【思ったこと】 _c0906(木)日本質的心理学会・第9回大会(5)個人の準拠枠の変容をTEM・TLMGで描く(5)TLMGの第二層と第三層
●制度的な組織の境界を超えた繋がり、活動、学習による個人の準拠枠の変容をTEM・TLMGで描く
の話題の続き。昨日の日記ではTEMの特徴について引用・コメントした。今回はこれと対照させて、「TLMG」(Three Layers Model of Genesis: 発生の三層モデル)の特徴について考えてみることにしたい。企画者の説明によれば、
- TEMが回顧型研究であるのに対して、TLMGは前向型研究である。
- TEMが経路の収束を促すものに焦点化するのに対して、TLMGは経路の創発を促すものに焦点化し、変容を描く。
- TEMでは、個人を必須通過点に向かわせる文化的圧力が描かれていないが、TLMGは、主体と環境の文化的関係性を回顧の語りと未来の選択肢から捉える。TLMGは、個人的文化(おそらく第三層)と集合的文化(おそらく第二層)との不可分な関係性を捉える。
- TEMは物語と履歴の区別に無頓着であり、等至点を定めた物語の構築の可能性が高いが、TLMGは、物語を履歴とし、分岐点を明確につかむことができる。
といった特長を持っているとのことであった【配付資料からの引用。一部改変】。上記4点の中で、私がイマイチ分からないのは、3.の「個人的文化(おそらく第三層)と集合的文化(おそらく第二層)との不可分な関係性を捉える。 」という部分であった。個人的文化および集合的文化については9月4日の日記でも触れたところであるが、これらを明確に定義しなければ、第二層と第三層の正体が見えてこないようにも思える。もっとも、上掲でも「おそらく」と表現されているように、まずは、第二層と第三層ありき、そのうえで、その正体が、集合的文化と個人的文化にそれぞれ対応しているという捉え方をしているようにも思えた。
となると、第二層と第三層は、「個人的」、「集合的」とは独立して定義されなければならない。今回の説明を拝聴した限りでは、
- 第三層は、個体発生レベル(Ontogenesis)であり、価値観・信念・習慣が維持するレベル。滅多に変わらない。
- 第二層は、中位発生レベル(meso-genesis)であり、個々の行為が体系化され変容するレベル
として区別されているように理解した。もっとも、第三層に挙げられているような強固な「価値観・信念・習慣」が個々人すべてにおいて存在するのか、「滅多に変わらない」という特徴づけにおいて、「滅多に」は「時たま」や「時々」とどういう基準で区別されるのかはよく分からなかった。それと、行動分析学的に言えば、第二層における変容は、あくまで、個体と環境との関わりの中で、行動がどう強化、弱化、消去されるのかにかかっており、それらはすべて、直接効果的な行動随伴性によって決まってくる。TLMGが提唱しているような第一層(社会的文化、歴史的経済・政治、生態)はむしろ、第三層に近い上位レベルの存在であって、行動を直接変える力は持たないように思える。
次回に続く。
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