあたっては、実験研究の成果を示して説得するよりも、自己決定という権利擁護の一環として、「選択肢の内容決定への関与」、「行動の選択機会拡大」、「既存選択肢の否定と新たな選択肢を要求する機会」を求めて実現させることのほうがより現実的であることは間違いない。

長谷川芳典(2008a). 乱数生成行動と行動変動性 : 50年を超える研究の流れと今後の展望(<特集>行動変動性の実験研究とその応用可能性). 行動分析学研究, 22, 164-173.
望月昭 (2001). 行動的QOL:「行動的健康」へのプロアクティブな援助. 行動医学研究, 7, 8-17.


 次回に続く。