じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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2012年版・岡山大学構内でお花見(56)彼岸花の開花状況
 9月21日現在の彼岸花の開花状況。残暑が続いていたせいか、昨年に比べると開花が遅い。

 ※岡山大学構内の花だよりのアルバム(追記更新型)を下半期上半期に分けて公開中です。下半期分は随時追加していきますので、時たま覗いていただければ光栄です。

9月21日(金)

【思ったこと】
_c0921(金)日本心理学会・第76回大会(10)高齢者の「孤立と孤独」を心理学から考える(10)広義の対人接触/ソフトランディングの知恵

 このテーマに関して、あと2つほど考えを述べておきたい。

 1つは、「孤立」や「孤独」というと、当事者の周囲ばかりに目を向けがちであるという点。じっさい、小辻(2011)に引用されているタウンゼントの指標としては、
  1. 親族のひとりひとりとの一週間あたり平均接触回数の合計
  2. 親族ではなくておもに隣人や友人のみならず、例えば地区の看護婦、ホーム・ヘルパー、医者をも含めた接触
  3. その週間内の、その他の社会的活動にたいする任意に選定された得点を加える
が用いられているという。しかし、他者との関わりというのは直接接触にとどまるものではない。6月11日の日記に記したように、姜尚中氏は、読書の意義として、
  • 人の疑似体験を無限に広げてくれる
  • 自分が絶対出会えない過去の人や自分の知らない世界に出会える。
  • 過去に人間はどう生きてきたか?
  • どういう結果に誰がどう向かったのか?
といった点を挙げておられた。読書は自室であれ図書館閲覧室であれ、基本的に他者との直接交流を断ち切ることで遂行できる行動であり(←事後に読書感想を述べ合うことはあるだろうが)、周りの人たちとベチャクチャおしゃべりをしたりカラオケやゲームをする行動と両立させることはできない。一見引きこもっているように見える人のほうが、少人数の仲間内でおしゃべりを楽しんでいる人たちよりも遥かにいろいろな著者と深く交流しているかもしれないのである。

 このほか、最近では、インターネットを通じていろいろなチャンネルで交流をすることもできる。お墓の前で故人と「対話」するというのも、セカンドライフ型の仮想世界での交流も、別の形の対人接触であると言えないこともない点に留意する必要があると思う。




 もう1点つけくわえておきたいのは、老いていく中での社会的な離脱をソフトランディングさせていくためには、それぞれの節目(引退、撤退、退会、転進、施設入居、入院、手術...)においてどういう決断をするのかという選択の問題と、その選択によって実現した行動機会において、当該の行動をどのようにして継続(行動分析学的に言えば「維持・強化」)させていくのかという問題を分けて考えていく必要があるという点である。こういうソフトランディングは、時々段差のある下り坂を一歩一歩、転ばないように下りていくことに喩えられるだろう。高齢者への聞き取り調査においても、「いまどう過ごしているか」だけでなく、節目節目でどういう決断をしたのかといった複線径路型のモデルを考えていくことは意義があると思う。


 次回に続く。