じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _c0720(金)「おひとりさまの最期」講演会(12)在宅看取りのメリットと規範的アプローチ 7月19日の日記の続き。 講演の終わりのあたりでは、在宅死に対する抵抗勢力と阻害条件が挙げられた。抵抗勢力としては、「家族」、「病院の医療関係者」、また阻害条件としては、「施設入居のハードルの低さ」と「経済力?」があるという。 要するに、在宅死を望まないのは本人ではなくむしろ家族や医療関係者である。なお、阻害条件の2番目「経済力」についてはクエスチョンマークがつけられており、当事者は本当は資産があるのに、家族が使わせないとか、介護はタダなのになぜ有償介護サービスを使うのかといった抵抗感が原因ではないかと上野氏は指摘した。それを克服するため有効策として、リバース・モルゲージや、短期集中ケア費用減免制度が提案された。 では、なぜそれほどまでにして在宅看取りを推奨するのかということになるが、上野氏はそのメリットとして、
もっとも、「こういうふうにすればお得です」といったメリットの列挙と、「こうすることが望ましい」という主張では議論の性質が異なる。御著書『ケアの社会学』の第2章では「ケアの社会学は必然的に規範的アプローチを含まざるをえない」と記しておられるが、今回の講演では、在宅看取りについての規範的アプローチにはあまり触れられなかったように思う。しいて言えば「出口の無い家」批判(7月16日の日記参照)が根拠になっているようにも思えた。 質的な心理学研究であればおそらく、個々のケースにおいて在宅看取りの過程を克明詳細に分析していくことになるのだろうが、社会学の場合は制度やビジネスモデルのほうに関心が向いてしまうのかもしれない。逆に言えば、心理学では、制度や経済力には殆ど触れず、「こういう現状のもとで、こういう行動をするとどうなるのか?」というように、現状を前提にした上でのその後の変化を把握するアプローチが多いようにも思う。 次回に続く。 |